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討伐対象は、かつて私を救ってくれた恩人でした 〜殺せと命じられたので最強仲間たちと連れ戻します〜  作者: Marine
第二章 集結

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13/22

#13 作戦会議には酒を

「こんばんは〜! ごめんください〜……って、あれ?」


 酒場の扉を開けたデイジーは、思わず足を止めた。


 今日はソフィに呼ばれ、閉店後の酒場で作戦会議をすることになっていた。仲間も揃ってきたところだ。そろそろ情報を整理し、三か月後に向けて今後の動きを決めなければならない。


 そのつもりで来たのだが、店内から聞こえてきたのは真剣な話し合いではなく、賑やかな笑い声だった。


「ああ! やっと来た!」


 カウンターの奥からソフィが手を振った。


「デイジーちゃん、いらっしゃい!」


「来たわね〜!」


 別のテーブルでは、すでに顔を赤くしたニーナがグラスを掲げていた。


「遅いわよ!」


「……ニーナさん?」


 デイジーは店内を見回した。テーブルには酒瓶が何本も並び、料理もかなり減っている。


「みんな、お酒飲んでるの?」


「飲んでいるわよ」


「なんで?」


「ソフィ! デイジーにもビール!」


 クロエが声を上げると、デイジーは慌てて手を振った。


「いらない! 私、お酒飲めないんだって!」


「あ、そっか」


「いつものチョコレートドリンクでお願いします!」


「はいはい」


 ソフィが笑いながらカウンターへ戻る。その横では、マチルダが大皿のチキンを抱え込むようにして食べていた。


「デイジーちゃんも食べる?」


「え」


 差し出された皿には、ほとんど骨しか残っていない。


「マチルダさん、それ一人で食べたの?」


「うん」


「四人前くらいありそうな大皿だよね?」


「ちょっと足りなかった」


「……そうなんだ」


 デイジーが言葉を失っていると、ソフィがチョコレートドリンクを持ってきた。


「ごめんなぁ、デイジーちゃん。来るの遅かったから、先にパーティ始まってしもうた」


「パーティ!?」


「うん」


「私、作戦会議って聞いたんだけど! パーティなんて聞いてない!」


「言うてへんもん」


「じゃあ何で始まってるの!」


「なんか始まってしまったんやもん」


「そんな自然発生する!?」


 ニーナがグラスを揺らしながら笑った。


「いいじゃない。作戦会議なんて飲みながらでもできるわよ」


「ニーナさん、もう酔ってるじゃん!」


「酔ってない」


「顔赤いです」


「照明のせいよ」


「絶対違う!」


 その隣で、マチルダがチキンを食べ終え、ソフィへ顔を向けた。


「ねぇ、ソフィ。今日ここに泊めてくれない?」


「ええで」


「モグも一緒」


「もちろん」


「やった!」


 マチルダは足元にいた小さなドラゴンを抱き上げた。


「モグ! 今日は野宿じゃないよ!」


 モグが嬉しそうに鳴いた。


「宿、取れなかったの?」


 デイジーが尋ねると、マチルダは頷いた。


「どこもいっぱいだった」


「今日は街に有名なスターさんが来てるからなぁ。ライブのお客さんで埋まっちょるんかも」


 ソフィの言葉に、クロエが顔を上げた。


「スター? 誰?」


「何、あんた知らないの?」


 ニーナが驚いたように見る。


「今かなり有名よ」


「へぇ。ニーナ詳しいんだね」


「まあね。私だって今は踊り子として舞台に立ってるんだから、業界のことくらい知ってるわよ」


 クロエがにやりと笑った。


「ニーナが業界人ぶってる」


「何よ!」


「安物の剣を持って踊っていクセに」


「それもう忘れなさい!」


 店内に笑い声が響いた。


 デイジーはチョコレートドリンクを一口飲んだ。このままでは一生作戦会議が始まらない気がする。


 その時、ソフィが思い出したように尋ねた。


「そうや、デイジーちゃん。今集めてる仲間って、これで全部なん?」


「あ!」


 デイジーが時計を見た。


