表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

第16話「祈りと実利」


---


## ■第16話「祈りと実利」


異変は、静かに始まった。


王都の大聖堂。


重厚な扉の内側で、司祭たちが集まっていた。


「……広がりすぎている」


一人が低く言う。


机の上には、あの本――


“実用瞑想”


「信仰が揺らいでいる」


別の司祭が続ける。


「祈りの数が減った」


「寄進も減少している」


沈黙。


やがて、最年長の司祭が口を開く。


「……対抗する」


---


数日後。


街のあちこちで、新たな説教が始まった。


「感謝は神へ捧げるものだ!」


「善行は救済のために行うべきだ!」


「利益のための善など、偽りである!」


声は強い。


人々は足を止める。


---


ギルド。


蒼真が眉をひそめる。


「……来たな」


セリスも不安そうに言う。


「ちょっと怖い……」


風太は静かに言った。


「当然だ」


---


報告が入る。


・教会主導の無料施し

・信仰強化の集会

・“実用思想”への批判


蒼真が腕を組む。


「真っ向から来たな」


「正面衝突だ」


---


セリスが小さく言う。


「……どうするの?」


風太は少し考え――


「戦わない」


「は?」


---


「否定しない」


蒼真が呆れる。


「それで勝てるのか?」


風太は答える。


「勝つ必要はない」


「共存する」


---


数日後。


風太は、大聖堂を訪れた。


周囲がざわつく。


「王だ……」

「何しに来た……」


中央。


司祭たちが並ぶ。


「……何の用だ」


冷たい声。


風太は静かに言った。


「話しに来た」


---


沈黙の中。


風太は本を一冊、置いた。


「これは“神を否定するもの”じゃない」


司祭の一人が鋭く言う。


「だが、神を必要としない」


「違う」


風太は首を振る。


「人が“安定する方法”だ」


---


一人の若い司祭が言う。


「では問う」


「善行を“得”として行うのは、正しいのか」


風太は即答した。


「正しい」


ざわめき。


「なぜだ」


---


風太は静かに言う。


「結果が同じだからだ」


沈黙。


「誰かを助ける」


「それが信仰でも、利益でも――」


「救われる側には関係ない」


---


セリスが小さく呟く。


「……確かに」


---


老司祭が目を細める。


「では、神の役割は何だ」


風太は少しだけ考え――


答えた。


「意味を与えることだ」


空気が変わる。


---


「人は、理由がないと続かない」


「信仰は“意味”を与える」


「俺の本は“方法”を与える」


---


沈黙。


長い、重い沈黙。


---


やがて。


老司祭がゆっくり言う。


「……共存、か」


風太は頷く。


「競争してもいい」


「ただし――壊すな」


---


数週間後。


奇妙な変化が起きる。


---


教会側:


・感謝の祈りを強化

・日常での善行を推奨

・信仰と生活の結びつきを強化


実用思想側:


・継続

・成果重視

・個人の安定


---


蒼真が言う。


「……融合してないか?」


セリスが笑う。


「いいとこ取りだね」


---


街の人々。


「祈ってから感謝100回するか」

「善行は神のためでも、自分のためでもいい」


柔らかい変化。


対立ではなく――


“混ざる”。


---


だが。


全員が納得したわけではない。


---


地下。


過激派の司祭が呟く。


「……生ぬるい」


「神を“手段”にするなど、許されない」


暗い目。


「真の信仰を取り戻す」


---


風太は空を見上げる。


(まだ終わってないな)


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