表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の死体は今日もダルい  作者: 沖田。
第七章 電脳のティータ
70/226

電脳のティータ3

改稿済

 風穴(かざあな)への道は、柔かなうねりを持つなだらかな道で、夏なのに涼しくてティータは開いた窓から森を見る。


 死体の重吾とファナが前列に乗るランクルから見ていると、兎が飛び上がり雉がとことこと逃げていくのが滑稽で、ティータは口許で笑ってしまった。


「ティータ、森が綺麗だなあ」


 後部座席でティータと一緒に座っているハイムが、嬉しそうに話してくる。


「そうかしら。私には普通にしか見えないわ。それより、名前で呼ぶのはやめてくれない?」


 ハイムに素っ気なくするとと、


「あ…すまない……」


と、ハイムが不謹慎にもはしゃいでいるとたしなめられたと勘違いしたのか、しょぼんと身体を小さくする。


 ハイムには話したほうがいいのかしら、私、嫌われることには慣れているわ。


 それでもティータは迷っていた。


「お…これか?」


 森は深くなり、木々が織り成すような鬱蒼とした壁に突き当たり、ランクルが停止する。


「王様、ここはアギト川の源流のはずなんだが、俺が前に見たところ、立木に蔓草が巻き付いてとてもじゃないが入れない」


 高い緑の壁は棘のある蔦や蔓草で容易には上れそうもなかった。


「大丈夫、ファナ様がいるから」


 ティータはランクルの中で、はっきりと告げる。


「ファナ様は風穴の緑の扉を開くことができるわ。ここはアーバー グランドの中でも時空が違うの」


 ティータの頭の中には楽園全ての口伝えが入っており、何も知らないファナの支えになる知識があった。


「ファナ様、外へ」


「お、おう」


 ティータはファナの手を掴むと、ランクルの前に立ち耳打ちをする。


「できそう?」


 ファナが頷き仕方なさそうにポンチョを頭から脱ぎ始め、ハイムを慌てさせたが、余計なものをつけていてはモルトの力は発揮できない。


「これで…いいのか?」


 不安そうなファナが両手を伸ばして緑の壁に触れ唇をつけ、


「私はモルト、お前の主、お前の中心」


そして唇を離し、胸のリムを輝かせながら、 


「火土風水光闇の加護を持ち、時空を司るモルトが命じる。風穴への道を示めせ!」


と言い放った。


 モルトの時空を歪ませる力に反応して、緑の壁がうねり歪み、丸い穴が開いていく。


 ファナがほ…っと息を吐き、ティータに振り向いた。


「すぐに閉じるわ。ファナ様、ランクルに」 


「わかった」


 ファナと二人ランクルによじ登り、空間が歪んでいるのかもやもやとした蜃気楼のような空間に向かうようファナに言うと、ランクル一気に加速してその穴を駆け抜ける。


「わっ…」


「なんだこれは…」


 ファナとハイムの異口の口走りの中で、ティータは目を見張った。


 かなり広い所に辺境の物体不明の『遺物』が散乱しており、低い草が生い茂る真ん中には美しい湖が出現し不思議な光景が広がっている。


 ランクルやトンファ、ガンクルは元々死体の重吾が持っていたから、ファナになったにしてもなついていたのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