「そう! だから今日、みんなに集まってもらったんですよ」


「まだ来るの?」


 ニーナが聞く。


「うん。そろそろ来ると思うんだけど……」


 カラン。


 入口のベルが鳴った。


 全員が振り返ると、扉から一人の女性が顔を覗かせた。


「ごめんくださーい……」


 女性は店内を見回した。


「あれ、ここで合ってる?」


「来た!」


 デイジーの顔が明るくなる。


 しかし、次の瞬間。


「えっ!?」


 ニーナが勢いよく立ち上がった。


「サニーじゃない!?」


「え?」


 クロエも振り返る。ソフィはカウンターから身を乗り出した。


 入ってきたのは、すらりと背の高い、美しい女性だった。舞台とは違って簡素な服装をしているが、整った顔立ちと華やかな雰囲気は隠しきれていない。


 今や国中で知らない者はいないほどのスーパースター、サニーだった。


「ライブお疲れ様です!」


 デイジーが嬉しそうに駆け寄った。


「来てくれたんですね!」


「まあね。約束したし」


「ささ、こっちこっち!」


「……どうも」


 ジェマは席へ案内されながら、店内の面々を見回した。


 ニーナ。マチルダ。クロエ。そして、カウンターの向こうにいるソフィ。


 その顔を見た途端、足が止まりそうになる。


「じゃあ、紹介しますね!」


 そんなジェマの様子に気づかず、デイジーが全員の前に立った。


「こちらはサニーさん。レオナ先輩の幼なじみで、三か月後の戦いにも協力してくれることになっています!」


「よろしく〜」


 ジェマは軽く手を振った。


「それで、こちらがニーナさん。元国家軍の兵士長で――」


「今は踊り子」


 ニーナが横から付け足す。


「はいはい。それから、隣でチキン食べてるのがマチルダさん。その隣がクロエさんで、カウンターにいるのが――」


「……いいよ」


 ジェマが口を挟んだ。


「え?」


「紹介しなくていい」


 ニーナが眉を上げた。


「何よ、感じ悪いわね」


「そういう意味じゃないって」


「じゃあ何?」


 ジェマは少し困ったように笑った。


「知ってるから」


「……は?」


「この人たち、全員知ってる」


 店内が静かになった。


 デイジーが首を傾げる。


「え? どういうことですか?」


 ジェマは帽子を取り、髪をかき上げた。


「まあ、見た目だいぶ変わってるから。分かんないと思うけど」


 昔の仲間たちがじっと見つめる。


「私、ジェマ・ハート」


 少し照れくさそうに笑った。


「昔、あのハート家にいた。覚えてない?」


 数秒の沈黙。


「……ジェマ?」


 ソフィが呟いた。


「え?」


 クロエが身を乗り出す。


「ジェマって、あのジェマ!?」


「そうだよ」


「ええええええええ!?」


 四人の声が酒場いっぱいに響いた。


 デイジーがびくっと肩を跳ねさせる。


「え!? 何!? 何ですか!?」


 ニーナはジェマの目の前まで歩いていき、まじまじと顔を覗き込んだ。


「ちょっと待って。……何その顔!」


「は?」


「全然違うじゃない!」


「だから変えたんだって!」


「顔変えたの!?」


「変えたよ」


「全部!?」


「ほぼ全部。腕の良い造顔術師にやってもらった」


 ソフィまでカウンターから出てきた。


「あー! 言われてみれば、目元とかちょっと面影あるわ!」


「近い近い!」


 クロエも反対側から覗き込む。


「ほんとだ! でも、すっごい美人になってる!」


「昔から美人だったでしょ!」


「えー?」


「何その反応!」


 三人に囲まれるジェマを、マチルダだけが少し離れた場所から眺めていた。


 やがて、ぽつりと言った。


「……ジェマ、生きてたんだ」


 その一言で、騒がしかった店内が静かになった。


 ソフィがジェマの顔を見つめる。


「……ほんまやな」


 クロエも笑顔を消した。


「ハート家が壊滅したって聞いてから、ジェマのこと、誰も知らなかったから……」


「死んだのかと思ってたわ」


 ニーナが静かに言った。


 ジェマは少しだけ視線を逸らした。


「まあ、そう思われるようにしたからね」


