18.PK《プレイヤーキラー》
「PK……プレイヤーキラーか。フィールドに出るプレイヤーが少ないシータサーバーで待ち伏せとか暇じゃなかったかな?」
「うっせえ! こちとらお前たちを狙って待ち伏せしてたんだよ! それをのんびり帰ってきやがって!」
うーむ、それってどう考えても逆恨みだが。
……さて、いまの状況を整理してみよう。
とりあえず、視認できる範囲で前方に三人、後方に五人。
あいつらは『PKグループ』と名乗っていたし、PKっていうのは相手よりも優位な状況でやるのが基本らしい。
そう考えると、左右の森の中にもあちらさんのお仲間が潜んでいる可能性は高い、か。
そもそも八人っていうのが切りの悪い数字だし。
「さて、それじゃあ行かせてもらうぜ!」
「よーし、かかってきなさい!」
先程からこちらと話しているPKが武器を構えて襲いかかってこようとする。
それをレイが迎え撃とうとするが……俺はレイの襟をつかんで引っぱった。
「ぐぇっ」
なんだかカエルが潰れたような音がしたが気にしない。
そして、そんなレイの目の前を通り過ぎる一本の矢。
普通の矢に比べて太くて短いそれは、ボルトと呼ばれる矢だ。
ボルトが飛んでくるということは……。
「森の中に隠れている部隊がいますね。それも遠距離装備の」
「だろうな。……さて、どう動くべきか」
前後を挟まれているのに、さらに左右からも攻撃されるのではたまったものじゃない。
だが、俺にはこの状況を打開する秘策がある。
「フォレスト先輩、数秒でいいので時間を稼いでもらえませんか?」
「わかった。なにをするか、期待しているぞ。全員散開! まずは見えている敵の対応に当たれ!」
フォレスト先輩の号令で、全員が駆けだしていく。
フォレスト先輩、ブルー先輩、ソード先輩が後方の敵に。
レイとブレンが前方の敵に襲いかかる。
俺だけその場に残って、あるスキルの発動準備に取りかかる。
一人ぽつんと動かないでいる俺に対し、森の中から矢が殺到するが……それらはすべて弾き飛ばされてしまった。
「は……?」
誰が漏らしたかわからない言葉のあと、俺はスキルの使用を宣言する。
「【嵐竜奥義『乱気流の檻』】、発動!」
俺が使ったスキルはアイテムスキルの【嵐竜奥義『乱気流の檻』】だ。
これは、仲間に風の鎧を纏わせて弓矢などの遠距離物理攻撃を無効化できるスキル。である
さらに風の檻でフィールドを遮り、内外の出入りを禁止することもできるため、森の中にいたPKたちは蚊帳の外へと追いやられてしまった。
これで、形勢逆転、というわけだな。
「お見それしたよ、エイト。まさか、こんなスキルが使えるなんてね」
フォレスト先輩は、俺のところまで一度下がって前後双方を牽制できる位置についた。
「ちっ……なんて面倒なスキルを持ってやがるんだ、あの仮面のガキ」
PKのリーダーと思しき人物は、悔しそうに舌打ちしている。
これは相当いらだってるかな。
「……フォレスト先輩、この風の檻は百八十秒で消えてなくなります。それまでに、この八人を倒さないと……」
「承知した。全員、装備スキルを解放していいぞ。一気にPKどもを押し倒せ!」
フォレスト先輩の再度の号令で、全員の動きが変わる。
いままではヒットアンドアウェイという動きだったが、一旦引き、大技を発動させる構えを見せている。
まず最初に動いたのは、タンクをしているブルー先輩だった。
「いっくよー。【陽炎】発動!」
「な、陽炎だと!?」
「早くこの女を倒せ! そうしないとあの大爆発がくるぞ!」
「そうは言われても……コイツの守りが異常に堅いんだよ!」
「そうそう、時々攻撃が素通りすることもあるし、なんなんだよ、一体!」
ブルー先輩がスキルの使用を宣言すると、PKたちはこぞってブルー先輩を狙いだした。
しかしその攻撃は塔盾に阻まれてなかなか本人には届かず、塔盾をすり抜けた攻撃もなぜか空振りすることがある。
……ブルー先輩は【陽炎】のほかにもうひとつスキルを発動させているのだ。
それは全身鎧で使用できる固有スキル【空蝉】である。
塔盾の固有スキル【陽炎】と全身鎧の固有スキル【空蝉】で、タンクとしてのコンボが完成する。
そして一分後、【陽炎】が爆発して、PKたちに大ダメージを与えたのだった。
後方のPKたちが大ダメージを受けたところに重ねて、ソード先輩が自分のスキルを発動させる。
「食らえ、【炎切断】!」
片手剣で使えるようになる固有スキル【炎切断】は、わかりやすく言うと範囲攻撃だ。
片手剣を振り抜いた扇状の範囲に爆発を巻き起こす、わかりやすい攻撃である。
威力的には【陽炎】などに劣るが、即座に発動できてクールタイムも短いので扱いやすいスキルである。
なお、当然の如く、PKプレイヤー五人は全員HPが0になって消えていった。
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他方、ブルー先輩が【陽炎】貯めているころ、前方の三人にはレイとブレン、それにフォレスト先輩が対応していた。
……俺?
