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其の十四「鏡界巡り三人旅へ」

「令一ちゃん、噂話の内容は決まってる?」


 アルフォードさんの言葉に頷く。

 紅子さんの噂話は元から赤いちゃんちゃんこの噂に加えて「夢の中に出る」「凶器探しをさせられる」というのがあったからな。

 そんなに追加する要素はない。あるとすれば、それは「赤いちゃんちゃんこの亜種でこの町特有の怪異である」ということか。あと、失敗したら殺されるというタイプの内容を避けるべき……ということくらいか。


「……という感じなんですけれど」

「うーん、まあそれなら大丈夫かな?」

「噂話ですから、細かいところはそのうち尾鰭がつくことでしょう。あまり詳しく決めすぎないことですね。それでいいでしょう」


 軽く内容を話して、神様コンビからのお墨付きをもらう。

 それから中身の無くなったカップをテーブルに置き、息を吐いた。


「令一さん、そろそろ夕方になりますよ。どうしますか?」

「話し合いで結構使っちゃったな」


 春国さんからの警告に頷く。

 神内は俺がなにをしているのか知っているわけだし、あいつのことは放置。

 今夜は積極的に動くべきだろうな。なにせ、七日しかないんだから。


「俺はこれから各地を回って皆に協力をお願いしてみる。だって、夜は怪異の時間なんだろ? 昼間に行っても寝ていたりするかもしれないし、活動時間に渡り歩くほうが失礼じゃないだろう」


 常識的な時間に尋ねるのが普通だ。

 怪異が相手の場合、夜の方が適正な時間だと思う。


「あ、でもさ。真宵さん……紅子さんの様子は、どうだ?」


 紅子さんは今も真宵さんの化身、八千(やち)を連れているはずだ。

 真宵さんなら彼女がどうしているか分かると思うのだが……真宵さんは首を振った。


「居場所は朧げながら特定できます。けれど、宵護(よいご)の扇子はあの子を守り、力を貸すもの。あの子の意思に反することはわたくしにも伝えてはきません。全力で妨害してきていますわね。わたくしの化身ながら、随分と入れ込んでいるようで」


 苦笑いをしている真宵さんに驚く。

 リンとアルフォードさんは繋がりがあるし、結構俺のことは筒抜けになっているから真宵さんと八千もそうだと思っていたんだが……化身側が本体に伝えるのを拒否することなんてあるんだな。

 それだけ八千が紅子さんの意思を尊重しているということに他ならないので、いいことではあるのだが。


「んじゃ、動きますかっと」

「鏡界の中を巡りながら協力を仰いでいきましょう。あ、空を飛んで行くのはなしでお願いします。特に刹那さん」

「さすがの俺も二人乗りはさせてやれねぇからなあ。俺が抱えられるのはお一人様のみだ」

「二人乗りできるスペースがあったらやっていたんですか……?」


 青ざめた顔でそう尋ねる春国さんに、刹那さんがサムズアップで答えた。やるんだな。春国さんはよほどトラウマになっているみたいだ。彼には悪いがちょっと笑う。同じ目に遭いたいかっていうと絶対に遭いたくないが。


「そうそう、今まで知り合った子を巡ったり、協力をいろんな子にお願いしてきたあとは最後にまたここなら戻ってきてね。鵺ちゃんにも協力してもらうんだよね?」

「ああ、そうだった。そのヒトは知らないからな」

「うん、こっちから先に連絡はしておくから、キミ達は気兼ねなく鏡界巡りに行ってらっしゃい」


 立ち上がり、鞄を持って準備をする。

 テーブルの上から俺の腕を伝ってちょろちょろとリンが肩に登り、俺の頬にその小さな顔を寄せる。まるでオレもいるよと言ってくれているようなその行為により一層嬉しさが込み上がってきて、和んだ。


 刹那さん、春国さんと一緒に萬屋の入り口から外へ出る。

 そのとき、背中に声がかけられた。


「いってらっしゃい」

「いってらっしゃいませ、良い旅を」


 だから……三人揃いって振り返りながら笑顔で言う。


「いってきます!」

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