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戦の理由

 団長である男が、鋭い目線で俺達を品定めするように見た後、口を開く。


「俺はラーゼ軍隊長のドルトンだ。で、お前達は何しにここまで来たんだ?」


「メルカッツ及びラーゼ救援のために軍師として援軍に馳せ参じました」


 それを聞いたドルトンは疑わしそうな者を見るような目を向ける。


「……そうか。俺はお前のことを知らないし、信用もしていない。そんなお前の命令で、部下達に命をかけさせるわけにはいかねえ、分かるか?」


「仰る通りです。なら、お話だけでも。私のスキルはきっとこの(いくさ)でも役に立ちます」


 それを聞いたドルトンが眉を顰める。


「スキル? 俺は今まで何度もわたしにはこんな凄いスキルがあります、ってバカ共の話を聞いてきたぜ。スキルは所詮道具。大事なのは使う人だ。実績もねぇお前の命令なんか誰も聞きはしねぇよ」


 頭が痛い話だ。正直俺は新人で実績が無いのは百も承知。前回はヨルバ様の推薦が効いただけという事実を突きつけられる。


「実績というには弱いかもしれませんが、ガルーラン砦の軍師を務め、砦に襲い来るスタンピードを収めました」


 ドルトンはそれを聞いて鼻で笑う。


「ガルーラン砦? お前はあの小さいゴミ溜め出身か! あんな所で少し魔物退治に成功したからって、数千の人間が殺し合う戦争で役に立てると思っているのか? 大人しくゴミ溜めに帰りな」


「あそこはもうゴミ溜めなんかじゃない! 今は、優秀な兵士しかいない立派な砦だ!」


 俺は感情的に言い返す。だが、その言葉も彼には全く響かなかった。


「ああ、そうかい。ならとっとと帰ればいい。お前らは別に要らないからな」


「私は不退転の覚悟でここに参りました。帰るつもりはありません」


「……一つ聞こう。お前はなぜ戦っている?」


 ドルトンが俺に尋ねる。


「……民のためです」


 俺はその言葉を聞き、悩んだ末にこう答えた。自分でも嘘っぽい言葉のように聞こえる。それを聞いたドルトンはがっかりしたような顔をした。


「どこか薄っぺらいな。皆、何かを成したくて、理由があってここに居る。その芯の部分が分からない者は信じられん。好きにしたらいいが、こちらの軍議に口を挟むなよ。三人で頑張りな」


 俺は反論できなかった。俺が戦う理由とはなんだろうか。ただ、イヴが心配でここまでやってきた。

 取り付く島もないとはこのことだ。このままではまずい。なんとかしようと考えていると、他の将校が天幕から現れる。


「隊長、軍議のお時間です」


「今行く。じゃあな、(ばばあ)の犬共」


「必ず、私の有用性を戦場で証明します。そして再びあなたの元を訪れます。全ては勝利のために。一人情報を持つ者に話を聞かせていただきたい。それくらい許されるはずです」


「……分かった。一人やろう」


 嫌そうな顔をするも、これくらいは許されるようだ。


「援軍でここまで嫌われるなんて、ヨルバ様は何をされたのだ」


 シャロンは呆れたように言う。


「本当にな。けどこのままじゃまずい。助力が必要なのに、信頼関係がないどころかマイナスだ」


「本当に、十日後までにラーゼ軍の信頼を得られるのか? このままじゃローデル帝国が負けるぞ」


「情報を集め、考えよう。圧倒的に情報が足りない」


シャロンと話していると、二十代の若い騎士がやってきた。だが、服装を見るに末端の騎士ではないようだ。


「こんにちは。コールマンと言います。いやあ、隊長がすみません。あの人ヨルバ様が嫌いでねえ。情報でしたっけ。答えられることなら答えますよ」


 コールマンは柔らかな笑顔で応える。ドルトンよりよっぽど常識人だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、別に帰ってもいいと思うんだ 推薦状を破り捨てたってのはそういう意思表示だからね 後で、あの時の証明をせよって言われた時に証拠を提示できないんだから
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