73話 弱っ!!
「プルン―」 「プルン―」
茂みから出て来たのは、30cmくらいのドングリの形をした水の塊であった。これは、見たまんまのスライムですね!!
「イブ、びっくりし過ぎだよ~!!」
「いや、急に飛び出して来るから…」
まぁ、しかし、見ると可愛らしい形をしていますね。
家に持ち帰って、インテリアとして部屋のどこかに飾っとくのも良いかもしれませんが…一応、コイツは農作物を食べ荒らす害獣なのよねぇ。
だから、討伐をしますか。
私は、魔法陣から剣を取り出して、目の前の水玉に剣を構えます。
―イブVSスライム開始(カーン!!)―
「よし、ゼニィー!!」
「私に指示を―!!」
私は、ゼニィーに指示を仰ぎます。
「いや、ボクが指示を出すの!?」
ゼニィーは、普通に困っていた。
「じゃあ、普通に踏み潰せば…!!」
「あっ、剣は使わないんですね…」
「…」(私)
(ソロソロソロソロソロ…)
私は、ゆっくりとスライムに近付いて、スライムを真下に見下ろします。
そして―
「「ウリャアアアア―!!」」
私は足を大きくあげて、力いっぱいスライムを踏み潰そうとしましたが―
「グニュウウウウウ…」
「ボヨヨオオオオオオ~ン!!」
「「「ギャアアアア―!!」」」
「「「ドシイイイイイイイイーン!!」」」
「「えっ、イブ~!!」」
―私の踏み潰そうとした足は、スライムの弾力に押し返されて、そのまま後ろに盛大に転ぶ。そして、後頭部を思い切り、強打していました。
バリアが無かったら、ヤバかった。
スライムは踏まれた反動で、また茂みの中に飛ばされっていった。
(痛ててててててて…)
(私、弱っ!!)
私は道に仰向けになりながら、そう思う。
「う~ん…!?」
「これは、おかしいね~!!」
ゼニィーは、そんな私を見ながら不思議そうに言う。
「ゼニィー!?」
「それは、どうゆう事なの…!?」
「うん、だって―」
ゼニィー曰く…
この世界の常識として、魔獣を倒すと、その魔獣の魔力や生命力を少し貰えて、自身の魔法や身体能力が強化されるみたいです。
「カコシを倒して、シックススターになったから、普通ならばかなり強くなっているはずなんだけどね。例えば…さっきのスライムの踏み潰した時も、衝撃で辺り一帯が吹き飛んで、クレーターが出来ると思ったんだけどね~!!」
「「マジで、そこまで!!」」
「「いや、スライム相手にオーバーキル過ぎないか!!」」
「一体、どうしてだろうね~!!」
「そ、そうなのね…」
因みに、その今まで貰った魔力や生命力は、経験値としてギルドカードで確認が出来るらしいです。なので、私はギルドカードを見てみる事に。
『☆×6(シックススター) 0EXP 』
「…」(私とゼニィー)
ん~、0EXPですか。そういえば…最初、この世界に来た時は30万EXP近くあった様な気がしましたけど。
それは、つまり…
「魔力の強さが、初期状態に戻ったんだね!!」
「魔力の強さでいうと…今のイブは、赤ん坊から幼児レベルだね~!!」
「「マジですかー!!」」
スライムに引き分けるのも、納得の強さでした。
いや、バリアが無かったら…後頭部を強打した私は、命が危なかったでしょう。それを考慮したら、スライムに負けたも同然でした(泣)
「いや、でも何で…!?」
―と、私は思ったがすぐに直感で感じた。
これは、果ての魔法を使った反動であると。
もしかしたら…
これから、どんなに経験値を沢山積んで強くなろうとも、果ての魔法を1回使っただけで、それらの全てが水の泡になってしまう感じでしょうか。
果てしなく強い魔法が使える代わりに、普段は果てしなく弱いらしい。
「極端すぎるわね、この魔法…」
強い事に、喜ぶべきなのか…
弱い事に、落胆すべきなのか…
私の中には、それらの思いが混在していました。
とりあえず、今の私は―
スライムに負けた事に、落胆していました。
「カアカアカアカアカア―」
―遠い空で、カラスが鳴いているのが聞こえる。
オレンジ色の夕陽が、私の背中に突き刺さる。
(ああ、今日もまた陽が暮れてしまう)
私は、草原の彼方にユラユラと揺れる夕陽を只々見つめていた。
「まぁ、これからでもさぁ」
「魔獣を倒していけば、それなりに強くなれるよ~!!」
夕陽の中、ゼニィーは言う。
「そうね…」
「まぁ、果ての魔法を使わなければの話しだけどね~!!」
「そ、そうね…」
「でも、シックススターなのに0EXPって…不思議な現象だね!!」
「シックススターになる為には、本当ならば途方もない経験値が必要だからね~!!」
「ふ~ん…」
とりあえず、反動はこれで終わりだと良いですけどね。
まだまだ、他に何かあったら嫌ですけどね…
流石に、これ以上は無いでしょう。
「ゼニィー…」
「今日は疲れたから、ここまでにしましょう」
「ほーい!!」
自由なタイミングで、休めるのも旅の醍醐味ですね。
では、また明日…




