#13 作戦会議には酒を
「こんばんは〜! ごめんください〜……って、あれ?」
酒場の扉を開けたデイジーは、思わず足を止めた。
今日はソフィに呼ばれ、閉店後の酒場で作戦会議をすることになっていた。仲間も揃ってきたところだ。そろそろ情報を整理し、三か月後に向けて今後の動きを決めなければならない。
そのつもりで来たのだが、店内から聞こえてきたのは真剣な話し合いではなく、賑やかな笑い声だった。
「ああ! やっと来た!」
カウンターの奥からソフィが手を振った。
「デイジーちゃん、いらっしゃい!」
「来たわね〜!」
別のテーブルでは、すでに顔を赤くしたニーナがグラスを掲げていた。
「遅いわよ!」
「……ニーナさん?」
デイジーは店内を見回した。テーブルには酒瓶が何本も並び、料理もかなり減っている。
「みんな、お酒飲んでるの?」
「飲んでいるわよ」
「なんで?」
「ソフィ! デイジーにもビール!」
クロエが声を上げると、デイジーは慌てて手を振った。
「いらない! 私、お酒飲めないんだって!」
「あ、そっか」
「いつものチョコレートドリンクでお願いします!」
「はいはい」
ソフィが笑いながらカウンターへ戻る。その横では、マチルダが大皿のチキンを抱え込むようにして食べていた。
「デイジーちゃんも食べる?」
「え」
差し出された皿には、ほとんど骨しか残っていない。
「マチルダさん、それ一人で食べたの?」
「うん」
「四人前くらいありそうな大皿だよね?」
「ちょっと足りなかった」
「……そうなんだ」
デイジーが言葉を失っていると、ソフィがチョコレートドリンクを持ってきた。
「ごめんなぁ、デイジーちゃん。来るの遅かったから、先にパーティ始まってしもうた」
「パーティ!?」
「うん」
「私、作戦会議って聞いたんだけど! パーティなんて聞いてない!」
「言うてへんもん」
「じゃあ何で始まってるの!」
「なんか始まってしまったんやもん」
「そんな自然発生する!?」
ニーナがグラスを揺らしながら笑った。
「いいじゃない。作戦会議なんて飲みながらでもできるわよ」
「ニーナさん、もう酔ってるじゃん!」
「酔ってない」
「顔赤いです」
「照明のせいよ」
「絶対違う!」
その隣で、マチルダがチキンを食べ終え、ソフィへ顔を向けた。
「ねぇ、ソフィ。今日ここに泊めてくれない?」
「ええで」
「モグも一緒」
「もちろん」
「やった!」
マチルダは足元にいた小さなドラゴンを抱き上げた。
「モグ! 今日は野宿じゃないよ!」
モグが嬉しそうに鳴いた。
「宿、取れなかったの?」
デイジーが尋ねると、マチルダは頷いた。
「どこもいっぱいだった」
「今日は街に有名なスターさんが来てるからなぁ。ライブのお客さんで埋まっちょるんかも」
ソフィの言葉に、クロエが顔を上げた。
「スター? 誰?」
「何、あんた知らないの?」
ニーナが驚いたように見る。
「今かなり有名よ」
「へぇ。ニーナ詳しいんだね」
「まあね。私だって今は踊り子として舞台に立ってるんだから、業界のことくらい知ってるわよ」
クロエがにやりと笑った。
「ニーナが業界人ぶってる」
「何よ!」
「安物の剣を持って踊っていクセに」
「それもう忘れなさい!」
店内に笑い声が響いた。
デイジーはチョコレートドリンクを一口飲んだ。このままでは一生作戦会議が始まらない気がする。
その時、ソフィが思い出したように尋ねた。
「そうや、デイジーちゃん。今集めてる仲間って、これで全部なん?」
「あ!」
デイジーが時計を見た。
「そう! だから今日、みんなに集まってもらったんですよ」
「まだ来るの?」
ニーナが聞く。
「うん。そろそろ来ると思うんだけど……」
カラン。
入口のベルが鳴った。
