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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第七章 電脳のティータ
73/226

電脳のティータ6

改稿済

 カタカタカタ…打ち込んでいく文字も分からないのに、それが正しいと理解だけは出来た。


 私…どうして…。


 座り込むティータの前に飛んで来た目玉がポンチョの端を掴むが無視をする。


「これで…終わり」

 


 シムテム…正常

 シンクロ…終了


 右端の大きな升目をタン…と押すと、暴れまわっていた目玉が一斉に動きを止めて、ティータの元に集まってきた。


「お…わっ!」


 羽目玉全部がティータの足元に降り立ち、瓦礫から抜け出たハイムがファナと一緒に来てくれ身構えたが、


「大丈夫、無害」


とティータは小さくため息を漏らす。


「ノートパソコン…ノーパソかあ。ティータ、お前…これで制御した…のか?」


「マスターの血で覚醒して生まれたてで、混乱していたのよ。システム同期して止めてみたわノーパソ…?この箱の名前…そう、あなた、ノーパソと言うの…」


「いや、あの、ノーパソってのは、ノートパソコンの略で…」


 ファナが何か言いたそうだったが、


「ノーパソ、よろしくね。私…ティータ」


と、ジューゴを無視してノーパソに挨拶をする。


 ノーパソは、上の光る板に


『了解、ティータ』


と自動的に文字を入れてくれ、


『私たちのマスターは、血をくれた者』


と付け加えた。


 私たちのマスター…


 ティータのパートナーであるノーパソを『生きた鉄』として起こしたのは、生きた死体でありファナの魂である重吾だ。


 座り込んでいたティータは大きな瞳で、ファナを見上げた。


ファナは大人しくなった羽目玉を手のひらに乗せている。


「王様…大丈夫か?」


「いやあティータ。まさか、こいつが携帯電話の成れの果てとは…」


「ケータイデンワ?なんだよ、それ」


「辺境の便利通信アイテ…ティータ、どうした?」


「私…私…リムとして…マスターと呼びたい…」


 マスターと唇に乗せると、胸の痣が光り出し、ノーパソの痣まで輝く。


「ティータ…リムが!」


 ティータのリムの輝きを、驚きながら喜んでくれるファナのことが嬉しかった。


「マスター、唇を…」


 ポンチョのリボンを外し開いた胸のリムの光を見せ、ファナの中にいる重吾のキスを待っていると、サラサラ金髪の頭をばりばり掻いたファナがそっとティータの肌に唇を寄せる。


 温かい唇が触れた途端、全身が疼くような感覚で満たされ、ティータは身体が熱くなり、小さな甘いため息を噛み殺した。


これで…私もファナ様と一緒…ファナ様と一緒に生きて、一緒に死ぬことができる…ファナ様を一人にしないもの。


「この子にも…」


「え、ノーパソにもか?」


 ティータが差し出すと、


「ティータを頼むよ」


とリムの刻印に唇を押し付けてくれ、ティータは安堵する。


「ファナ様、この子たちはなんですか?」


 羽を閉じてじっとしている目玉は、まるで黒い桃のようなつるりとした丸い形で、大きさまで良く似ていた。


「あー…確か、王様、尻って呼んでたよな」


 目を逸らしていたハイムが呟くと、ティータも思い出して頷く。


「尻…確かに、尻の形してる…さすが辺境マスター、名前まで辺境式なのね…」


「や、違うって!発音が違う!人間のケツ、尻のことじゃなくて、確かSpeech Interpretation and Recognition Interfaceの略で、ノルウェー語で「勝利へと導く美しい女性」という意味を持つ女性の名前にもなって…って、お前ら、聞いてないし!」

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