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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第四章 異世界 ~聖地~
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71話 来襲の四聖将




剣咲流本部。

広間の壁から無傷で現れる『シグマ四聖将』イーグ。

その横に並び立つのは元連合軍最強部隊の1人『死神』フローラ。





「こりぁ交渉決裂ってことかねぇ?」

「そーじゃないですかぁ?」



今尚、カミノの街最高戦力のど真ん中で軽口を叩く2人。

基本、接近戦有利なこの状況で、剣士と術士、どちらかに軍配が上がるなど考えなくても分かる。それに加え、数では圧倒的に有利、相手はたったの2人…剣咲流の人間は広間にいるだけで20人、外の剣士も併せれば200人は下らないだろう。

そんな中、余裕すら感じる態度で此方の反応を伺う2人…。

正気の沙汰とは思えない。いや、それ程自身の実力に自信があると言うことか…。




「よぉ、イーグとか言ったか?」



そんな緊張感の中口を開くのは、やはりこの男。

剣咲流『剣神』フウガ。

どんな状況でも、辺りの空気をガラッと変える殺気を放ち、他の剣士達の暴走をピタッと止める。



「さっきの伝言内容だがな、別に全部を断るとは言ってねぇ。」




ザワ…





書簡の内容はフウガしか目を通してない、故に他の剣士達からは懐疑の表情が浮かぶ…。



「ありゃ?そいつぁ俺としても、ウチの(アクア)さん的にもありがたい話だけど、全部じゃねぇって事は一部は引き受けてくれんのかい?」

「ふん、条件次第ってとこか…。」

「条件ねぇ…いいぜ?言ってみなよ。まぁ俺としては、アンタ等と今ここで揉めても時間の無駄だしな、チンタラしてたら本命に逃げられちまう。」


イーグの言っている本命…

ユウ達の話からして、ネオシグマ帝国のタカユキなる人物が追っているのは、ユウとマナ。それに、私やカレンに呪いの禁術を掛けた事から、連合国の戦力低下を狙ってるのは間違いないだろう。



「ザンザス、先ほども言ったが私が隙を作る、その間にルビィ様を探して、この事を報告だ。お前の気持ちは嬉しいが、一刻を争う、分かってるな。」

「はい、さっきみたいな我が儘言ってる場合じゃねぇってのは理解してます。が、隙を作るのはオレの役目です、クラリス様がルビィ様の元へ…。」

「ザンザス…」

「大丈夫です、それに成功率で言えばクラリス様が抜けた方が速い。足止めまではいきませんが、何とか死なない程度には持ちこたえますぜ。」


真剣な眼差しでジッと私を見つめるザンザス…

覚悟は本気…か。


「分かった。タイミングはお前に任せる。」

「はっ、ありがとう御座います。」

「死ぬなよ…」

「その命令なら命に替えても守りますぜ。」


ふっ、軽口を叩く余裕はあり…か。

さて、エナの使えない状態でどこまでやれるかだが、剣咲流の剣士達はまだしも、イーグとフローラに関しては此方への警戒が薄い…そこを抜ければ…。









「あの馬鹿からの書簡の内容だが、まず、シグマを手伝い連合国を潰す。これには興味無ぇ。却下だ。」

「まぁそうくるわな。」

「次に『天聖』の居所を教える代わりに『水聖』には手を出すな。だが、コレも却下。」

「へぇ…その心は?」

「あの馬鹿が一度負けた相手に再戦キメてぇのは分かるが、簡単な事…俺が『水聖』とヤリ合いてぇだけだ。

『天聖』の居所が分かってんならそっちをテメェがやれ。結果的にはお前等シグマに都合良くなるんだろ?」




「(へっなるほどねぇ…アクアの言った通りだな。)」

「あん?何か言ったか?」

「いや、別に、んで?他はどうだい?」


「不可侵条約の締結ねぇ。知ってはいると思うが剣咲流は人族だけに教えてる流派じゃねぇ、そういう意味では連合国に近い考え方だ。だが、中央大陸や、お前等シグマの連中は違うよな…そんな奴等が俺達剣咲流と不可侵条約ってのはどうにもキナ臭ぇ、後から寝首掻こうってんなら話は別だ。」

