クロノの行動と感動
「・・・【魔王】様、それはクロノスの為になる事なのでしょうか?」
家臣の1人が質問してくる
「黙殺す。」
「侵攻により獣人至上主義を形成するおつもりでしょうか?」
「黙殺す。」
「追撃に向かった事と関係しているのでしょうか?」
「黙殺す。」
僕は全ての質問に対して答える気がない
獣人たちは何も答えない僕に対して動揺している
その気持ちは勿論理解している
だけど僕は彼らが決断するまで何も語る気はない
「・・・【魔王】様。」
それまで黙っていたルーシャが声を上げる
「恐れながら【魔王】様・・・貴方様は我ら獣人を侮っていらっしゃいます。」
その瞳は真っ直ぐと、けれども若干怒りの色が灯っている様に見える
「我らは貴方様に忠誠を誓いました。それは死ねと命じられれば死にます。侵攻を命じられれば侵攻します。死して尚、貴方様に仕えよと言われれば喜んで仕えましょう。」
そこまで言った後に言葉を区切り、僕を睨みつける
「我ら獣人を舐めないでください!!」
彼女がそう言い切ると同時に全員が立ち上がり僕に跪く
「私たち獣人は大義でも倫理でも動きません。貴方様の命ずるままに動きます。」
あぁ・・・確かに僕は彼らを侮っていたんだろうなと思う
侵攻されていた獣人たちは平穏を望んでいると思っていた
平穏を手に入れたが故に戦争行為を望まないと思っていた
けれども、魔族全体がどうかは分からないが、少なくとも獣人たちにとっては【魔王】の命令こそが至上なのだ
「・・・ルーシャ。」
仮面を外しながら彼女の名前を呼ぶ
「ま、【魔王】様?!」
「君たちの覚悟を受け取り、仮面を付けたまま話す事は僕には出来ないよ。・・・この場だけは仮面を外させてもらうよ。」
そう言って素顔を晒し、フードを取るとルーシャとグーガ以外の獣人は顔を見ながら驚いている
「見ての通り、僕は人族の様な容姿をしている。更に言うならば僕は元人族だ。」
驚いたまま固まっているバルデインや家臣を尻目に僕は今までと同じ様に事の顛末を説明し始めた
◇
◇
◇
「今までの話はルーシャとグーガは知っている。けれども他の皆にも知って貰いたいと思ったから説明した・・・こんな僕が【魔王】で、さっきの様な命令を出しても付いて来てくれるかい?」
説明を終えて改めて家臣の皆に問いかける
全てを知っている彼女の主導で意見に従わせるのは公平ではないと思い説明したが、彼らは思いのほか真剣な表情で僕の話に耳を傾けてくれた
「恐れながら・・・【魔王】クロノ=エンドロール様、私共は今非常に感激しております。」
「左様、我らからすれば【魔王】様である事だけで忠誠対象となります。にも拘らずクロノ様の生い立ちまでご説明頂けるとは・・・恐悦至極でございます!!」
「これより我ら獣人は、より一層の忠誠を今此処に誓いまする!!」
「左様、我らは【魔王】様に仕えるのでは非ず!!クロノ=エンドロール様に仕えまする!!」
その言葉を皮切りに、この場で跪いていた獣人全員が頷く
「分かった・・・有難う・・・」
僕はそれ以上、言葉を続ける事は出来なかった
突然、侵攻を命じた元人族の僕に対して、理由も求めずにより一層の忠誠を誓ってくれる
それを思考の停止であったり、盲目的な信頼と呼ぶ事も出来るだろう
けれども、獣人でない元人族・・・彼らからすると異物以外の何者でもない僕に寄せてくれる信用や信頼、それは涙が出そうなくらい・・・嬉しかった
僕は涙を必死にこらえながら
「では、今から他国を侵攻する理由を本音で説明しようと思う!!」
そう高らかに宣言をした
新年あけましておめでとうございます!!
本年1発目は少し短いかもしれません・・・
それでも何とか頑張りますので宜しくお願い致します!!
皆様にも良いお年であります様に!!
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