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希望

『それにしても人の欲ってのは限りがねえなあ。食べ物もあるってのに、たかが石ころのために殺し合うってんだから怖えぜ』


 ランドールが呆れたように言う。


『人ってのは、愚かなものなんだよ』


『知ってるさ。俺は今まで馬鹿な貴族たちの間を回ってたんだからな』


『それもそうか』


 ランドールは昔酷い目にあったためか貴族が嫌いなようだ。


「ありがとうございます。原因については分かりました。戦況も伺ってよいですか?」


 これも大事だ。今どういう状況か分からずに援護などできはずもない。


 コールマンは少し悩む素振りを見せるも最後は地図を出しながら現状を説明してくれるようだ。


「あまり教えたら怒られそうなんですけど。少し、貴方を信じてみたくなりました。今回の主戦場は勿論ミスリルの出たニコル鉱山です。お互いけん制し合っていて小競り合いが続いています。敵である隣のマティアス領からはマティアス軍三千が布陣しています。こちらは帝国騎士団五百を合わせ三千。こちらが守勢というのもあり最近までは優勢でした。が、ロックウッド領のロックウッド軍三千の参入により均衡が崩れました。奴等は個の質でもおそらく我らと同等の強さを持っています」


 ロックウッド軍は確かに精鋭といえる強さを持っているだろう。そして人数も三千対六千。倍の差である。かなり厳しいのがこれだけで分かる。いくら守る側といえどもだ。


「これほど厳しいのに、ミスリルは渡さないんですね。確かにミスリルは大事ですが、人の命には代えられないと思いますが」


「それはできません。こういうものは一度要求を呑むと際限なく要求してくるものですし。それに……実はラーゼ領はあまり裕福ではないんです。領民たちも皆質素な暮らしを送っていて。うちにも学校があるが、現状では裕福な一部の子供が通えるだけ。だが、今回のミスリル鋼の財で領主様がお金の無い子達にも学校に通えるようにするとおっしゃっていました。 このミスリル鋼は我々の希望なんです。決して奪わせるわけにはいきません!」


 コールマンは静かに、だが強い口調で断定する。その言葉からは決して譲らないという強い意志が感じられた。


 優しそうな外見の中には熱い心が眠っていたらしい。


「軽率でした。すみません」


 俺は素直に謝る。 


「別に構いませんよ。外からでは裕福に見えますからね、ラーゼ領は。あれはハリボテなんです。綺麗な広場から少し出れば、スラムが見える。そんなでも私の故郷なんです」


 中の人じゃないと分からないこともあるもんだな。


「ミスリル鋼の取れる発掘場に繋がる大きな三つの道があります。この三つの道が今回の主な戦場になるでしょう。この道はどこも最後は合流して一つの道になります。その合流地点の先を我々は守護しています。ここなら一つの道で待ち受けるだけで良いですから」


 なるほど。確かに分岐点付近で争うより安全だろう。


「敵がどの道から来るかは不明ですか?」


「殆ど中央ですね。中央通路が最も広く陣を敷きやすいので」


「分かりました。ありがとうございます。後で見てきます」

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