大樽爆弾
「ノモス爺。なんなんだ? 僕は忙しいんだよ」
目の下に隈のある不健康そうな長身の男である。眼鏡をかけ、頭は手入れを全くしていないのか爆発していた。白衣が不健康そうな見た目に良く似合っている。
「この人は、娘の形見を儂に譲ってくれた恩人なんじゃ。手を貸してやって欲しい」
それを聞いたゼガルは少し顔を顰める。
「……分かったよ。話くらいは聞いてやるさ」
そう言って、中に案内される。中は想像通り泥棒が入った後のようにゴミが散乱しており、足の踏み場すら見つからない程だ。
「相変わらず汚い部屋じゃ」
「放っておいてくれ。そこに座って」
物だらけの椅子に、物をどかして座る。机の上も薬品だらけだ。
「さっきも色々叫んでいたが、もう一度聞かせてくれるか?」
「はい。グランクロコダイルという魔物を倒すための道具を作っていただきたいんです――」
再度説明をゼガルにする。今日既に何回話したかすら分からない。話を聞いたゼガルが口を開く。
「なるほど。確かにおかしな点は見つからない。面白いスキルだ。信憑性も高い。結論から言うと、グランクロコダイルに通用する爆発物を作ることは、おそらく可能だ」
「本当ですか!」
イヴが大声を上げる。
「ちゃんと口内に全てを送り込むことができたら、の話だがな。そうなると相当の量が必要だ。それこそこれくらいの大樽いっぱいに爆発物を詰めなければならない。それを口内に綺麗に投げ込む、というのは中々の難易度だよ」
ゼガルは近くにあった大樽を指さす。高さ一メートル以上はありそうだ。
「ですが、不可能ではありません。明後日までに作れますか?」
「……あらかじめ作ってある分も合わせたら間に合うとは思う。相当金が必要だがな。2,000,000Gは欲しい」
「2,000,000G!? 分かりました」
シビルが現在持っている金額が丁度2,000,000Gほど。殆どは去ったネオンに譲ったからだ。
「これは高価な素材を沢山使うんだ。それくらいはかかってしまうよ」
「大丈夫です、あります」
すぐに二十金貨を机の上に置く。
「おお。即金とは素晴らしいね。だが、時間的に一個しか作れない。失敗はできないぞ」
「分かりました。なんとか案を考えます」
「明後日の朝には完成させる。その後に取りに来てくれ」
「ありがとうございます! 本当に助かりました!」
俺は頭を下げる。なんとか首の皮一枚繋がったと言えるだろう。
偏屈と聞いていたが、あっさりと頼みを聞いてくれた。ノモスさんは凄い人なのかもしれない。
家から出た後、ノモスさんに礼を言う。
「ノモスさんのお陰で、ゼガルさんと話をすることができました。ありがとうございます」
「なに、少しでも恩人の役に立てたのなら良かったわい。それに、ゼガルは娘の友人でな。娘の形見を儂に譲ってくれた貴方に何かしたかったのかもしれん。偏屈じゃが、根は良い子なんじゃよ」
そう言って、ノモスさんは笑った。
「何かあったら、またいうてくれ。できる限りのことはしよう」
そう言って、ノモスさんは去っていった。
「なんとか希望が見えてきたね!」
イヴの声も弾んでいる。
「ああ。後はどうやってあの爆弾を口に入れるかだ」
「うーん。やっぱり襲ってきた瞬間に口に放り込むしかないんじゃ?」
「失敗できないからなあ。少しの間でも良いから口を開けっ放しにする道具ないかね」
正直、つっかえ棒しか思いつかない。二人で悩みつつ、町の中心街に戻る。
「巨大な棒を使って、口を開かせたままにするか」
『特注の棒を使って、口を一時的に開けたままにすることは可能?』
『イエス』
一応イエスではあるんだよなあ。簡単じゃ無さそうだけど。
「グランクロコダイルの噛む力に耐えられる棒なんてあるかしら」
「うーん。特注するしか無さそうなんだよな。だが、金がない」
だが、既に持ち金の殆どを使ってしまった。
「私も少しなら持ってるから! それでがんばろ?」
「へい、大将。面白い話をしてるじゃねえか。俺も混ぜてくれよ!」
この声は。そう思い振り向くと、そこには傭兵ディラーの姿があった。
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