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届け

 グランクロコダイルは彼に興味を失ったのか、新たな獲物を探し始める。その目線の先には避難している子供達が居た。その子供達を先導しているのはイヴである。


「イヴ、見られてるぞ!」


 俺の声を聞いたイヴの顔色が変わる。


「皆、逃げて!」


 イヴは叫ぶと、子供達をグランクロコダイルと逆方向に走らせる。


「怖いよおおおお!」


 子供達はパニックになりながらも、必死で逃げる。だが、全員が動けるわけでは無かった。一人の子供が恐怖で固まってしまった。


 グランクロコダイルはそれを丁度いい餌を見定めたのか、六本足を巧みに動かし距離を詰める。


「この子には触れさせない! 風弾(ヴィントパトローネ) !」


 イヴはレイピアを抜いて構えると、レイピアに魔力を纏わせる。そして突きを放った。その先端から飛び出す弾丸がグランクロコダイルの右目に撃ち込まれる。


「グァア」


 グランクロコダイルも目は弱かったのか、小さく悲鳴を上げる。だが、その勢いは止まなかった。むしろ怒りに満ちた形相で子供に襲い掛かった。


「危ないっ!」


 イヴが全力で子供の元に跳び、グランクロコダイルの突進から子供を守る。だが、体の一部分がイヴの体にかすり、イヴが大きく吹き飛ぶ。


「イヴ!」


 俺は大声を上げる。


 俺はどうするべきなんだ……。イブは左腕を押さえて苦悶の表情で蹲っている。おそらく折れたのだろう。

 俺は足元に転がっている瓦礫を手に持つと思い切り投げつける。全く効いた様子は無いが、注意をこちらに向けることには成功したようだ。


「兵士達! そこら中にまだ領民が居る! 彼等を避難させるんだ! こいつは俺達が止める! これはそのための道具だ!」


 俺は大樽を見せつけながら付近の兵士達に向けて話す。正直彼等はそんなに役に立たない。兵士達は俺達を測りかねているのか動きが鈍い。


「お前ら、このまま全滅してえのか! 手が空いてるやつは、周りの赤鰐(レッドクロコダイル)の相手をしろ!」


 ディラーの叱咤を聞き、兵士達は動き始める。彼等も死にたくない。避難誘導や、赤鰐の相手の方が安全といえた。

 グランクロコダイルはまた愚かな餌がやってきたと言わんばかりの態度で、体をシビル達に向ける。


「雑魚は俺が!」


 ディラーの部下であるコリンが、ハンマーを片手に赤鰐を相手に戦い始める。思ったよりキレのある動きだ。


「大将……ここが正念場だぜ?」


 ディラーがそう言って、小さく笑う。だが、その顔は汗でびっしょりであった。ディラーの緊張も相当な物だろう。失敗は即死に繋がる。

 その手には改良された伸鉄棒が握られていた。


「行くぞ!」


 そして、ディラーが動いた。想像以上に素早い無駄のない動きだ。俺もすぐその後ろを走る。グランクロコダイルが対応しようと動き出す瞬間、ディラーの手からグランクロコダイルの目に赤い玉が放たれる。香辛料弾だ。


「グアア!」


イヴの一撃のお陰で右目の一つ潰れていたのも大きかった。残り二つの目に綺麗に命中すると、悲鳴があがる。

 悲鳴と共に、口が開くのをディラーは見逃さなかった。伸鉄棒を口内に縦に入れる。


「伸びろ!」


 ディラーの叫び声と共に、伸鉄棒がグランクロコダイルの口を広げるように大きく伸びる。だが、長の咬合力は相当なもので、一・五メートルを超えた所で伸びが止まる。


「これ以上は無理だ! 大将!」


 ディラーは伸鉄棒を手放し、距離を取った。


「おう!」


 俺は大樽の紐を引き抜くと、大樽を口目掛けて投げる。大樽は見事な弧を描きながらもグランクロコダイルの口の中に向けて飛んでいく。


 貰った! 


 そう思った瞬間、伸鉄棒からビキッという割れた音が響く。グランクロコダイルの咬合力に耐えきれなかったのだ。


「頼む!」


 俺は思わず神に祈った。なんとか口の中に樽が入るまで持ってくれと。その願いも虚しく次の瞬間伸鉄棒が粉々に砕かれる。

 投げられた大樽は既に口の中に入る直前であり、グランクロコダイルはその大樽を思い切りかみ砕く。


 その直後凄まじい爆発が、グランクロコダイルを襲った。

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[良い点] 迫真の戦いの描写。それぞれの苦難と努力がみごとです。
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