「なんで?」


「いろいろあったの」


 ジェマは四人を見回した。


「でも、みんな元気そうでよかった」


 そして、いつもの笑顔を浮かべた。


「久しぶり」


 次の瞬間、ソフィが抱きついた。


「ジェマー!」


「うわっ!」


「生きてたぁ!」


 クロエも横から飛びつく。


「ほんとにジェマだ!」


「ちょっと、苦しいって!」


 マチルダまで立ち上がった。


「自分も!」


「待って! チキン持ったまま来ないで!」


「なんで?」


「服が汚れるから!」


 ニーナは少し離れたところから笑っていた。


「相変わらず人気ね」


「見てないで助けてよ!」


 デイジーだけが、完全に取り残されていた。


「……え」


 抱き合っている四人と、それを眺めるニーナを見る。


「ちょっと待って。みなさん、知り合いだったんですか?」


「知り合いも何も」


 ニーナが振り返った。


「昔、一緒に遊んでたわよ」


「ええっ!?」


 デイジーは目を丸くした。


「ジェマさんがレオナ先輩の幼なじみのは知ってましたけど、みなさんとも!?」


「そうそう」


 クロエが笑った。


「レオナが連れてきたんだよ」


 ソフィも懐かしそうに頷く。


「学校帰りにな、レオナが突然『めちゃくちゃ強くて面白い子おるから行こう!』って」


「そうだった!」


 クロエが吹き出した。


「それで山まで連れていかれたんだよね」


「『私より強いやつ見つけた!』って言うてたなぁ」


 ニーナが笑う。


「そんな紹介だったの?」


「だいたいそんな感じ」


 ジェマは呆れたように肩をすくめた。


「人を珍しい魔物みたいに紹介しないでほしいよね」


「でも、ほんまに強かったもん」


 ソフィが笑った。


「最初はちょっと怖かったで」


「失礼だな。ソフィの方がよっぽど怖かったよ」


「何でやねん!」


「すぐ魔法撃ってくるから」


「ジェマが煽るからや!」


 マチルダが頷いた。


「二人、いつも喧嘩してた」


「してへん!」


「してたよ」


 クロエも笑う。


 ジェマはしばらくみんなの顔を眺めていた。


「……懐かしいなぁ」


 あの頃は、誰がどこの家の娘かなんて関係なかった。レオナに連れられて山へ集まり、日が暮れるまで遊んでいた。


 家に帰りたくなかったジェマにとって、あの山は何より自由でいられる場所だった。


 デイジーは五人の顔を見ながら、ようやく理解した。


 レオナと縁のある人たちを、一人ずつ探してきたつもりだった。けれど、彼女たちはずっと昔からつながっていたのだ。


「……すごい」


 思わず呟く。


「みんな、最初から仲間だったんですね」


「まあね」


 ジェマが笑った。


 その肩を、ソフィがぽんと叩く。


 「それにしても、まさかあのジェマが、今はサニー様とはなぁ」


「何、その言い方」


 ニーナが腕を組んだ。


「ほんとよね。あの山で魔物を追い回してた子が、今じゃ歌って踊ってスーパースター」


「やめて」


「女の子にキャーキャー言われちゃって」


「やめろって!」


「昔はあんなに泥だらけだったのにねぇ」


「うるさい!」


 再び店内に笑い声が広がった。


 デイジーはチョコレートドリンクを飲みながら、静かにため息をついた。


 今日、本当に作戦会議が始まるのだろうか。


*


 ひとしきり再会を喜び、昔話で盛り上がったところで、デイジーはようやくテーブルを叩いた。


「はい! みなさん!」


 誰も聞いていない。


「みなさん!!」


 今度は少し大きな声を出す。


 ようやく全員が振り返った。


「そろそろ作戦会議しません?」


 ニーナが首を傾げる。


「今してなかった?」


「してないです! ずっと昔話しかしてない!」


「ええやん、久しぶりなんやから」


 ソフィが笑う。


「その気持ちは分かるけど!」


 デイジーは持ってきた資料をテーブルに広げた。


「ひとまず、今集められるメンバーは全員揃いました」


 ニーナ、マチルダ、ソフィ、クロエ、ジェマ。そして自分。


 デイジーは一人ずつ顔を見回した。


