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動く市場

 そして遂に二週間後、誰もが羽の値段が跳ね上がっていることに気付き始める。商人ギルドでのクラリオンバードの羽の買取価格が、25,000Gになっている。実に五倍である。

 その情報を知って、ネオンもご機嫌である。


 買取価格が公表されている掲示板を見ていると、受付嬢から声がかかる。


「少しお話がありまして。実はネオンビル商会さんが持っている商品のことなんですが」


 来たか。俺達は商品を商人ギルドに預けている。この急騰ぶりを見るに早急に商品を手に入れたいのだろう。


「はい」


「クラリオンバードの羽をこちらで買取させていただきたいんです」


「すみません、お断りさせていただきます」


 ネオンははっきりと告げる。


「我々は情報をしっかりと仕入れてから手に入れています。この程度で売る気はありません」


 なんというハッタリ! 中々堂に入った態度である。


「中々良い情報網をお持ちですね……。気が変わったらいつでも言ってください」


 受付嬢も購入できるとは思っていなかったのだろう。すぐに引き下がって去っていった。




 更に三日後。商人ギルドに買取価格を確認しに行くと、三銀貨五大銅貨になっていた。七倍だ。


「ネオンビル商会の方か。少し奥に来てくれないか?」


 今までみたことのない眼鏡をかけた長身の男が声をかけてくる。俺とネオンは頷いて男に連れられ別室に案内された。


 綺麗なソファに座らされると、男は腕を組みこちらを見つめる。


「単刀直入に言おう。そろそろ売ってくれてもいいんじゃないか? 今が売り時だろう」


 男が真面目な顔で言う。


「まだ売るつもりはありません」


「商人は欲を出しすぎると痛い目に遭うぞ? まだ君たちは若いから分からないかもしれないが、まだ上がると欲の皮が張った結果、一銅貨まで急落した商品はごまんとある。これは先輩からの忠告でもある」


 確かに、男の言うことは一理ある。どこまで上がるか分からない場合には、だが。俺達はまだ上がることを知っている。まだここは売り時ではない。

 どう返したものやら、と考えているとネオンが立ち上がる。その目はとても澄んだ目をしていた。


「先輩のご忠告には感謝をしておりますが、私の商人の勘がまだ上がると言っています。なので、まだ売るつもりはございません」


 ネオンははっきりと啖呵を切る。


 メーティスの情報なのに、なんて堂々と嘘を吐くんだ……。素直に感心する。


 ネオンの様子を見て、男は大きく息を吐く。


「ふう……。若いが中々自分のに自信があるようだな。今日は諦めよう。さっきはああ言ったが、まだ上がるだろうと、俺も思うからな」


 男はそう言って笑う。やはり熟練者はこの伸びからまだ先があると分かるものなのだろうか。

 俺達は丁重に礼をした後、商人ギルドを後にした。


 ギルドから出てしばらくすると、ネオンは緊張していたのか、大きく息を吐いた。


「はぁー、思いっきり言っちゃったよ! これで間違ってたら大恥だねえ」


 と顔をくしゃりとゆがめて笑った。言葉ではそう言いつつも、俺のスキルを信じてくれているのが伝わってくる。


「メーティスさんを信じろ。大予言師だぞ」


「そうね。今までずっと助けて貰っているもの。今回も……。あと何日後がピークなの?」


「確か、四日後だ」


「それにしても本当にぶっ壊れスキルよね。商人なら商品のピークがいつか、常に知りたいと思っているものなのよ。それはどんな熟練の商人でも完全に読むことはできないんだから」


「まあねえ。ギャンブルでも最強だぞ、きっと。イカサマ疑われそうだけど」


「でしょうね。百パーセント当ててくる奴なんて、イカサマとしか思えないもの」


 俺達はのんびり話しながら、四日後を待つ。

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