【間章】アカノとクロノと…
2人でパーティーを組んで半年が経った
この半年は私にとっては幸せ以外に表現する術がないくらい幸せな生活だった
朝、宿屋で起床すると
「おはよう姉さん。飲み物のむ?丁度今注いだばかりなんだけど。」
そう言ってクロノが私に挨拶をしてくれる
宿屋で朝食を取った後は2人揃ってギルドへ向かう
「クロノ、この依頼はどうだろう?」
「うーん…悪くはないけど、姉さんのランクを上げる為にはこっちの方が良いと思うよ。このレベルだったら僕もアシスト位は出来ると思うし。」
「成程!ではこの依頼にしようか!!」
「え?!姉さん、ちゃんと確認しないで大丈夫?!」
「お前が選ぶ依頼に間違いさ!気付いていないかもしれないが、お前は頭が良い。もっと自信を持て!!」
「う、うん。」
私がそう告げると苦笑しながらも喜んでくれた
夕方前には殆どの依頼は完了し、2人ギルドに報告しに行く
「はい、【グングニル】のお2人は今回も達成ですね!いつも有難う御座います!!本日付けでA級パーティーに認定されました!おめでとうございます!!」
「凄いぞクロノ!!ギルドに加入して半年でA級だ!!父さんのいたパーティーがS級らしいからもう少しだな!!」
「うんそうだね…でも依頼の殆どは姉さんの力で達成できたからな…」
そう言いながらクロノはいつも若干浮かない顔をする
彼はどれだけ私の助けになっているのか理解していないのが、いつも悔しく思う
「何を言う?!お前の適切なサポートとアドバイスが合っての賜物だぞ!!確かに実力は発展途上かもしれないが、サポート面ではお前は非常に貢献してくれているぞ!!」
「そう言って貰えるのは嬉しいけど、やっぱり少し歯痒いや。」
「…分かった。今日はいつもよりも厳しく稽古するぞ!!」
「う、うん!!」
そう言いながら2人で鍛錬を日が暮れるまで行う
「よし、今日はここまでにするか!!」
「はぁ、はぁ…有難う御座いました。やっぱり姉さんは強いや…まともに一太刀も与えられないのは悔しいな。」
クロノも頑張っているが、やはり称号の恩恵は強い
私が【剣聖】でなくなったとすれば、一太刀どころか負けてしまう可能性すらあるだろう
でも…無いモノは無い
そのまま彼には強くなって貰うしかないのだ…
だから私はクロノにいつも発破をかけていた
「私はお前の姉だからな!いつまでも目標であり続けるのが姉というものだ!だがクロノ、お前も動きに関しては洗練されて来ているぞ!!」
「そう、なのかな?正直、実感湧かないや…」
そう言いながらハハッと笑う顔を見るといつも胸の奥がキュッと苦しくなっていた
鍛錬を終え、2人で夕食を取る
その日の依頼や街で新たに出来ていた店の事、父さんの事や昔話、明日のスケジュールについて等、会話が途切れる事は殆ど無かった
それからは明日に備えて身体を休める…
色んな葛藤ややりきれない気持ちはあった
けれども1日中2人で何かをする日常は私にとってはやっぱり幸せだったのだ…
◇
そんな日常が崩れたのは…
A級パーティーになって少ししてからの事だった
ギルドの受付嬢に声を掛けられ普段行く事のない会議室に通される
「なんだろうね?」
「さぁな?もしかするとS級パーティーに昇格するかもしれないぞ?」
「姉さん…A級になったのがついこないだだよ?あれから高ランクの依頼は受けていないしそれは無いよ。」
私が気を紛らわそうと言った軽口に呆れた声で返答してくる
「わ、分かっているぞ?!ただ可能性の1つとして言ってみただけだからな!」
そんなやり取りをしていると会議室の扉が開く
扉からはギルドマスターであるルナエラさんと、後5名ほどが入ってきた
ルナエラさんの顔色が良くないな…等と考えていると、唐突に50歳前後の体格の良い男性が私たちに向けて書状を開き読み上げだした
「勅命!ギルドA級パーティー所属【グングニル】は今この時を以って、【勇者】ローエル=バグマン他2名をパーティーメンバーに加入させる事とする!又、【剣聖】アカノ=エンドロールは今この時を以って、国からの指名依頼を受ける権利を有し、又、国からの指名依頼を優先する事とする!」
その国からの発言により、私とクロノの【グングニル】は歪な形へと変貌していった…
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