目の前の脅威
その巨大なロボットは大気圏を抜け、猛烈な速度で地球から宇宙空間に飛び出した。
人型のその巨大なロボットはメシアと名付けられ、その名前が表すように地球人類にとっての救世主である。
十年前、各国の学者が地球へ向けて一直線に迫る小惑星の姿を天体観測所から確認した。
全人類の危機に世界は騒然となり、それまで行われていた愚かな戦争はすべて停戦し、この目の前の脅威をどう解決するか話し合われた。
まさに一致団結、人類は地球防衛軍を組織し、先進国も発展途上国も後進国も惜しみなく資源と金と人材を防衛軍に投入し、この小惑星を破壊するロボット、メシアを造りあげた。
パイロットは不要で、地球に迫る脅威を必ず破壊するというプログラムのもと行動する。
もはや、一致団結した人類同士が戦う理由もなく、この先いかなる脅威からも愛する地球を守ってほしい一心であった。
かくして、地球と全人類の命運はメシアに託されたのである。
地球を飛び立つメシアを全世界のマスコミが報道し、世界中の人間達がメシアが小惑星を破壊してくれる事を祈っていた。
結果、見事メシアは任務を成功させてみせた。小惑星は粉々に破壊されたとの報道に人類は万歳と涙を流して喜んだ。
宇宙のちりとなった小惑星を確認し、地球へ向けてUターンをするメシア。
その様子を国際宇宙ステーションに取り付けた高性能カメラが防衛軍のモニターに映していた。
防衛軍も地球の危機を自分達が造りあげたメシアが退けた事で、誇らしげにモニターを見ていたのだが、すぐに戦慄することとなる。
たくさん壁に取り付られたモニター、その中にメシアの視点の物がある。それはメシアが見ている光景の他に、破壊の対象となっている物体の名称が表示されるのだが、それがまずかった。
ターゲットはショウワクセイから、ジンルイへと変わっていたのだ。
防衛軍は蜘蛛の子を散らしたかのような騒ぎになったが、どうしようもなかった。
メシアは猛烈な勢いで大気圏へ突入した。地球に迫る、新たな目の前の脅威を破壊するために。