「んー、そこはウチのボスや皇帝様に聞かなきゃ詳しい事は分からねぇ…だけど、お互いドンパチやって疲弊するなら、シグマがイグザをどうにかする間だけでも手ぇ出すなって解釈だと思ってくれると助かるぜ?」

「ここで手前ぇら2人を始末するって案もあるんだが?」

「あまりオススメはしないな、過信してるわけじゃねぇけど、アンタ以外に俺と戦えそうなのは一人か二人ってとこだぜ?」


ただのハッタリでは無い事は、先ほどのやり取りで分かっている面々…。



「あのぉー少し良いですかぁ?」

「あん?」

「実はぁ…」


突然話の腰を折りながら片手を申し訳なさげに上げるフローラ。そんな彼女の態度に眉を顰めながら、フローラに反応するフウガ、フローラはゆっくりとフウガに近寄り何やら話しているようにも見える。。

2人の会話は小声故に此方には聞こえないが、それを聞いたフウガは何やら此方に一瞬視線を向けるが、直ぐに近くの剣士を呼び付け、何かを伝えているようだ。



どうする…。

例えルビィ様なら『剣神』に遅れを取る事は無い。

だが、万が一を考えるならば私がこの場を制圧するのが得策か…エナのコントロールが上手くいかない状態でどこまでやれるか…

いや、万全を期して一刻も早くルビィ様の元へ向かうべきか…。


様々な思考が巡るが、まずはこの場…

ザンザスが隙を作り、その一瞬で離脱。



腕を組みながら引き続きイーグの話を聞いているフウガ。他の剣士達もその内容に耳をかたむけている。

チラリとザンザスの方に視線を送ると、小さく頷きながら此方にいつでもイケるという合図を返す。


程よく身体に力を込め、出口方向を見据えながらザンザスの行動を待つ…


「いきます…」


ボソリと呟きながら、背中に持っていたハンマーをイーグとフウガの丁度中間辺りに投げ飛ばすザンザス。


ブォンと風を切る音と共に勢いよく飛んでいくハンマー…

まさに一瞬の隙を突いた予想外からの攻撃にイーグは目を開きながら驚きの表情を浮かべる。

フウガも即座に気付くが、チラリとハンマーを見るが己に当たらないと確信しているのか腕を組んだまま不動の構えだ。


今っ!


絶妙のタイミングで広間を抜けようと一歩踏み出す。


が、



「どちらへ?」

「っ!?」


私の向かう広間の扉の前に立つ1人の剣士。

即座に交戦しても容易く抜けられる相手では無い事は立ち振る舞いから感じ取れる。


いつの間に…

いや、それよりもマズい状況だな。


「おいおい、クラリスさんよ、こっちはまだ話中だぜ?そんなに急いでどこ行くんだ?」


ニヤリと笑うフウガ。

此方の動きが読まれていた?

いやそんなはずはない、ザンザスのタイミングは完璧だったはず、最初から私が離脱するのを読んでいたとしか思えない…


「たしかに…アンタには出て行かれるのは、ちょっと困るかなー。」

「私に何用だ…」

「おいおい、どぼけなさんな、アンタと一緒に来てる魔眼使いの2人、それに魔王の娘、それくらいは分かってるっての…」

「私が簡単に話すとでも思っているのか?」

「いやー、そいつは難しいだろよ。けどまぁ、ここに居てもらえればやりようは有るし、それにこの街に居るのは確定しちまったようなもんだしな。」


やはり、狙いはユウとマナ、それにネオンディアナ様か…。

ヤツの言うとおり、私がここで足止めを食っていては、いつまで経っても状況を外に伝えられないのに対して、もし剣咲流がシグマへ協力してしまうなら、直ぐにこの街に包囲網が拡がる。


「って事だ、どうするよ剣神さん?」

「ふん、まぁなんだかんだ言って手前ぇの口車に乗せられちまってるってのは気に食わねぇ…が、一先ずは手を組んでやる。」

「おっ!いいねぇ、助かるぜ。なんせこっちは3人しか居ないからよ、全面対決になんかなったら、しんどかったぜ。」


3人だと?