「ここからが本題です」


 ようやく、みんながグラスや料理から手を離した。


「このメンバーで、どうやってレオナ先輩を取り戻すか」


 誰もすぐには答えなかった。


「それでな」


 ソフィが口を開いた。


「みんなに報告せなあかんことがあるねん」


「何?」


 ニーナが尋ねる。


「前にデイジーちゃんからレオナの話を聞いてから、ずっと魔族化の呪術について調べてたんよ」


 ジェマが驚いた顔をする。


「ソフィが? そんなこと調べられるの?」


「ジェマ、知らないの?」


 クロエが笑った。


「ソフィ、元王の鳥だよ」


「……え?」


 ジェマはソフィを見た。


「ほんとに?」


「ほんまやで」


「……あの、昔どんくさかったソフィが?」


「どういう意味やねん!」


「だって、昔は魔法撃って自分でびっくりしてたじゃん」


「いつの話してんの!」


 クロエが横から笑う。


「今もどんくさいよ。スライムに追い回されてた」


「クロエ! あんただってあの時逃げてたやん!」


 ジェマが目を丸くした。


「大丈夫なの? 王の鳥って」


「ちょっと!」


 デイジーが割って入った。


「ソフィさんの話、聞きましょう!」


 ソフィは咳払いをした。


「……せやで。あの時のスライムな、魔法撃って消そうとしたら」


 デイジーが即座に遮る。


「違う!」


「え?」


「その話じゃない!」


 マチルダが横から手を上げる。


「あ、チキンおかわり」


 デイジーはしばらく全員を見た。


「……このメンバー、不安になってきた」


 はいはい〜とソフィは席を立ったが、おかわりチキンを準備しながら、急に話を戻した。


「レオナの話だけどな。結論から言うと、魔族化を解除する方法は見つかった」


 デイジーが身を乗り出した。


「本当ですか!?」


「うん。ただし、かなり危険な方法や」


 チキンを持ったお皿をマチルダの前に置くと、ソフィは古い研究資料をテーブルの中央へ置いた。


「まず、魔族化の呪術は、普通の呪いとは違うねん。人間の身体に魔族の力を加えるんやなくて、魔族としての生命に作り変えてしまう」


 ニーナが眉を寄せた。


「じゃあ、普通の解呪魔法じゃ戻せないってこと?」


「そういうこと。無理に呪いだけ消しても、身体そのものが維持できへん可能性がある」


「……それで、どうするの?」


 クロエが尋ねる。


 ソフィは資料の一節を指さした。


「調べた限り、方法は一つしかなかった」


 全員がソフィを見た。


「魔族としての生命を、一度完全に終わらせるんよ」


「……終わらせる?」


 マチルダが聞き返した。


 ソフィは頷いた。


「レオナを、一度殺さなあかん」


 テーブルが静まり返った。


「……ちょっと待って」


 ニーナが口を開く。


「私たちはレオナを助けるために集まったのよね?」


「そうやで」


「なのに、殺すの?」


「最後まで聞いて」


 ソフィは資料の次のページを開いた。


「魔族としての生命が完全に止まれば、身体を魔族に変えていた力も消える。その直後、人間だった身体がまだ残っている間に、死者蘇生の魔法をかけるんや」


 デイジーが資料を覗き込んだ。


「……人間として、もう一度生き返らせる?」


「そう。それが、文献に残ってた唯一の方法や」


「じゃあ!」


 クロエの顔が明るくなる。


「それができれば、レオナを元に戻せるんだね!」


「理論上はな」


 ソフィは頷いた。


「ただし、失敗は許されへん。蘇生が間に合わなかったら、レオナは本当に死んでしまう」


 その言葉に、全員が黙った。


 デイジーは資料に書かれた文字を見つめていた。


 レオナを殺す。


 軍から命じられた任務と、同じことをしなければならない。


 けれど、今度は違う。


 その先に、レオナを取り戻す方法がある。


「……それで、何が必要なんですか?」


 デイジーが尋ねた。


 ソフィは顔を上げた。


「蘇生魔法を使える僧侶や。それも、かなり腕の立つ人でないとあかん」


「蘇生魔法……」


 ニーナが呟く。


「死んだ人間を生き返らせる魔法なんて、本当にあるの?」


