82話 あれっ―!?
「あれっ―!?」
「そういえば、カリーナがいませんね…」
ボタンを押そうとしたモッチ村長は、気付いて言う。
「あれ、おかしいですね…カリーナさんも私達と畑にいて、一緒に逃げて来たと思ったのですが…」
逃げてきた村人の1人が言う。
カリーナさんは、一体どこに…
「はて、トイレですかね…?」
「…」(皆)
「「「カリーナアアアアアアアアアア!!」」」(2人の叫び)
((ええええええ~!!))
モッチ村長とベン君はー
先程の冷静さは、嘘だったかの様に叫びながら村から飛び出していきます。まさか、そのまさかで、カリーナさんはまだ畑にいる可能性が高いのです!!
((カリーナさんに、何かあったのか―!?))
「…」(私)
…と言いますか、モッチ村長は腰を痛めて全然動けないと言っていたのに、まるで陸上選手並みのスピードで駆けて行きます。これは、何かの魔法を使ったのでしょうか―!?
いや、それとも火事場の馬鹿力か―!!
「あれは、痛みを軽減するペインレストと言う魔法よ!!」
カマンヴェールさんは、言う。
あっ、魔法だったんですね。
なるほど…いや、そんな呑気な事を言っている場合では無い!!
「「私達も追いかけるわよ!!」」
「「は、はい!!」」
―畑は、村から数百メートル離れた場所にありましたね。
私とカマンヴェールさんも、全速力で前を行く2人に離されない様に必死に走る。
「「ハァハァハァハァハァハァ―!!」」
息を切らしながら走る私。
体力、少なっ。
「!!」(私)
でも、すぐにカリーナさんの姿が見えた。
道の真ん中で、うずくまっている。手で痛そうに足を抑えている。近くには、スライムがピョンピョンと飛んでいた。もしかして…スライムで転んで、足を痛めてしまったのか!!
「ウゴオオオオオオオオ…」
そして―
そのすぐ後ろには、巨大ゴブリンがいて、巨大なこん棒をカリーナさんのか弱い身体に向けて、高々と振りかざしている。そう、今まさに、こん棒を振り下ろす所だった。こん棒に潰されば、間違いなく即死だ!!
しかし、しかしー
懸命に前を行く2人も…距離的に、もう間に合わない―!!
「ダメよ、間に合わないわ…」
カマンヴェールさんも、そう言葉を漏らす。
((クソっ、間に合わないのか―))
「「カリーナサアアアアアア―ン!!」」
「「ベンサアアアアアアアア―ン!!」」
2人の悲痛な叫びが、響き渡る。
私は、こん棒が振り下ろされる瞬間に
カリーナさんから目を背けようとするが―
(あっ、バリアがあったわ…)
「「「「「ガッキイイイイイイイ―ン!!」」」」」
バリアが巨大ゴブリンのこん棒を受け止めます。
と言いますか…
モッチ村長が、カリーナさんがいないと気付いた時点で、ゼニィーが畑に急行していました。カリーナさんの頭の上で、手を振るゼニィーさん。
ああ~、良かった…
膝をついて、安堵する私。
「これは、一体…!?」(唖然とする2人)
「イブちゃん、もしかして貴方の魔法なの…?」
皆が唖然としている中、カマンヴェールさんは言う。
「はい、バリアです…」
「えっ、バリア…あっ、防壁の魔法の事ね!!」
「「ウゴオオオオオオオオオオオオ―!!」」
「「「ガッキイイイイイイ―ン!!」」」
「「「ガッキイイイイイイ―ン!!」」」
「「「ガッキイイイイイイ―ン!!」」」
それからも…
相変わらず巨大ゴブリンは、こん棒でカリーナさんを叩いている。
とりあえず、ここから先はどうしましょうか…?
モッチ村長とベン君も、我に返ったのかタジタジしていますし。
「フフフフ、私に任せてちょうだい」
「「さぁ、今度は私の見せ場よオオオオオオオオ!!」」
「!!」(私)
カマンヴェールさんは高々に叫ぶと、懐から瓶を取り出して飲み干します。すると―
「「ムキムキムキムキムキムキ―!!」」
「「フオオオオオオオオオ~!!」」
「「あああ~ん、力が漲るわアアアアアアアアアアアア~!!」」
((えええええ~!!))
細身だったカマンヴェールさんの身体は、筋肉がムキムキになり凄い膨れ上がる。
「「オラアアアアアア―!!」」
「「必殺、カマパンチ!!」」
「「「バアアアアアアアアアアア―ン!!」」」
((いや、カマパンチって―!!))
狙って、やっているのでしょうか。
それとも、単純にカマンヴェールパンチの略か…
カマンヴェールさんはー
私がカリーナさんの周りに作ったバリアを踏み台にして、そのまま巨大ゴブリンに盛大なアッパーをお見舞いした。巨大ゴブリンの身体は宙に浮くと、そのまま頭から地面に激突する。
「「「ズドオオオオオオオオオーン!!」」」
巨大ゴブリンは脳震盪を起こしたのか、ピクピクとしています。
「す、凄いパンチですね…」(唖然とする皆)
威力もさることながら
見た目も圧巻の光景に、言葉を失う私達であった。




