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3.

「・・・というわけで、エリーズが同じ道をぐるぐる周り、アンフェイスで着替え、辻馬車を何台も乗り換えて我が家に戻って来たと報告があったの」


うわー。姉さま、すげー。

私の行動逐一ばれているじゃないですか!ってか、周りにいたなら助けてくれれば良いのに!!


と、ブツブツ呟いていると、姉さまが笑顔で


「そうね。今度はユリウスに捕まえるよう勅令を出してもらうわ!」


なんて言ってきた。


「姉さま、やめて!目が笑ってないから!」


やばい。本当に王太子殿下を動かしかねない。


「しかし、この季節にそんな格好とは…。」

「どこからつけられていたんだ?」


兄の質問に私は今日のことを思い出す。


「なーんか見られていると思ったのは、アジャッシュのお店だったの」


************************************


「いらっしゃーい!!安いよー!」


大通りから1本道を入ったところにアジャッシュのお店はある。

大通りは観光客向けのお店が並んでいるが、1本隣からはこの地域で生活して居る人たちのためのお店が軒を連ねているのだ。

アジャッシュのお店は八百屋さん。この街の外れに大きな農地が広がっていて、そこで野菜を育てている。毎朝新鮮な野菜を収穫してきて、お店で売るのだ。

私は彼のお店の野菜が大好きなので、バイト代代わりに良くもらって帰る。

アジャッシュは赤い髪と日に焼けた浅黒い肌が特徴で、今年30歳になるのにまだ嫁が来ない。たまに売り子としてバイトさせてもらっているのだけれど、余計な詮索をしないので助かっているわ。

曰く


「お前が店に出ると、売れ行きが良いんだ」


とのこと。まあ、そんな感じでいつものようにバイトをしていたのだけれど、ふと視線を感じたの。

ガン見すると因縁つけられたりするので、野菜を売りながらチラチラ確認する。

アジャッシュの店の向かいの細い通路、そこに薄暗くて見えなかったけれど、誰かが居る気がしたのよねー。

アジャッシュのお店の手伝いが終わり、野菜をもらった私は、今度はユーズのお店へ直行。

ユーズは小物を作って売っている女の子。手先が器用だから、何でも作れる。

彼女は大通りに面したお店の娘で家業を手伝っているの。

野菜を入れた籠を、ユーズのお店の涼しい場所に置かせてもらって、お手伝い。ユーズみたいに素早く作れないけれど、コサージュはいくつか置かせてもらえるようになったのよ!!


「エリー。今度はどんなのが良いかしら?」


なんて、ユーズにアイデアを求められることも増えたの。

お店を手伝っていると、また視線を感じて、うっかり目線を上げたら男が手元を覗き込んでいたの。

私びっくりして…。だって、父様と兄様のおかげで気配には敏感になったのに、こんな近い距離でも気付かなかったのよ。

しかも、そのお店は女の子の良く行くお店で、男が一人で来るなんて珍しかったのよね。


今日は、これくらいで良いかなと思って、ユーズに声を掛けてお店を出て、邸に帰ろうと思ったのよ。

それでお店を出たの。そしたら・・・


その男が店の前で待ってて・・・。


あらお客さん、なんて思いながら会釈だけして、気にしないように路地を歩き出したの。・・・で、姉さまのおっしゃったとおりよ。くっついてくるんだもの。

家に帰れって。帰れないでしょ!伯爵令嬢が街でバイトしてるなんて…。で、ぐるぐる回って、変装して、辻馬車に乗って帰ってきたの。


まったく、足が痛くなっちゃったわ。


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