全員が振り返ると、扉から一人の女性が顔を覗かせた。
「ごめんくださーい……」
女性は店内を見回した。
「あれ、ここで合ってる?」
「来た!」
デイジーの顔が明るくなる。
しかし、次の瞬間。
「えっ!?」
ニーナが勢いよく立ち上がった。
「サニーじゃない!?」
「え?」
クロエも振り返る。ソフィはカウンターから身を乗り出した。
入ってきたのは、すらりと背の高い、美しい女性だった。舞台とは違って簡素な服装をしているが、整った顔立ちと華やかな雰囲気は隠しきれていない。
今や国中で知らない者はいないほどのスーパースター、サニーだった。
「ライブお疲れ様です!」
デイジーが嬉しそうに駆け寄った。
「来てくれたんですね!」
「まあね。約束したし」
「ささ、こっちこっち!」
「……どうも」
ジェマは席へ案内されながら、店内の面々を見回した。
ニーナ。マチルダ。クロエ。そして、カウンターの向こうにいるソフィ。
その顔を見た途端、足が止まりそうになる。
「じゃあ、紹介しますね!」
そんなジェマの様子に気づかず、デイジーが全員の前に立った。
「こちらはサニーさん。レオナ先輩の幼なじみで、三か月後の戦いにも協力してくれることになっています!」
「よろしく〜」
ジェマは軽く手を振った。
「それで、こちらがニーナさん。元国家軍の兵士長で――」
「今は踊り子」
ニーナが横から付け足す。
「はいはい。それから、隣でチキン食べてるのがマチルダさん。その隣がクロエさんで、カウンターにいるのが――」
「……いいよ」
ジェマが口を挟んだ。
「え?」
「紹介しなくていい」
ニーナが眉を上げた。
「何よ、感じ悪いわね」
「そういう意味じゃないって」
「じゃあ何?」
ジェマは少し困ったように笑った。
「知ってるから」
「……は?」
「この人たち、全員知ってる」
店内が静かになった。
デイジーが首を傾げる。
「え? どういうことですか?」
ジェマは帽子を取り、髪をかき上げた。
「まあ、見た目だいぶ変わってるから。分かんないと思うけど」
昔の仲間たちがじっと見つめる。
「私、ジェマ・ハート」
少し照れくさそうに笑った。
「昔、あのハート家にいた。覚えてない?」
数秒の沈黙。
「……ジェマ?」
ソフィが呟いた。
「え?」
クロエが身を乗り出す。
「ジェマって、あのジェマ!?」
「そうだよ」
「ええええええええ!?」
四人の声が酒場いっぱいに響いた。
デイジーがびくっと肩を跳ねさせる。
「え!? 何!? 何ですか!?」
ニーナはジェマの目の前まで歩いていき、まじまじと顔を覗き込んだ。
「ちょっと待って。……何その顔!」
「は?」
「全然違うじゃない!」
「だから変えたんだって!」
「顔変えたの!?」
「変えたよ」
「全部!?」
「ほぼ全部。腕の良い造顔術師にやってもらった」
ソフィまでカウンターから出てきた。
「あー! 言われてみれば、目元とかちょっと面影あるわ!」
「近い近い!」
クロエも反対側から覗き込む。
「ほんとだ! でも、すっごい美人になってる!」
「昔から美人だったでしょ!」
「えー?」
「何その反応!」
三人に囲まれるジェマを、マチルダだけが少し離れた場所から眺めていた。
やがて、ぽつりと言った。
「……ジェマ、生きてたんだ」
その一言で、騒がしかった店内が静かになった。
ソフィがジェマの顔を見つめる。
「……ほんまやな」
クロエも笑顔を消した。
「ハート家が壊滅したって聞いてから、ジェマのこと、誰も知らなかったから……」
「死んだのかと思ってたわ」
ニーナが静かに言った。
ジェマは少しだけ視線を逸らした。
「まあ、そう思われるようにしたからね」
「なんで?」
「いろいろあったの」
ジェマは四人を見回した。
