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月夜の空

会場の外へ足を運ぶと、冷たい風が熱くなった体を冷やしていく。

ふぅ、レイナの息子だけあってイケメンすぎるわね、てかあんなにモテモテなら私を同伴させる意味なかったんじゃないのかしら。


月夜が照らす庭には、見たこともない美しい華が咲き誇っていた。

おとぎ話のような世界を歩いていくと、月明かりに照らされた噴水が水しぶきをあげていた。

わぁ、幻想的ね・・・。

私はゆっくりと噴水に近づいていくと、後方から知った声が聞こえた。


「スズナ殿!」


私はゆっくりと振り返るとそこにはデニスがたっていた。

私はドレスの裾を持ち上げ、丁寧な礼をとった。


「そんなに畏まらなくて大丈夫だ。あなたが会場を出て行ったのが見えたので・・・」


私はほっと一息を付くと、デニスに笑顔を向けた。


「少し外の空気を吸いたくなってね。」


私はまた噴水に目を戻すと、月の光が反射し、キラキラと輝く滴を眺めた。


「また・・・スズナ様に出会えるとは思っていなかった・・・」


「ふふふ、私もあんなに小さかった青年がこんなにも成長しているなんてビックリよ」


私は彼と視線が合わないよう徐に噴水の前に腰かけると、流れる水を手で掬い上げた。


「俺は・・・もう目は反らさない。だからこちらをみてくれないか・・・?」


私は意外な言葉に大きく目を見開くと、手を濡らしたまま彼に視線をむけた。

目を反らさない彼に、私は優しく微笑みを浮かべた。


「ふふっ、本当ね。あんなに勢いよく目を逸らせていたのに。」


大人になった彼を感慨しく眺めていると、彼は真剣な顔つきで私をじっと見つめた。


「私は・・・ずっとあなたが好きだった。」


「えっ・・・」


突然の告白に呆然としていると、


「初めてあなたが私に声をかけてくれたときの事を覚えているだろうか・・・?レイラ様と並ぶように歩いていたあなたが・・・剣で打ち負け、泣いていた私の背中を撫で、励ましててくれた事を・・・。私に負ける事は強くなる一番の近道だと、あなたはそう言ってくれたんだ。いじけ、どうしようもなかった私をまた立ち上がらせてくれた。あの日から、私はあなたを思っていた。そしてあなたの事をどんどん知っていくうちにこの気持ちが大きくなって、まだ若かった私は照れて目を合わすこともできなかったんだ。」


彼は私にゆっくりと近づくと、私の前にしゃがみこんだ。

徐に濡れた私の手を包み込むと、情熱的な瞳でじっと私を見上げた。


「昔、あなたのいる世界について話をした事を覚えていますか?あなたの世界では大切な人に指輪を贈ると・・・」


彼の手には宝石がキラキラと光る指輪が握られていた。

私はその指輪をじっと見つめると、受け取れないわと首を横に振った。


「・・・デニスの事は嫌いではないわ。でも私はこの世界の住人ではない・・・、だからここで特別な人を作るつもりも、ここの人たちの世界を壊すつもりもないの。」


彼は寂しそうな視線を向けると、指輪を強く握りしめた。


「・・・ごめんなさい。でも気持ちは嬉かった、ありがとう。」


私は精一杯の微笑みを浮かべ彼を見つめると、悲しげな瞳が揺れていた。

じっと彼と見つめ合っていると、突然彼は私を強く抱き締めた。

私は彼の腕の中にスッポリ収まると、耳元でごめんなさい・・・と呟いた。

ふと抱きしめる彼の腕が震えているのに気が付いた。

私は何度もごめんなさいと呟くと彼の背中を優しく撫でた。


どれくらいそうしていただろうか、彼は私を抱いていた手の力を緩めると、私の頬へそっと唇を寄せた。

私の咄嗟に強く目を閉じると、彼は私の耳元で


「これで思い残すことはなくなりました・・・ありがとう。こんな僕に真剣に向き合ってくれて・・・。」


そう囁くと彼は私からスッと距離をとった。

離れた彼の肩越しに、青く澄んだ瞳がチラッと映った。


デニスは私に深く礼をとると、何も言わず庭の奥へと消え去っていく。

私はデニスの背中を眺めていると、ルイスが私の傍へと歩いてきていた。


「何をしていたのですか・・・?」


「昔話を少しね。」


私は正直に言うこともできず、困った様子を浮かべた。


「抱き合ってですか?」


うーんと頭を悩ませていると、彼は私の腕を掴み、強く引き寄せた。

私は彼の胸の中に囚われると、逃がさないとでも言うように強く抱きしめられた。


「わかっています・・・デニス殿に愛していると言われたんですよね?デニス殿の気持ちは知っていました・・・。」


耳元で切羽詰まったように話す彼を、あやすように背中を撫でた。


「スズナ様は何て答えたのですか?」


苦しそうな声で話す彼に、私は彼の胸を強く押し返すと、彼はビクッと体を震わせた。


「私はね、この世界の住人じゃないから・・・どんなに大切な人ができたとしても、いつ消えるかわからない私のそばに誰かを繋ぎ止めるなんて事はしないわ。」


私の言葉にルイスは苦渋の色を浮かべると、


「僕は・・・」


そうルイスが呟くと、彼の温もりが薄れていった。

あぁ、元の世界に戻るわね。

次第に彼の声が聞こえなくなり、私の世界は真っ白になった。

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