ということは、既に手の者が1人外にいる。

もしそうならば先ほどよりも状況はマズい。


「だがなイーグ、1つだけ言わせてもらう。」

「なんだい?」

「水聖の後はお前だ、ウチの弟子に手ぇ出したんだ落とし前は付けてもらうぜ?」

「おっかねぇなぁ、なら俺はさっさと用事済ませて退散させてもらうぜ…。」





完全とは言えぬが、現状シグマと剣咲流が手を組んでしまった、この場…。容易く脱出も難しいか。



「剣神よ、クラリスは私がもらっても構わないか?」


と目の前の剣士が腰に差していた剣を引き抜く。

細身の刀身は片方に刃が付いており、緩やかな曲線が特徴的な『刀』と呼ばれる珍しい剣だ。


「勝手にしな、俺はコイツらと少し出てくる、その2人は来られると面倒だから適当に留めておけ。まぁ、クラリスさん相手にお前等がどこまでやれるか分からねえけどな。」


その言葉を聞き、私へ剣を向け戦闘態勢に入る目の前の剣士。

チラリとザンザスの方を向くが、周りの剣士達も、私達2人を取り囲むような態勢。


この数なら問題ないが、剣神とイーグ、フローラの3人が先に出るのはマズい。目の前の剣士もそれなりの腕前、さらにこの広間に居る全員を相手にしていては時間が掛かりすぎる。


ならば先手を打つしか…




そう思った瞬間、フウガとイーグ、そしてフローラの姿が突如その場から消える。


「しまった、先ほどの術か!」

「余所見…ですかな?」


突然消えた3人へと目を向ける一瞬の隙を突くように、私の間合いへと接近する剣士、抜き身の剣先が私の胴体へと触れる…


「くっ…」


瞬間に身体を捻り、剣を躱す。


「…。なるほど、さすがは『闘女王』こんな奇襲では触れる事も出来ませんか…。」

「無駄だとは思うが、一応聞いておく。私達2人を解放する気はあるか?」

「その答えは貴女が想像している通りです…よ。」


と消えるような速度で私の背後へと回り込み、剣を振るう。

流石は剣の聖地とも呼ばれる剣咲流本部の幹部剣士といったところか…洗練された一閃、この腕前なら分厚い鎧を着ていたとしても胴体ごと切り裂くのは容易だろう。ひとりひとりが、この腕前なら短時間でここを抜けるのはかなり手間取る。


「だが」


ガキンッ


と鈍い音を鳴らしながら、剣士の一閃を防ぐ。

すかさず態勢を整え直す剣士だが、私の一撃の方が速く頭部を打つ。


「ぬっ!」


剣の腹で思い切り側頭を叩いたつもりだったはず、、

おそらくは自ら飛んでダメージを軽減させたか、細かな戦闘技術も申し分ない…

マズい、早く追い掛けねば、ルビィ様に万が一の事があったら…

いや、その心配は無用か、あの方に限りそれは無い。それに海王様とネオンディアナ様も一緒ならば命の危険までは無いであろう。


「が、それとこれとは話が別っ!!!!」


「ぇ…?」


目の前の剣士へ一瞬で距離を詰め、その胴体に渾身の蹴りを捻じ込む。

恐らく私の剣ばかり意識していたのか、疑問の声をあげる間も無く勢いのまま広間の壁へと飛んで行く剣士。


ズドンッ!


と派手な音を立てながら壁に穴を開け、外では手足を広げながら意識を失う姿を見て、私はザンザスの元へと急いで向かう。


取り囲む剣士達も一瞬何が起こったのか分からない顔をしながらも我に返ったのか、再び私達に剣を向ける。



「ザンザス無事か?」

「はい…いや、クラリス様の攻防が圧倒的過ぎて、言葉を失ってしまいましたぜ…」

「残る剣士を全員相手にしていてはルビィ様の元へ行くには時間が掛かりすぎる、さっさとこの場を離れるぞ。」

「はい、しかしどうやって…?」


ふむ、確かに。

この数をいちいち相手にしていては、いつまで経っても膠着状態…かと言って…

仕方あるまい、多少乱暴だが…。



「ザンザス、私が合図をしたら、今開いたあの穴へと走れ。」

「え、いや流石にあの穴から出るのは…無理がありませんか?」

「説明は後だ、行け!」



と今しがた剣士を吹き飛ばした穴へとザンザスを向かわせる。


即座にザンザスの行く手を阻むように待ち構える剣士達。

私はザンザスの向かう反対方向から向かってくる剣士の一人を捕まえ、力任せに壁へと投げる。


「なぁぁぁぁ!???」


「ちょっ!?ぐほぁっ…」


奇声を発しながら、飛ばされた剣士はザンザスの目の前の剣士達へと突っ込み、見事命中。


「さぁ、次はどいつだ?」


指を鳴らしながら、目の前の剣士達へと向かう。

もちろん奴等も馬鹿ではない、即座に臨戦態勢を取るが、私の方が速い…

一瞬で間合いを詰め、その身体を掴み即座に放り投げる。


ドン!