危なくなったときの後方支援だよ。
アイテムスキルの【嵐竜奥義『乱気流の檻』】を使った反動でTPが0の状態で固定されているからな。
あと二分程度は、アイテムを使ってもTPが回復しない。
TPがないとスキルをなにも使えないわけだから、後方支援に徹するのが一番なのだ。
さて、それぞれの戦況だが、一進一退というところか?
レイもブレンも弱くはないが、相手もPKなんてリスクしかないプレイをする連中だ。
プレイヤースキルはそれなり以上に高い。
ふたりが劣勢にならないのは、ひとえに装備の性能差だろう。
そんな状況のふたりだが、一発逆転の手は残されている。
ブルー先輩やソード先輩のように、赤妖精シリーズには特殊スキルが備わっているからだ。
ただ、スキルを作る隙を見いだせないでいるのが現状だな。
攻撃スキルはためが発生するせいで、うかつに使えないし。
そんな状況の中、ふたりが距離を詰めて背中合わせになるように立った。
「ブレン君、準備はOK?」
「勿論。いつでもいけるさ」
「よし、それじゃあ、行くよ……【炎塵爆発】!」
レイのバトルドレスから火の粉が舞い散り、それが爆発を起こす。
これが、バトルドレスの固有スキル【炎塵爆発】だ。
ダメージはそんなに与えられないけれど、相手をひるませるには十分な閃光と衝撃、爆発音が発生している。
実際、間近で食らったPKふたりは、目を覆いながらよろけている。
「よっしゃ、これで止めだ! 【炎王斬】!」
「いくよ、【ファイアスティンガー】!」
体勢を崩しているPKふたりに対し、ブレンとレイがそれぞれ止めを刺す。
ブレンの【炎王斬】は両手剣の固有スキル、レイの【ファイアスティンガー】はレイピアの固有スキルだ。
これで、残るPKはひとりだけとなった。
その残りのひとりもフォレスト先輩によって止めを刺されようとしている。
「ふむ、全員固有スキルを使ったのか。ならば、私も使わせてもらおうか。【フレイムレイ】」
機械弓の固有スキル【フレイムレイ】は、火属性のレーザーが相手を貫通するという技だ。
効果だけ聞くと地味だが、実際には貫通効果や発動即着弾など、面倒な特性を持っている。
上手く使えば、二~三人まとめて倒すこともできたんじゃないかな、あの先輩なら。
「ふむ、PKは倒すと光の粒子になって消えるのか。……そして、これがドロップ品というわけだな」
PKを行ったプレイヤーが返り討ちにあうと、装備以外の全アイテムと全所持金をドロップする仕様となっている。
そのほか、PKに失敗したプレイヤーは預かり所に預けているアイテムやお金を一定期間引き出せないといったペナルティもあるらしい。
市場で売り買いするときにも市場利用料が上乗せされるとかで、PKをやる人は滅多にいないのが現状なのだが。
あと、PKを返り討ちにした場合、どちらにペナルティがつくかは、安全安心の二十四時間監視システムで白黒つけてくれるので心配がない。
「うーむ、見事に持ち歩いていたアイテムは回復薬だけ。所持金も0ときたか」
「こっちも同じですね。……あいつら、本当にPKのためだけに待ち構えていたってことですかね?」
「そういうことだろう。しかし、私たちを狙ったということは、今後も襲われる可能性があるのかな?」
「どうだろうねー? 今回程度なら返り討ちにできるけど、エイト君がいなかったら危なかったよねー」
「そうだな。助かったぞ、エイト。それで……」
「先輩方、まだ戦闘は終わってませんよ」
そろそろ乱気流の檻が消える時間だ。
百八十秒の間に中のPKを倒し切れたのはよかったが、外にはまだPKの仲間が残っている可能性がある。
「壁が消えるまで、十秒前……五、四、三、二、一」
「……壁が消えてすぐには襲ってこないみたいだな」
「そのようですね。遠距離攻撃を防ぐ風の鎧はもうしばらく効果がありますから、一気に森を抜けてしまいましょう」
「それが得策だな。全員、走るぞ!」
こうして、PKの襲撃を乗り切った俺たちは急いで街まで戻ることとなった。
走っている最中に条件を満たしたのか【ダッシュ】のスキルを覚えたのはご愛敬かな?
いつもお読みいただきありがとうございます。
毎回の誤字報告本当に助かっています。
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