「でも、みんな元気そうでよかった」
そして、いつもの笑顔を浮かべた。
「久しぶり」
次の瞬間、ソフィが抱きついた。
「ジェマー!」
「うわっ!」
「生きてたぁ!」
クロエも横から飛びつく。
「ほんとにジェマだ!」
「ちょっと、苦しいって!」
マチルダまで立ち上がった。
「自分も!」
「待って! チキン持ったまま来ないで!」
「なんで?」
「服が汚れるから!」
ニーナは少し離れたところから笑っていた。
「相変わらず人気ね」
「見てないで助けてよ!」
デイジーだけが、完全に取り残されていた。
「……え」
抱き合っている四人と、それを眺めるニーナを見る。
「ちょっと待って。みなさん、知り合いだったんですか?」
「知り合いも何も」
ニーナが振り返った。
「昔、一緒に遊んでたわよ」
「ええっ!?」
デイジーは目を丸くした。
「ジェマさんがレオナ先輩の幼なじみのは知ってましたけど、みなさんとも!?」
「そうそう」
クロエが笑った。
「レオナが連れてきたんだよ」
ソフィも懐かしそうに頷く。
「学校帰りにな、レオナが突然『めちゃくちゃ強くて面白い子おるから行こう!』って」
「そうだった!」
クロエが吹き出した。
「それで山まで連れていかれたんだよね」
「『私より強いやつ見つけた!』って言うてたなぁ」
ニーナが笑う。
「そんな紹介だったの?」
「だいたいそんな感じ」
ジェマは呆れたように肩をすくめた。
「人を珍しい魔物みたいに紹介しないでほしいよね」
「でも、ほんまに強かったもん」
ソフィが笑った。
「最初はちょっと怖かったで」
「失礼だな。ソフィの方がよっぽど怖かったよ」
「何でやねん!」
「すぐ魔法撃ってくるから」
「ジェマが煽るからや!」
マチルダが頷いた。
「二人、いつも喧嘩してた」
「してへん!」
「してたよ」
クロエも笑う。
ジェマはしばらくみんなの顔を眺めていた。
「……懐かしいなぁ」
あの頃は、誰がどこの家の娘かなんて関係なかった。レオナに連れられて山へ集まり、日が暮れるまで遊んでいた。
家に帰りたくなかったジェマにとって、あの山は何より自由でいられる場所だった。
デイジーは五人の顔を見ながら、ようやく理解した。
レオナと縁のある人たちを、一人ずつ探してきたつもりだった。けれど、彼女たちはずっと昔からつながっていたのだ。
「……すごい」
思わず呟く。
「みんな、最初から仲間だったんですね」
「まあね」
ジェマが笑った。
その肩を、ソフィがぽんと叩く。
「それにしても、まさかあのジェマが、今はサニー様とはなぁ」
「何、その言い方」
ニーナが腕を組んだ。
「ほんとよね。あの山で魔物を追い回してた子が、今じゃ歌って踊ってスーパースター」
「やめて」
「女の子にキャーキャー言われちゃって」
「やめろって!」
「昔はあんなに泥だらけだったのにねぇ」
「うるさい!」
再び店内に笑い声が広がった。
デイジーはチョコレートドリンクを飲みながら、静かにため息をついた。
今日、本当に作戦会議が始まるのだろうか。
*
ひとしきり再会を喜び、昔話で盛り上がったところで、デイジーはようやくテーブルを叩いた。
「はい! みなさん!」
誰も聞いていない。
「みなさん!!」
今度は少し大きな声を出す。
ようやく全員が振り返った。
「そろそろ作戦会議しません?」
ニーナが首を傾げる。
「今してなかった?」
「してないです! ずっと昔話しかしてない!」
「ええやん、久しぶりなんやから」
ソフィが笑う。
「その気持ちは分かるけど!」
デイジーは持ってきた資料をテーブルに広げた。
「ひとまず、今集められるメンバーは全員揃いました」
ニーナ、マチルダ、ソフィ、クロエ、ジェマ。そして自分。
デイジーは一人ずつ顔を見回した。
