ご機嫌取り
それからもネオンビル雑貨店は、地味に売り続けている。安定してきたといえるだろう
俺が店番をしていると、美しい金髪を靡かせた美少女が向こうから歩いてきた。忘れる訳もない。俺の命の恩人と言えるイヴだ。
突然の再会に俺の心臓が大きく鼓動していることを感じる。
イヴはこちらに気付くと笑顔で手を振ってこちらにやってきた。
「イヴ、久しぶり。警備?」
「そうなの。シビル、久しぶり! あれからやっていけるか心配だったんだけど、お店で雇ってもらえたんだね! 良かった」
零れるような笑顔で、俺の就職を喜んでくれるイヴ。
「実はこれ、俺が始めた店なんだ」
「えっ!? どういうこと? いきなりお店できるなんて、やっぱり貴族の人? それとも実家の太い商人?」
こう驚いてくれるなんて、驚かせがいがあるな。
「全然。命がけで無理してお金稼いでようやくなんとか小さな露店を開けたんだ」
それを聞いたイヴは、頭を下げる。
「ごめんね。シビルが頑張って露店を建てたのに、援助を疑って」
「気にしないで。普通そう思うから!」
普通、あんなチンピラにタコ殴りにされている若造が、いきなり商売を始めたら後ろ盾を疑うだろう。
「けど……」
傷つけてしまっただろう、と心配してくれる。やっぱり優しいな、この人は。
「恩人にこんな些細なことを気にされると、こちらも困ってしまうから。しばらくは露店開いてるから、また遊びに来てよ」
「そうね! 色々可愛い商品もあるみたいだし、また非番の日に来るわね!」
と手を振って去っていった。手を見たけど傷だらけであった。きっと毎日のように鍛錬をしているのだろう。久しぶりのイヴを見て心を癒されていたところで、声がかかる。
「シビル、ここに来たばっかりとか言ってたけど、もう女に声かけてたんだぁ? 手が随分早いようね」
とネオンに心なしかいつもより低い声で言われる。
「いや、彼女は俺が来たばかりの頃、チンピラに襲われていた時に助けてくれた恩人なんだよ」
と少し早口で説明してしまう。
だが、その弁解も彼女の心を晴らす事はできなかったようだ。
「ふーん、まあいいんだけどね」
結局俺は、夕食にデザートを付けるなどで、ネオンのご機嫌をとることになった。





