ゼガルという男
その後、イヴと合流し情報を共有する。
「こっちは特に役に立ちそうな情報は無かったわ。ごめんなさい」
「冒険者ギルドでは分からない、ってことが分かったから十分だ。他にあてもない。爆破アイテムを作っている錬金術師とやらの元へ行ってみない?」
「うん、行ってみよう!」
イヴは明るく笑う。この状態でも前を見てくれる人が横に居ることはありがたい。その優しさに報いるためにも、絶対錬金術師を説得して見せる!
と思っていた時期が俺にもありました。
「すみませーん! ゼガルさーん! この町を襲ってくる魔物を退治するために、貴方の力が必要なんです! 話を聞いてもらえませんか?」
教えて貰った場所に向かうと確かに聞いていた通り、はずれに一軒家が立っていた。小さく丸い塔のような三階建ての建物だ。屋根は赤色で煙突からは煙が常に出ていた。扉を叩き、呼びかけるも返事すら返ってこない。
「すみませーん! 話を聞いてもらえませんか?」
イヴも声を張って、呼びかけてくれたが結果は同じであった。そもそも本当に錬金術師ゼガルはこの部屋にいるのだろうか?
『ゼガルはこの家の中に居る?』
『イエス』
やっぱり居留守か。
「興味半分で来た訳じゃないんです! どうか話だけでも! お願いします!」
俺は声を張り、必死で呼びかける。結局三十分以上声をかけ続けたが返事すらなかった。
「扉を破りますか?」
切羽詰まったイヴがレイピアを片手に言う。
『扉を破って、交渉した方がいい?』
『ノー』
当たり前だが、やっぱり駄目か。
「駄目だ。今それをすると、完全に決裂してしまう」
「だけど、時間もないわ」
「そうなんだよなあ」
じっくり扉の前で粘ることもできるが時間がない。魔物は明後日には来るのだ。
諦めて他の道を探るか? だが、通じるような物が他にあるか? あったとしてもそれを二日以内に見つけることができるのか?
俺の顔が絶望に染まっていく。
「シビル、何もグランクロコダイルに効く物がこの人が作る物だけとは限らないわ。他にもきっとある」
イヴが俺を気遣って声をかけてくれる。
「ああ。その通りだ。仕方ない、他の手を考えよう」
仕方なく諦めようと踵を返すと、前方からお爺さんが歩いてきた。見たことのある顔だ。
「貴方は娘の形見を譲ってくれた商人の方じゃないか! あの時は本当にお世話になりましたじゃ」
そう言って、お爺さんは俺に頭を下げる。彼は少し前に指輪を購入してくれた人だ。
「いえいえ、商品を売っただけなのでお気になさらないでください」
「本当の価値を知っていてああしてくださったのじゃろう? お優しい方じゃ。それにしてもこんな外れになんで? それに何かあったのかな?」
絶望が顔に出ていたのか、お爺さんに心配されてしまう。
「お恥ずかしい。実は――」
お爺さんに簡単に事情を説明する。
「そんなことが! 儂に任せて下され! ゼガルのことはあいつが赤ちゃんの頃から知っておる! 話を通しましょう!」
お爺さんは自らの胸を叩く。
「あ、ありがとうございます」
お爺さんは、ゼガルの扉の前に立つと、大声で叫ぶ。
「ゼガル! 儂じゃ! ノモスじゃ! 今すぐ開けんか!」
ノモスというお爺さんが扉を叩くと、中から騒々しい物音が突如聞こえてくる。しばらくすると、扉が開き男が顔を出した。
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