ガン!

バキッ!


っと鈍い音を立てながら次々飛ばされる剣士達。

ザンザスの行く手を阻んでいた者達もこれで居なくなった。

なにやら、怯えるような目で私を見ているが、まぁ気のせいだろう。


そして次に狙うは壁の穴。


「はぁぁっ!!!!」


気合一閃

そう、聞こえれば良いが、ただ力任せに手近な物を掴んで投げるだけの簡単な作業。

それが、剣に授かりし修道士達だからたちが悪い…

まぁ、今更気にすることでもないが、、

とりあえず近くに居る人物を掴んでは投げ、掴んでは投げ、の繰り返しだ。


バキッ!ボゴッ!っと鈍い音と共に、狙った穴はみるみる広がっていく。

それこそ、そこらにいる一般市民では壁に激突し、潰れたカエルのようになるのだが、流石は【剣咲流】の鍛え上げられた剣士達、己の身体を極限まで行使した結果だろう、幾重にも積み重なる人の重さへの耐性もある。

立ちはだかる剣士達を一通り投げ捨てると、壁の穴は見事に広がっていた。

先ほどまで殺気立っていた場内も、シンと静まり返り少々居心地が悪い。




「ふむ。こんなものか…ザンザス行くぞ。」


「え?いえ、はい。」


未だにポカンと現状把握の出来ていないザンザスを後目に、ツカツカと広がった穴へと歩を進める。途中我に返った剣士が数名かかって来たが、同じように外へと放り出す。


さて、急がねば、奴らの目的はルビィ様ネオンディアナ様の二人、ついでにユウ達か。

街を離れるにしろ、抗戦するにしろ一度合流すべきだ、ならば向かう先は、、











※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※








「いやー、堪能したなぁ。」


俺たち5人は酒場を後にして、宿へ向かっている。

合流したカレンとスネ夫も、そこそこ酒を楽しみ満足そうだ。カレンはルビィと一緒だからなのもあって常にニコニコだ。

危険な殺人鬼は封印、良いことだ、ありがとうルビィいい薬です。


「んで?宿はどこら辺だ?なんか目立つなんたらってのが在るって言ってたけど。」

「そう焦んなよボンズ、そこの角曲がってちょろっと歩いて、もういっちょ曲がったとこだぜ。」

「その言い方だと近いのか遠いのか分かんねぇよ。」


何メートルくらいとか言ってくれれば分かり易いんだがな。まぁそこまで遠くないってのは伝わったけどさ、、


そんなたわいも無い事を言いながらテクテク歩いていく俺達。

綺麗に舗装された道といい、立ち並ぶ店といい、ホント観光地って感じだな。

目の前にはルビィとカレンがイチャイチャしながら歩いてるけど、こうやって見ると姉妹、いや、親子に見えてくるな。

ルビィがデカいというよりはカレンが小さい、ネオンと大して変わらないしな。だがこの2人はこの大陸ではスーパー有名、そんな俺は御付きの夫なわけで。


そんなこんな道を皆で歩いていくと、何やら物々しい雰囲気を醸し出した剣士達が走って行くのが見える。




「おいおい、ありゃぁ剣咲流の剣士達じゃねぇか、あんなにバタついて、どうしたってんだ?」

「大方、クラリスとオヤジが何かしたんだろうぜ?」

「いやいや、ボンズと一緒にすんなって。あの二人に限ってそれはねぇよ。」

「どうだかね、オヤジはともかく、クラリスなんてルビィの悪口聞いたら豹変する奴だぞ。カレンと同じくらいヤベェじゃねぇか。スネ夫はまだクラリスの真の姿を知らないのだろう、そうだろう。」

「いやいや、ボンズ。いくらクラリス様でも時と場合ってもんがあるしなぁ…」


若干スネ夫も心配そうな表情になってきている。

やっぱりスネ夫から見てもクラリスはやる奴ですよね、分かります。


通りをバタバタと走り行く剣士達…

そんな不思議な光景を見ていると、ふと目の前の道上に妙な違和感が目に映る。






ん?

