電脳のティータ4
改稿済
「王様、ここだ。イア川とアギト川の源流の場所」
死体の重吾とランクルを待たせてぐるりと歩くが、不思議なことに真上から吹いて来る風が、冷たく気持ちいい。
「ぐるりと歩いて30分くらいか…二キロメートルそこそこの湖だな…」
源流から流れていく人一人分の幅の川には、岸に溢れている物がながれこんでいて、ファナがトンファを左手にし、
「トンファ、伸びろ」
と声をかけた。
トンファの赤茶色の棒がするすると伸びて、水の中に入る。
「まあまあ、深いな…川に網のように根を張ってみるか。生きた格子をつくって防ぐしかないな」
と話しながら、ファナがイア川の方に向かって軽快に走り込み、イア川につながる源流の近くの木々に声をかけたファナが、手を広げゆっくりと手の指を川にそっと入れた。
光が湖を照らし、木の根がはびこっていく。
「よし…。アギト川の方を…ティータ?」
ティータは首を横に振った。
「私には…何もないわ」
「ティータ?」
ティータは泣きそうになりながら、ファナのポンチョを掴みそして告げた。
「私、何も感じないのよ。火土風水の全て…リム失格ね…」
「ティータ…?」
リムなのに、自然に近い妖精のはずなのに、何も出来ない。
ティータは踵を返し、アギト川の源流に溜まっている辺境の瓦礫の山へ逃げ出した。
嫌われる…呆れられる…。
ティータがよじ登った赤い丸のついた鉄が折れ、
「あっ…」
ティータの身体が宙を浮き、ポンチョが翻る。
「ティータ!」
ファナが走り滑り込み、ティータの身体を掬い上げたが、二人の体重を支えきれず赤い丸のついた鉄の羽が崩れ去り、ファナに抱き止められたティータは、ファナのポンチョのポケットから血が溢れるのを見た。
「け…怪我を?ファナ様!」
「あー、重吾の血袋が破れた…」
ランクルたち用に兎の腸に血を入れた袋が破れてしまったのだ。
血が広範囲に飛び散りったが、ファナが逃げて息を切らしたティータが落ち着くまで抱き締めて、
「そっか…ごめんな」
とファナが呟いた。
「謝ること…ないわ」
ティータはその小さな温かさを温もりを甘受してはならないと抗い…諦め…身体の力を抜いた。
「私…怖かったの…」
不完全なリムであることを、優しい人々に知られてしまうことが。
「だったら俺のお嫁さんに…」
「ハイム、黙ってろ!」
ファナが笑いながらティータの手を捕まえて、一緒に足場が悪い中で立ち上がり瓦礫の下にいるハイムの腕に降ろしてくれた。
ハイムは少し離れたところにいて、ティータはファナの手を繋ぎながらふうっと息を吐く。
「私は南端の村で生まれたリムなのよ。私のいた領地では生まれたリムを上にも上げず育てていたわ。だってリムがいるだけでその地は潤うのですものね。私は祀られ崇められ…でも加護のない私は三歳で楽園に売られたの。私って、家畜にも劣るのよ」
話してしまえば、ただの愚痴…無能のリムの愚痴に過ぎないのに、ファナは真摯に受け止めて、
「うーんと…辺境ではさ、検索かけると一発でわかったんだけどなあ。携帯電話でもさ、『へい!Siri』なんて言うと、返事をしてくれ…」
「ゴ用件ナンデショウ?」
瓦礫の中から一斉に飛び出した、物体にファナとティータは固まった。