「あるにはある。ただ、使える人はほとんどおらへん」


 ソフィは別の資料を開いた。


「五百年くらい前、メティスっていう伝説の大司教がおってな。その人と、一部の弟子や後継者が蘇生術を使えたって記録がある」


「五百年前……」


 デイジーが驚く。


「そんな昔の話なんですか?」


「せやねん。しかも、その系譜は昔の魔族との戦争で途絶えたって記録になってる」


「じゃあ、今は?」


 ニーナが聞いた。


「王の鳥の記録では、使える人は残ってへんことになってる」


「そんな……」


 マチルダの顔が曇った。


「でも、絶対におらへんとは限らんよ」


 ソフィは資料を閉じた。


「古い記録やし、王の鳥が把握してなかった僧侶もおるかもしれへん。せやから、探す価値はあると思う」


 その時だった。


「……蘇生魔法?」


 ジェマが小さく呟いた。


 頭の中に、一人の女性が浮かんだ。


 山の中で出会った、長身の美しい弓使い。深いフードの下から覗く整った顔立ち。そして、死んだ少女を生き返らせた、あの光。


『蘇生魔法です』


 あの人は、確かにそう言った。


「……」


 ジェマの手が止まる。


「ジェマさん?」


 デイジーが気づいた。


「どうしました?」


「え?」


「何か心当たりあります?」


「……」


 ある。


 ものすごくある。


 しかも、ついこの間会ったばかりだ。


 けれど、ジェマはすぐに答えなかった。


*


『よかったら一緒に街行かない?』


『ううん。いいです』


『ご飯くらい!』


『大丈夫です』


『じゃあ途中まで!』


『大丈夫です』


『せめて名前!』


『またね、ジェマさん』


*


「……」


 ジェマは頬を膨らせた。


「ない」


「……え?」


 デイジーがじっと見る。


「ほんとに? 今、明らかに何か思い出してませんでした?」


「気のせい」


「顔に出てましたよ」


「出てない」


 ジェマはグラスを手に取り、ぐいっと酒を飲んだ。


 別に、振られたから言いたくないわけじゃない。


 名前も知らないし、どこにいるかも分からない。そんな人のことを話したところで、どうしようもないじゃないか。


 ……そう。それだけ。


「まあ、そんな簡単に見つかる人やないと思うけどな」


 ソフィが言った。


「でも、手がかりはある」


 デイジーが顔を上げる。


「手がかり?」


「南にスルバン大聖堂があるやろ。あそこなら古い宗教資料も残ってるし、僧侶も大勢おる。メティス様の系譜について、何か知ってる人がおるかもしれへん」


「なるほど!」


 デイジーが頷いた。


「確かに、あそこなら蘇生魔法について詳しい人がいるかもしれませんね」


 クロエが尋ねる。


「じゃあ、次はそこに行く?」


「そうしましょう!」


 デイジーは資料をまとめた。


「次の目的地は、スルバン大聖堂。そこで蘇生魔法を使える僧侶を探します!」


 ソフィが頷いた。


「せやな。私も、ほかに方法がないか調べ続けるわ」


「お願いします!」


 ようやく、次にやるべきことが決まった。


 今の自分たちだけではレオナを救えない。けれど、必要なものが分かったなら、あとは探すだけだ。


 三か月後までに、必ず。


 その隣で、ジェマだけは黙ってグラスを眺めていた。


 蘇生魔法を使える僧侶。


 ……あの人は最後に『またね』と言った。


 だったら、もう一度会えるかもしれない。


 ジェマはそっとグラスを置いた。


 みんなに教えるのは、それからでも遅くない。


 まずは、あの美人を見つけ出す。


 そして今度こそ、名前を聞いてやる。


 ジェマは一人、心の中でそう決めた。

読んでいただきありがとうございました!

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本作はすでに最終回まで完成してます。昼12時、夜22時の1日2回投稿してますのでよかったらブックマーク登録もお願いします!

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