■最終話「風は残る」
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## ■最終話「風は残る」
王宮・早朝。
まだ人の少ない時間。
風太は一人、屋上に立っていた。
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風が吹く。
静かな風。
かつてのような“情報”を運ぶ風ではない。
ただの風。
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「……平和だな」
小さく呟く。
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足音。
蒼真が来る。
「こんなとこにいたか」
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「いつもの場所だ」
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少し遅れて、セリスも来る。
「探したよ」
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三人、並ぶ。
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しばらく、何も言わない。
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遠くで蒸気が上がる。
街が動き始める音。
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## ■現実
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・戦争は減った
・教育は広がった
・蒸気は世界を巡った
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だが――
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・完全な平和ではない
・思想は混ざり合う
・進歩は遅い
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蒼真が言う。
「……結局、世界は変わりきらなかったな」
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風太は首を振る。
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「十分だ」
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「壊れなくなった」
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セリスが小さく笑う。
「それって、すごいことだよね」
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## ■決断
風太が言う。
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「そろそろだ」
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二人が見る。
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「何がだ」
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「俺の役目の終わり」
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沈黙。
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蒼真が低く言う。
「……まだやれるだろ」
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風太は静かに笑う。
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「やれることと、やるべきことは違う」
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セリスの手が、少し震える。
「……いなくなるの?」
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「消えるわけじゃない」
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「前に出ないだけだ」
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## ■継承
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王位。
権限。
判断。
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すべてを“制度”へ。
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五議会。
教育。
軍。
思想。
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「人に頼らない形にした」
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蒼真が笑う。
「最初からそれ狙いかよ」
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「当然だ」
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## ■武士のように
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風太は言う。
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「役目が終わったら、退く」
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「それが一番難しい」
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蒼真がため息をつく。
「……かっこつけやがって」
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セリスは涙をこらえながら笑う。
「でも……風太らしい」
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## ■その後
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風太は王宮を離れる。
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大きな儀式はない。
宣言もない。
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ただ――
“いなくなる”
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## ■数年後
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世界は続く。
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蒸気は回る。
教育は広がる。
戦争は――小さく続く。
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だが。
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崩壊は起きない。
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## ■ラストシーン
丘の上。
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一人の男が、空を見ている。
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小さな飛行機。
簡素な機体。
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風に乗る。
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誰にも知られず。
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ただ、空を飛ぶ。
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下では、子供たちが走る。
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「見て! 飛んでる!」
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笑い声。
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男は少しだけ笑う。
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(……これでいい)
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風が吹く。
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静かに。
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確かに。
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世界は変わった。
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そして――
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**風は、残った。**
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