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辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第七章 電脳のティータ
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電脳のティータ5

改稿済

 目の前に黒い桃のような丸い物に蝙蝠の羽を取って付けた物体が飛び出し、大きなひとつ目玉をくるりとティータに向けた。


「や…ファナ様」


「ちっ…囲まれた。ハイムは…!」


 ハイムは少し離れた所にいたが、すでにかなりの数に囲まれており、ティータはファナの耳元に叫んだ。


「あのヒトの所に行って!私は大丈夫!」


「しかし…」


「早く!あのヒト、動けないわ!」


 逃げる際に足元の瓦礫に足首を挟んだらしいハイムが、攻撃されている。


「…わかった。ハイム!姿勢を低くしていろ!ティータ動くな」


 実際、簡単にハイムが全く動ける状況ではなく、ティータは辺境の遺物の上にしゃがみこみ、一瞬消えたように視界からいなくなるファナが、小さく一回転したかと思うと、下のアギト川のほとりへ走るのを見た。


 一つ目玉も混乱していてファナを追うより、ティータの前で蛇行するようにはためいている。


「この子…混乱してる……どうして…私…わかるのかしら?」


 重吾が血が飛び散った辺境の遺物の奥で、何か耳鳴りのような音が聞こえて、ティータは鼓動が上がるのを感じた。


「なに…これ…」


 ドッ…ドッ…ドッ…と、胸が痛むくらい激しく鼓動を打ち、ティータはよくわからない辺境の瓦礫を掘り起こし散らばす。


 今まで感じたことのない、強烈な高揚。


 全身を血が巡るのがわかるくらい、手足の指先の末端が痛いくらい…導かれる。


「なに…これ…は」


 掘り出したそれは、赤い平たい箱のようなもので、ジューゴの血が滴り輝いていて、その滑らかな表面には、ティータの胸のリムと同じような刻印が輝いていた。


「私…」


 引き寄せられるようにそのジューゴの両手を合わせたような大きさの四角い箱を手にしたティータは、心臓がドクン…と跳ね上がるのを感じる。


 そっと赤い二つ折りの箱の表面に輝く刻印を触れると、


「あっ…」


ティータの胸のリムが呼応するように真っ赤に輝き、ティータは息の止まるような衝撃を受けた。


 それは…一気に流れ込んで来てティータを満たし、その強烈な貫きは悦楽のようで一瞬意識が飛び、目玉がまた増え、ティータの目の前で羽をばたつかせるのに気づくのが遅れて混乱する。 


「あ…やっ…」


 しゃがみこんだまま箱を抱きかかえ、さらに身体を小さくして丸い物体の攻撃的な行動から逃げた。 


 羽で背中を打たれるかと思っていたら、また混乱したような迷走し、複雑に飛んでは低空飛行して飛び込んできて、ティータは身体をかばって伏せる。



「殺してはだめ!ファナ様」


 ファナに叫ぶと、ティータは赤い二つ折りの箱を開いた。


 右端に触れるとチクリと人差し指が痛み、


『認証』


と、上側の薄い箱に文字が出て、ティータは羅列する文字に目を走らせた。



 システム…承認


 ウィルス…確認


 デリート…開始



 ティータは小さな升目の板を打ち続ける。

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