「ここからが本題です」
ようやく、みんながグラスや料理から手を離した。
「このメンバーで、どうやってレオナ先輩を取り戻すか」
誰もすぐには答えなかった。
「それでな」
ソフィが口を開いた。
「みんなに報告せなあかんことがあるねん」
「何?」
ニーナが尋ねる。
「前にデイジーちゃんからレオナの話を聞いてから、ずっと魔族化の呪術について調べてたんよ」
ジェマが驚いた顔をする。
「ソフィが? そんなこと調べられるの?」
「ジェマ、知らないの?」
クロエが笑った。
「ソフィ、元王の鳥だよ」
「……え?」
ジェマはソフィを見た。
「ほんとに?」
「ほんまやで」
「……あの、昔どんくさかったソフィが?」
「どういう意味やねん!」
「だって、昔は魔法撃って自分でびっくりしてたじゃん」
「いつの話してんの!」
クロエが横から笑う。
「今もどんくさいよ。スライムに追い回されてた」
「クロエ! あんただってあの時逃げてたやん!」
ジェマが目を丸くした。
「大丈夫なの? 王の鳥って」
「ちょっと!」
デイジーが割って入った。
「ソフィさんの話、聞きましょう!」
ソフィは咳払いをした。
「……せやで。あの時のスライムな、魔法撃って消そうとしたら」
デイジーが即座に遮る。
「違う!」
「え?」
「その話じゃない!」
マチルダが横から手を上げる。
「あ、チキンおかわり」
デイジーはしばらく全員を見た。
「……このメンバー、不安になってきた」
はいはい〜とソフィは席を立ったが、おかわりチキンを準備しながら、急に話を戻した。
「レオナの話だけどな。結論から言うと、魔族化を解除する方法は見つかった」
デイジーが身を乗り出した。
「本当ですか!?」
「うん。ただし、かなり危険な方法や」
チキンを持ったお皿をマチルダの前に置くと、ソフィは古い研究資料をテーブルの中央へ置いた。
「まず、魔族化の呪術は、普通の呪いとは違うねん。人間の身体に魔族の力を加えるんやなくて、魔族としての生命に作り変えてしまう」
ニーナが眉を寄せた。
「じゃあ、普通の解呪魔法じゃ戻せないってこと?」
「そういうこと。無理に呪いだけ消しても、身体そのものが維持できへん可能性がある」
「……それで、どうするの?」
クロエが尋ねる。
ソフィは資料の一節を指さした。
「調べた限り、方法は一つしかなかった」
全員がソフィを見た。
「魔族としての生命を、一度完全に終わらせるんよ」
「……終わらせる?」
マチルダが聞き返した。
ソフィは頷いた。
「レオナを、一度殺さなあかん」
テーブルが静まり返った。
「……ちょっと待って」
ニーナが口を開く。
「私たちはレオナを助けるために集まったのよね?」
「そうやで」
「なのに、殺すの?」
「最後まで聞いて」
ソフィは資料の次のページを開いた。
「魔族としての生命が完全に止まれば、身体を魔族に変えていた力も消える。その直後、人間だった身体がまだ残っている間に、死者蘇生の魔法をかけるんや」
デイジーが資料を覗き込んだ。
「……人間として、もう一度生き返らせる?」
「そう。それが、文献に残ってた唯一の方法や」
「じゃあ!」
クロエの顔が明るくなる。
「それができれば、レオナを元に戻せるんだね!」
「理論上はな」
ソフィは頷いた。
「ただし、失敗は許されへん。蘇生が間に合わなかったら、レオナは本当に死んでしまう」
その言葉に、全員が黙った。
デイジーは資料に書かれた文字を見つめていた。
レオナを殺す。
軍から命じられた任務と、同じことをしなければならない。
けれど、今度は違う。
その先に、レオナを取り戻す方法がある。
「……それで、何が必要なんですか?」
デイジーが尋ねた。
ソフィは顔を上げた。
