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不機嫌の魔女とショコラティエ  作者: 夜瀬 深月
第二章

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貴婦人の楔 -2-

第二章 貴婦人の楔は、何回かに分けて投稿します。

 ミルラは契約書を受け取ると、普段よりも少しだけ柔らかな声で話しかけた。



「依頼の内容は、何となく分かった。無理に話さなくていいから、想いが強く残っている物、見せてもらえる……?」


「……!?」



 フィオナさんは弾かれたように顔を上げた。大きく見開かれた目には、少しだけ涙が浮かんでいる。僕はもう慣れてしまったが、ミルラの言葉は、いつもこちらの思考の数歩先を行き、たまに大きく飛躍するのだ。しかし、依頼人のほとんどは、ミルラのことを「感情を香りに変える調香の魔女」としか認識せずにレミナンスを訪れる。そのため、話してもいないことを突然言い当てられて怯えてしまう依頼人を、僕は沢山見てきた。


 だが、フィオナさんは思ったよりも早く我に返り、椅子の横に置いていたハンドバッグから一枚の写真を取り出し、両手でミルラに差し出した。



「あ、あの……取り乱してしまって申し訳ありません。こちらですわ」


「ありがと。……あぁ、なるほど。あなたが恨んでいるのは、この男?」



 ミルラが僕に小さく手招きをしたので、僕は彼女の手元にある写真を覗き込んだ。少しだけ色褪せた写真には、一組の夫婦と赤ちゃんが写っていた。立っている男性は朗らかな笑みを浮かべて、女性が座っている椅子の背もたれに手を掛けており、女性の方は、白い布に包まれた赤ちゃんを慈しむように見つめている。


 それにしても、こんなに幸せそうな家族写真を見ながら、『恨む』とは穏やかな話ではない。フィオナさんの言葉を待っていると、彼女は先程までとは打って変わり、はっきりとした口調で答えた。



「ええ。そこに映っている男が、わたくしが殺したい程憎んでいる、父のグランツ・サドリスですわ。……少し長くなるのですが、お話ししてもよろしくて?」



 フィオナさんは一口だけホットミルクに口をつけてカップを置き、ミルラを見つめた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ミルラとリュネに少しでもご興味を持っていただけましたら、

★評価やご感想を頂けますと、私が泣いて喜びます。


今後ともよろしくお願い致します。

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