閑話 ドワーフの島国へゴー!3
海が見える場所から移動し、僕らは今、魔導船のある港に居て、真ん前には巨大な船がある。巨大な帆船は、中世の頃、海原を渡り歩いたような、木造船であった。横に、水車のような形のような動力が付いているのが、印象的な船だった。
「おっきい・・・・・」
最新式だけあって、でかい。いくつもある帆もかなりの物だ。僕だってワクワクしてるよ! カッコいいしね! それこそ、直ぐにでも乗って行きたいって思うくらいには。
「カズマ様、外国なんですから、諦めて下さい・・・」
ユリーさんに、慰められた。僕だって分かってるよ。外国である以上、手続きや準備が必要な事くらい・・・。
そう、僕らは予想外な事に、船のあるこの沿岸を所有する国にて、見事な足止めを食らってしまったのだ。
実は、立ち寄った手前、国の方へ挨拶したら、まぁ、当然ながら晩餐会に招待されてしまったんだ・・・。完全に予想外だった。急ぐし、僕は知らなかったからね。
まぁ、狙いが、どうも僕らの肩書きに惹かれたみたいなんだよね。年頃の姫君が居るみたいで、かなり熱心に誘われたんだよ・・・。
勿論、断れないから、僕らは苦笑いで引き受ける羽目に。
僕よりも、ニコラス殿下の笑顔が、何か怖かった。多分、目が笑ってなかったと思う。普段から、笑顔の人だけに、何か妙な迫力があった。
「まぁ、礼儀を知る筈の方々が、止めもしないとは・・・無能が多いって大変だよね!」
笑顔で毒まで吐いていたから、かなりお怒りみたいなんだよね。勿論、バレないように、ちゃんと僕達だけの時に、言ったからだけど。
「・・・ドワーフの国まで、あと何日かかるかなぁ」
思わず呟いちゃったのは、許して欲しい。
まぁ、王宮に招待されてるし、一応、王族からのお誘いだし、外国である以上は、慎重に動かざるおえないんだよね。厄介だよ。
取り敢えず、今夜の晩餐会は、料理の味が分からない気がするや。
◇◇◇◇◇
結果から言って、晩餐会は和やかな物になった。
な ん と!!
晩餐会は、まさかの普通のオモテナシだったんだよ!!
信じられる? 僕もビックリだよ。皆が何かあるって、かなりピリピリしてたんだけど、蓋をあけて見たら、純粋な友好をはかるもので、お姫様との顔合わせも、晩餐での挨拶くらいだった。というか、お姫様は10歳くらいで、殿下の花嫁さんになるのは、まだ早い。
誰だよ、何かあるなんて、言ってきたの! メチャクチャ怖かったんだよ!?
なお、あの熱心な晩餐会の誘いをした貴族は、そういう派閥だったみたい。晩餐会の途中、違和感を感じたらしい陛下が質問した事により、発覚したんだ。まったく、何処にでも居るんだね。権力持たせないで欲しいよ、そういう人に。
・・・まぁ、ちゃんと説明をしたから、今頃は大目玉を頂いたかもね。
「カズマ、眉間にシワが寄ってるよ? 友好目的なら、いいんじゃない?」
部屋に戻ったニコラス様は、相変わらず穏やかで人懐っこい笑顔をしている。まぁ、他国である以上、彼等は隙を見せる訳にはいかないもんね。そこら辺の教育は、王子である以上は必須科目なんだろう。
「まぁ、そうなんですけど・・・」
「他国に僕らは干渉できないんだよ、だから、これで良かったと思って」
肩をすくめて見せる彼に、いつまでも引きずる訳にも行かず、僕は小さなため息をしながら、この話題を内側で消化した。モヤモヤするけど、仕方ない。
さぁ、気分も変えて、明日はようやく、ドワーフの島へ行くんだ。ちょっとだけ、気分は上がったかな。
「明日は晴れて、船が出てくれるのを祈ろう」
ニコラス殿下のにこやかな発言に、何となくフラグの予感がした。まぁ、まさかね!
◇◇◇◇◇
結果から言えば、フラグは立たなかった。ホッとしたのは、仕方ないでしょ? 僕は勇者だし、フラグはあるだろうって思ってるし。
何せ、咲希さんと翔太がフラグを回収しまくってるしさぁ。身構えてしまうのは、仕方ないと思う。
朝早くから僕らは城を出て、ドワーフの国と行き来している船に乗る。昨日見た、あの大きな帆船に乗ると、ちょっと感動した。クラリオン王国じゃ、無いからね。こんな機会は。現代日本でも、乗る機会はないんじゃないかな?
「カズマ、随分と楽しそうだね?」
クスクス笑いながら、僕の後に続いたニコラス殿下。かなり分かりやすかったみたい・・・。でも、ロマンだよね、こういうのはさ。
「まぁ、こんな機会はありませんから」
「ハハッ、確かにそうだね」
こんな穏やかな会話をしている頃、皆が乗り終わった。だからか、船がにわかに活気付く。出発のために、船員の皆さんが準備を始めたんだ。活気の良い海の男達の声が、あちこちから聞こえて、新鮮な気分になる。
「いよいよだね」
「はい、楽しみです!」
元気良く返事を返した僕の後ろでは、まさかの船酔いフラグを回収したユリーさんと、ニコラス殿下の側近二人がダウンしていた。まだ、出発もしてないんだけど、海の匂いで気持ち悪いみたいだ。
「出発するぞー!!!」
野太い掛け声で、船が動き始める。ギシギシと音を立てながら、ゆっくりと動く船は、美しい海原に向かって走り出す。以外にも、横に付いている車両みたいな動力は、まだ動かさないみたいだ。不思議に思っていたら、船員さんが教えてくれた。
「ありゃ、沖合いで動かすんだ、こんな近場では動かさないさ」
ガハガハと豪快に笑いながら、仕事に戻っていった。筋肉モリモリで、羨ましいなぁ・・・。
取り敢えず、変なフラグは今のところは、立っていなくて、ホッとしているよ。