軍事チート災害
☆王都異世界アカデミー
私はアリサ、お父様は、転移勇者だったらしい。
記憶にあまりない。
昨日の決闘の後、回収した銃5丁をアカデミーに届け、その後、
まず最初にしたのは、銃の整備だ。
戦いの前後、かの地の兵士は、銃や靴、整備に余念がないと言われる。
銃の整備が終わったら、必ず機能点検をする。
64式7.62ミリ小銃の切替え軸部は、安全の「ア」と単発の「タ」、連射の「レ」しかない。
機能点検は、音でする。
安全の「ア」
引き金が引けない。
合格、
単発の「タ」
引き金を引くと、
カチャと音がする。
引き金を引いたままにして、
連続で薬莢の排出を手作業でやるが、
撃鉄が落ちる音はしない。
合格
連発の「レ」
引き金を引いて、そのまま、引いた状態にしてから、
連続で薬莢の排出を手作業でやると、
カチャカチャカチャ!
撃鉄が落ちる音が連続でする。
合格。
銃によっては、部品の組み立て間違えで、撃てないこともあるから、注意が必要だ。
さて、銃整備が終わったから、
師匠様の墓参りに行きますか。
☆
私の師匠は、コメタロウ・ヨシダ。
かの世界の騎士団員とも、傭兵団所属だったとも言われている。
記録だと、武器召還のスキルがない。
知識だけで、暴虐を働く、軍事チート転移者を倒して来たと云う。
対軍事チートアニュアルを作成した者でもある。
私は、コメタロウ氏の最後の弟子だ。
享年72歳、ご老体だった。
手を合わせ。
異界の呪文を唱える。
「ナンマンダー、ナンマンダー、ナンマンダー」
どうか。心安からに、魂だけはかの地に戻られますように、
常々、師匠は、私に言っていた。
私には、弱点があると、
『軍隊行動は、基本、1人はあり得ないのじゃ。最低でも組(2~3人)なのじゃ!友達にならなくてもいいのじゃ。信頼出来るバディを作るのじゃ!それが出来るまで、実戦には出せないのじゃ。軍隊で勉強じゃ!』
と魔王軍との前線、司令部付きの伝令に配置された。
それは、自覚している。冒険者になった後、必要な時は、金でバディを雇い対処してきたが・・・
少女の黙祷が終わると、
声を掛けてくる者がいた。
アリサの後ろ盾、前の辺境伯の孫、王太子殿下の婚約者、ルイーサである。
「アリサ様、至急、王宮においで下さい!軍事チート災害発生ですわ」
「うん・・」
☆☆☆ノース王国王宮
王宮の会議室には、ツギル王国の王、王妃、愛妾、子供たちと騎士団長らがいた。子供たちは青年から、幼児まで様々だ。
この国の王太子が、対応をしていた。
「この方が、勇者コメタロウ・ヨシダの最後の弟子にして、後継者です」
はんと、ツギル王は、鼻を鳴らす。
「この小娘が、対軍事チートの切り札?鏖のアリサ?」
「まだ、子供じゃないか?こんなので、大丈夫か?」
・・・話を聞くと、この国に亡命政権を作っているつもりだそうだ。
端的に言うと、逃げて来た。
「では、迎撃は?」
「・・・娘に任せて来た。君は、一介の冒険者だ!」
・・・・
「申し訳ない。アリサ殿・・・話を聞くと、深刻だ」
まず。召喚のタイプが無制限だ。
相手は、貴族学園に行く年頃だ。
そして、最悪なことは、異世界の武器を配っていることだ。
「・・・大丈夫でしょう。まず。無制限に召喚できても、間違いなく、ヘリ、戦闘機は運転できません。良くて、戦車まで、兵器は、ロケット砲ぐらいです。誘導弾は使えないでしょう」
「でも、銃だけでも、かなりの脅威だろう?」
「ええ、でも、その脅威は、反乱軍にとっても、脅威になります。だって、武器の保管、管理は、かの国の裏組織でも頭を悩ましているそうですからね」
「詳しく聞こうか・・」
☆☆☆ツギル王国、王都近郊
日本人、ノブナガと名乗る。未成年の男子は、銃を配り。反乱軍を主導し。王都近郊まで、進軍をしたが、進軍は止まっている。
バン!バン!バン!
ダン!ダン!
「ヒャッホ―――」
89式5.56ミリ小銃で武装した一団が、近隣の村を襲っていた。
この国の、失政を増税でごまかす政治に、民は、蜂起を決意したが、
反乱軍兵士が、まるで、フランス革命時のように、暴徒とかし。富裕層や市民を襲うようになった。
通常なら、憲兵に取り締まるが、この組織は、そんなものはない。
「やめろ!やめろ。僕は、そんなつもりで、銃を配ったんじゃないよ!」
「ノブナガ様、こいつ、増税の手先だったんさで」
・・・畜生、一体どうしたことだよ。皆、略奪ばかりしている。
「ミランダ、いい方法はない?」
・・・ミランダ、最初に、僕の話を聞いてくれた貴族の令嬢だ。
「ノブナガ様、さすがに、じゅうを配りすぎました。弾を、召喚するのは、控えた方が宜しいかと」
「・・しかし、奴ら、召喚しないと、僕を監禁する勢いだよ」
「「「・・・・・・」」
その時、冒険者パーティが訪れた。
「あの、私たち、ノブナガ様の陣営に加わりに来ました。私は、貴族、出身です。多少、政治のことはわかります。
そして、こちらのアリーシャは、税金全般が出来ます。徴税人の息子のオルトに、魔導士と猟師もおります」
「君は、黒髪、黒目?君も仲間、日本から来たの?」
「いいえ。私は、サリアです。少数民族の血を引いています。異世界人ではありませんわ」
変装したアリサ一行が、軍事チート司令部に、士官を申し込みに来た。
いわゆる潜入である。