「蘇生魔法を使える僧侶や。それも、かなり腕の立つ人でないとあかん」
「蘇生魔法……」
ニーナが呟く。
「死んだ人間を生き返らせる魔法なんて、本当にあるの?」
「あるにはある。ただ、使える人はほとんどおらへん」
ソフィは別の資料を開いた。
「五百年くらい前、メティスっていう伝説の大司教がおってな。その人と、一部の弟子や後継者が蘇生術を使えたって記録がある」
「五百年前……」
デイジーが驚く。
「そんな昔の話なんですか?」
「せやねん。しかも、その系譜は昔の魔族との戦争で途絶えたって記録になってる」
「じゃあ、今は?」
ニーナが聞いた。
「王の鳥の記録では、使える人は残ってへんことになってる」
「そんな……」
マチルダの顔が曇った。
「でも、絶対におらへんとは限らんよ」
ソフィは資料を閉じた。
「古い記録やし、王の鳥が把握してなかった僧侶もおるかもしれへん。せやから、探す価値はあると思う」
その時だった。
「……蘇生魔法?」
ジェマが小さく呟いた。
頭の中に、一人の女性が浮かんだ。
山の中で出会った、長身の美しい弓使い。深いフードの下から覗く整った顔立ち。そして、死んだ少女を生き返らせた、あの光。
『蘇生魔法です』
あの人は、確かにそう言った。
「……」
ジェマの手が止まる。
「ジェマさん?」
デイジーが気づいた。
「どうしました?」
「え?」
「何か心当たりあります?」
「……」
ある。
ものすごくある。
しかも、ついこの間会ったばかりだ。
けれど、ジェマはすぐに答えなかった。
*
『よかったら一緒に街行かない?』
『ううん。いいです』
『ご飯くらい!』
『大丈夫です』
『じゃあ途中まで!』
『大丈夫です』
『せめて名前!』
『またね、ジェマさん』
*
「……」
ジェマは頬を膨らせた。
「ない」
「……え?」
デイジーがじっと見る。
「ほんとに? 今、明らかに何か思い出してませんでした?」
「気のせい」
「顔に出てましたよ」
「出てない」
ジェマはグラスを手に取り、ぐいっと酒を飲んだ。
別に、振られたから言いたくないわけじゃない。
名前も知らないし、どこにいるかも分からない。そんな人のことを話したところで、どうしようもないじゃないか。
……そう。それだけ。
「まあ、そんな簡単に見つかる人やないと思うけどな」
ソフィが言った。
「でも、手がかりはある」
デイジーが顔を上げる。
「手がかり?」
「南にスルバン大聖堂があるやろ。あそこなら古い宗教資料も残ってるし、僧侶も大勢おる。メティス様の系譜について、何か知ってる人がおるかもしれへん」
「なるほど!」
デイジーが頷いた。
「確かに、あそこなら蘇生魔法について詳しい人がいるかもしれませんね」
クロエが尋ねる。
「じゃあ、次はそこに行く?」
「そうしましょう!」
デイジーは資料をまとめた。
「次の目的地は、スルバン大聖堂。そこで蘇生魔法を使える僧侶を探します!」
ソフィが頷いた。
「せやな。私も、ほかに方法がないか調べ続けるわ」
「お願いします!」
ようやく、次にやるべきことが決まった。
今の自分たちだけではレオナを救えない。けれど、必要なものが分かったなら、あとは探すだけだ。
三か月後までに、必ず。
その隣で、ジェマだけは黙ってグラスを眺めていた。
蘇生魔法を使える僧侶。
……あの人は最後に『またね』と言った。
だったら、もう一度会えるかもしれない。
ジェマはそっとグラスを置いた。
みんなに教えるのは、それからでも遅くない。
まずは、あの美人を見つけ出す。
そして今度こそ、名前を聞いてやる。
ジェマは一人、心の中でそう決めた。
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