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地獄絵図

 一番最初に門まで辿り着いたのはやはり西門の魔物達である。壁からは多くの兵士が弓を引き絞っている。


「放てええ!」


 号令と共に、大量の弓矢が先頭を走るグランクロコダイルに雨のように降り注ぐ。だが、グランクロコダイルは弓など全く意に介さず進み続ける。


「ひ、ひい……」


 兵士の一人が恐怖で声を出す。


 グランクロコダイルはまさしく鉄壁の怪物であった。全長は九メートルを超えており、全身は鋼のような鱗に覆われていた。四つの目のうち、一つが傷により閉じられており、残りの三つの目が、人を獲物として見定めていた。六本の足はどれも丸太の様に太く、踏ししだいた地面が大きく凹んでおりその重さが垣間見える。

 その目に見据えられただけで、兵士たちの動きが止まる。


「怯えるな! いくら大きくとも、城壁を破壊はできまい! 石を投げろ!」


 兵士達は石や槍、弓矢など様々な物をグランクロコダイル目掛けて投げる。だが、全く効いている気配はなかった。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 グランクロコダイルが大きく吠える。その地獄から響いているかのような遠吠えはデルクール領に居る、兵士にも領民にも恐怖を植え付ける。


「お、お前達……手が止まっているぞ。早く、こ、攻撃を」


 側防塔から指揮官が部下に叱咤するも、恐怖にかられた兵士達には届かなかった。


 グランクロコダイルは器用に大きく後退する。そして次の瞬間、グランクロコダイルはその巨体に似合わない俊敏な動きでいっきに壁に向かって走り出す。大きく体を回転させ、まるで巨大な鋼鉄のドリルの様に、壁に頭を叩き付けた。

 デルクール中に響き渡りそうな大きな破壊音とともに、壁に大穴が空いた。


「も、もうだめだ……」


 壁を守っていた兵士は戦意を失い、地面に倒れ込む。


「壁に穴が空いたぞーーーーーーー!」


 領民の悲鳴が戦場にこだまする。定年間際の老兵も一人見張りとして立っていたが、彼の目は驚愕により見開かれていた。


「や、奴は……間違いない。五十年前にここを襲ったグランクロコダイルだ! 奴は生きていて、この町に復讐にやってきたんじゃ!」


 老兵の震えた手から剣が零れ落ち、地面から澄んだ音が響いた。地獄が音を立ててやってきた。






 俺はただ伸鉄棒を改良が終わるのを今か今かと待っている。そして遂に何か建物が破壊されたような爆音が遠くから響く。


「壁が破壊されたのか……!」


 領民の悲鳴がここにまで聞こえている。やはり突破されたのか。初めは群れが壁に辿り着く前に戦う予定だったが、それでは八百を超える群れを俺達数人で相手しないといけなくなるので諦めたのだ。


「わ、私先に行ってるね!」


 領民の悲鳴を聞いて居ても立っても居られなくなったイヴが西門側に走る。


「おい、オヤジ! 間に合ってねえじゃねえか!」


 ディラーが叫ぶ。


「うるせえよい! できたぞ! もってけ」


ドワーフのオヤジさんが、出来上がった伸鉄棒を投げる。円の直径は二十センチを超えており前回見た時より大分太くなっている。だいぶ魔改造したらしい。


「行くぞ!」


 俺達は西門に向かって走り出す。頼む、皆逃げていてくれ、そう思いながら大樽を持って走る。

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