↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不機嫌の魔女とショコラティエ  作者: 夜瀬 深月
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/7

貴婦人の楔 -3-

第二章 貴婦人の楔は、何回かに分けて投稿します。


 ミルラは顎に手をやり、少し考える仕草を見せたが、ゆっくりと頷いた。



「……うん、分かった。あまり、無理しないで」


「ありがとうございます。魔女様は、お優しいのですね……。わたくしの実家であるサドリス家は侯爵家です。当主を継いだ父は、特に領地経営に能力を発揮しました。周囲から『グランツ侯に任せておけば間違いない』と言わせる程の手腕を持っていたのです。……しかし、わたくしが生まれた翌年、莫大な資金を投じていた造船事業に失敗して多額の借金を負い、多くの人間が父のもとから離れてゆきました」



 フィオナさんはうつむいて、暗い目で自分の両手を見つめた。



「その頃から父の様子がおかしくなったと、当時屋敷に勤めていた使用人から聞いております。父は、仕事から帰ると浴びるように酒を飲み、毎日のように母に暴力を振るっていたそうです。……そして、わたくしを守ってくれていた母は徐々に精神を病み、わたくしが四歳になる頃には、部屋から出てこなくなりました」



 彼女は自嘲するように小さく笑い、話を続けた。



「今はもう、その写真に写っている母の姿が、母との唯一の記憶なのです。おかしいでしょう? 家族ですのに……。その後は、お察しの通りです。母への暴力は、わたくしへと降り注ぎました。夫のアルベルトに出会った17歳までは、毎日……本当に毎日、どうすれば苦しまずに逝けるかばかりを考えておりました」



 ……あぁ、そうか。だから僕だけ、フィオナさんと目が合わないのか。


 四歳からずっと一人で、どれだけの恐怖と孤独を抱えてきたのだろう。――僕にできることは何もない。むしろ、「何もしてはいけない」と思う。そのはずなのに、途方もない罪悪感と無力感が、ただでさえ乱れていた心を黒く塗りつぶしていった。僕のような、平穏無事にのうのうと生きてきた男が、この後も彼女の依頼に立ち会って良いとは到底思えない。


 床にあったオイルの染(し)みを見つめ、何と言ってこの場を立ち去ろうかと考え始めた時――ミルラが突然「えっほん」と大きく咳払いをした。調香に失敗して出た煙でむせているのはよく見かけるが、これは、何というか……すごくわざとらしい。思わず顔を上げると、彼女は腕を真っ直ぐに伸ばし、僕に掌を向けていた。……なるほど。『席は外すな』ということか。


 相変わらず気は重いが、了解したことが分かるよう、僕は短く頷いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

また、ブックマークしてくださった方、ありがとうございます!!!

頑張って書きます!


ミルラとリュネに少しでもご興味を持っていただけましたら、

★評価やご感想を頂けますと嬉しいです。


今後ともよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。