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4.

「不審者だけれど、足が痛くなっただけだし、たぶん家の場所は割れてないと思うのよ」


そう力説した私だけれど、


「エリーズ。それは、不審者ではなく、変質者よ!!決定よ!エリーズが可愛いからって!!」

「しばらく邸から出るのはやめなさい」

「安心して仕事も手に付かないから、その方が良い」

「兄様たちがその変質者を捕まえてやるから、それまでの辛抱だ」

「明日は庭で母様と花を植えましょう」


口ぐちにそう言われて、私はしゅんとした。明日はアネッサのお店でパンを作る予定だったのに…。


「では、リドア兄様。アネッサのお店に連絡を飛ばしてください。」


そう言うと、


「ちょっと、エリーズ!!なんで兄様なの!俺でも良いじゃない!」


ラルフ兄様が拗ねた。


「だって、ラルフ兄様、明日は殿下とお出かけでしょう?」


確か数日前そんなことを言っていた。だから、姉さまが休暇で邸に帰ってきたはずだ。


「そ、そうだけど。朝、王都に行く前に寄ればいいじゃないか!」

「朝はダメです。アネッサのお店は朝忙しいの!」

「そうだぞ、ラルフ。諦めろ。」


リドア兄様が超ご機嫌で言う。というか、同じ金髪紫目の兄様たちがじゃれている。姉さまもそこに入ると、まさに美男美女大集合。

どうしてこの遺伝子を持つ3人が私と姉兄なのだろうか…?

姉と兄たちは父譲りの金髪と、母譲りの紫の目を持っているのに、私と来たら、母譲りの黒髪と父譲りの黒目って…。いつも思うのだけれど、私見た目損してない?

まあ、姉が美人過ぎるせいで、社交界デビューのとき、あのアンネマリアの妹が!とか、リドア、ラルフの妹が!なんてハードル上げられたせいで、平凡な私が魔女やら陰気やら言われたのよねー。

しかも、姉や兄たちに見えないところで!!

まあ、そんな低レベルな奴らに何を言われようとも、家族から我が家のメイドに至るまで、私のことを可愛いがってくれていた事実があるから、特に問題はなかったのだけれど。

そいつらの顔と名前は忘れないように記憶してあるから、いつか復讐してやるわ!!と思っていたら、早速家族総出でやってくれたらしい。

陰気と言った令嬢の家族とは取引を中止し、魔女みたいと言って陰で笑っていた令嬢は姉主催のお茶会に呼ばれず、文句を言わないまでも同様に笑っていた令嬢たちは兄たちに笑顔で撃沈されるという。何たる家族だろうか。

後日、丁寧に詫びられた私は身の置き場がなくて困ったものだ。溺愛されているのはわかっていたけれど、ここまでとは、ね。

おかげで行きたくないパーティーに出席しなくて良かったのは助かったけれど。


とりあえず、夕食も終わったので部屋に戻り、明日は晴れることを願って眠りに着いた。


************************************


「おはようございます、お嬢様」


サーシャがいつものようにカーテンを開けながら起こしてくれる。


「おはよう、サーシャ。今日の天気は?」

「ええ、良い天気ですよ。」


じゃあ、花を植えるにはもってこいね。何て話をしていたのが1時間前。

朝食を取っていると、父様に執事のケイニーが報告を持ってきた。どうやら、王室かららしい。


「あら、ユリウスが来たのかしら?」


姉さまはあっけらかんとそう言ったけれど、本当は兄様が王都へ行く予定でしたよね?そんな簡単に王太子が予定を変えて良いのでしょうか?


「やあ、我が愛しのアンネマリア。寂しくて来てしまったよ」

「まあ、いけない人。わたくしが邸に帰ることは了承済みでしたでしょう?」

「それでも、一人の部屋は広くてね」


朝からごちそうさまです。

ユリウス・アストランダム王太子殿下は、王族の証であるシルバーブロンドに青い瞳を持つイケメンです。姉さまの美貌にころっと恋に落ち、他の王太子妃候補に目もくれず、さっさと婚約してしまった男です。

そう、姉さまにメロメロです。


家族が聞かなかったことにしている間に2人の話は終わったようで、王太子殿下が父に挨拶しています。


「朝早くから申し訳ない。アルドロワ伯爵。今日からラルフをお借りします。」


これは、先ほどまで砂糖を吐きそうな甘い台詞を言っていた男と同一人物なのでしょうか?相変わらず姉さまとその他への態度が違い過ぎて驚きます。


「ああ、そうだ。ついでに紹介します。」


そう言って、ユリウス王太子殿下の後ろから出てきたのは、黒い髪に赤い瞳のイケメンでした。ちょっと、この部屋イケメン率高くないですか!!


「隣国のタイガ・フォークス・シーリス王太子殿下です。」

「ご紹介に預かりましたタイガ・フォークス・シーリスです。このような場で申し訳ない。ユリウスがどうしてもアンネマリア様に会いたいとうるさくて…」


その声を聞いた瞬間、私は声を上げそうになるのを必死で抑えました。


こいつ、昨日私の後を付いて来た男じゃないですか!

隣国の王太子殿下とか、なんだそれ。兄たちでも父でも太刀打ちできないじゃないですか。

でも、きっと私のことなんて気付きもしないでしょう・・・ですよね・・・気付かないでね?

テーブルの下で握った手のひらには汗が浮かんでいます。

だめよ、エリーズ。ここで反応してはダメ。今こそ、伯爵令嬢としての教育の賜物を見せてやるのよ!!


そんな私に気付かず、父は家族を紹介し始めました。

そうですよね。気づいているのは私だけですものね!!


「・・・そして、そこにいるのが次女のエリーズです。」

「・・・」


会釈。


隣国の王太子殿下に不敬ですって!?知るか、そんなの!

こっちは声を出したら最後な気がしてドキドキ中だわ!顔を合わせないように下を向く。


「・・・ははは。エリーズは恥ずかしがり屋でして。申し訳ない」


父ナイスフォロー!!心の中で親指を立てておきました。


「・・・エリーズ・・・ねぇ」


ひいいいいいいいいいいいいい!!

暗記するように呟かないで!


「まあ、王太子殿下はエリーズに興味がありまして…?」


姉さまが席を離れ、私と王太子殿下の間に立ってくれる。

兄様たちも私の左右を固めてくれる。両肩に置かれた手が温かい。


「ええ。可愛らしいレディですね。」


そう言って、姉さまの横を素通りして、私の傍で膝を着く王太子殿下。やめて、近寄らないで!!


「驚かせてしまって申し訳ない、レディ。私はしばらくこの国に厄介になりますので、また会えると嬉しいです」


下から目線を合わせられると、逸らせないではないか!!とりあえず、頷いておいた。


「おい、タイガー。お前、すぐ帰るって言ってなかったか…?」

「そんなこと言ってない」


そう言うユリウス王太子殿下にバッサリと言うタイガー殿下である。

一瞬にして姉さまと兄様たちの視線が鋭くなる。


おい、何爆弾発言してくれてんだ!!

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