怒れない男 8
今日まで起きたことを思い返し、Y次郎は自宅マンションの屋上に寝そべりながら夜空を見上げていた。
頭はもう冴えている。冴えているからこそ自分がしてしまったことをはっきりと実感してしまった。
F子は無事だったのだろうか?本当に俺の力は人の命を奪う化け物になってしまったのか?いや、もはやー
「俺自身が化け物か」
自嘲気味に笑い、うなだれるY次郎。誰かが階段を上がってくる、それも複数人、刑事のようだ。
刑事達は粉々に砕けた鉄製のドアと屋上に寝そべり、うなだれるY次郎を見てすべてを理解したのか、ゆっくりと歩み出てきた。
「U野 Y次郎。女医、A田 F子に対する殺人の容疑で現時刻、八月 二十日 午後 二十二時 四十三分をもって逮捕する」
冷たい手錠の感触、Y次郎はどこか落ち着いていた。そうか、未遂ではなく殺人の容疑ってことはF子は死んだのか。Y次郎はどこか落ち着いた頭でそんなことを考えていた。
階段を刑事達に囲まれながら下りる。赤いランプがたくさん回っている。
階段を下り終えたY次郎をパトランプとはまた違う光が照らした。カメラのフラッシュ、ニュース番組の生中継の照明。レポーターが興奮気味に何かを伝えている。
ー大手商社の社員
ー連続破壊行為の犯人が
ー女医殺しの
皆好き勝手に言いやがって、俺だって好きでこんな力がついたわけじゃないんだ!お前らに何が分かるというんだ!お前らなら耐えられたのか?この苦しみに、孤独に、お前らなら耐えられたのか!。
ふつふつと溢れてくる感情。もう、抑えられなかった。Y次郎は大きく息を吸い込むとありったけの怒りを爆発させた。
何が起きたのか?それは、もう誰にも分からなかった。
ただ、地球上の全ての生物が強烈という言葉以外ではなんとも形容がしにくい光に、世界が包まれていくのを感じた。