なんだ?道の真ん中にユラユラと…

ってか、アレってもしかして




そんな俺の違和感を打ち砕くように、何もないところから突如として人影が現れる。

痩せこけた顔の、ローブを纏った男。

見るからに只者ではないオーラ全開の初老の男。


そんな2人が突然道の真ん中に湧いて出たんだから、何も知らない人からすりゃぁただのイリュージョンだ。

とまぁ、俺は、めちゃくちゃ驚いたが、よくよく考えたら、この世界じゃ何でも有りなんだから、これくらいの事で毎回驚いてらんねぇぜってもんよ。俺だって多少なりとも免疫付いたんだ、至って冷静にだ。そう、クールに行こうぜ。




「なっ!?いったい何処から現れたんだ!?」



ぶふぉぉい!!

こら!スネ夫!ちょっおま、モブ全開の反応してんじゃねぇよ。

ん?じゃぁなにか?ここは普通に驚いて良い場面だったのか?


チラリとルビィとネオン、カレンを見ると、3人とも驚いた表情で相手方を見ている。

が、そんな均衡も即座に破るかのように、初老の男が口を開く。





「久しいな、水迅流最強。」

「フウガ…か。」


現れた初老の男、ルビィの反応を見る限り顔見知りか?

いや、それよりもなんかこうヤバそうな雰囲気だ…



「あれが水聖か…って事はあの白髪の嬢ちゃんが魔王の娘ね。」

「おい、水聖には手を出すな、アレは俺の獲物だ。」

「何度も言わなくても、分かってるっての。こっちは魔眼使いの2人と魔王の娘にしか用は無いんだ、後は好きにしな。」



!?

アイツ今確かに、魔眼使いの2人って、それにネオンの事も…という事は、あの男はシグマの関係者…いや、間違い無くそうだろう。

くそ、タカユキの野郎、想像以上に手廻しが良すぎるぜ、まさかこんなに早い段階で追い付かれるなんてな…。


フウガと呼ばれた初老の男の横に立つ不気味な痩せこけた男がゆっくりと此方へ近づくように歩を進める。

その少し後ろを初老の男が無防備にユラリと付いて来る。



「ルビィ、あの男は顔見知りか?」

「あぁ、先日話していた『剣神』名はフウガ、剣の技量は私の知る限り最強と言っても過言ではないな。」

「それは三英傑のルビィよりも強い?って受け取るけど、マジで?」

「あぁ…私の剣の腕では奴には適うまいな…。」



軽い冗談で聞いたつもりがガチのヤツだった。

おいおい、勇者よりもヤバい剣士って、普通仲間ポジションじゃね?なんでシグマなんかとつるんでんだよ、、、



「水聖ルビィ、ちょいと面貸してくれねぇかな?」


そんな俺達の事など、お構いなしに『剣神フウガ』が此方への歩みを一歩、また一歩と近づける。


「断わる事が可能なら見逃して欲しいところだが、、そうも行かないようだな。」


そう言いながら、自身のロングソードに右手を添えるルビィ。

フウガもそれを見てニヤリと表情が歪む。


「流石、話が分かる。

おい、イーグ。後は好きにしな、俺ぁ水聖と少し遊んでるぜ。」

「了解だ、しっかり頼むぜダンナ。」


コッチの事なんて関係無いと言わんばかりに話が進み過ぎて、正直覚悟もクソも無いという、この状況…

スネ夫なんて、完全に挙動不審だぞ。まぁ俺もだけど、、、


「カレン、悪いんだけどネオンの護衛を手伝ってくれると助かる。あのローブのヤツ、シグマ関係だ。絶対にネオンには指一本触れさせねぇ。」

「だいじょうぶ、任せて。」


そう言いながら、一瞬にして自身の剣を引き抜きながら戦闘態勢に入るカレン。正直頼もしい事この上ない。



「ユウ…すまないが私は奴の相手をせざるを得ない…。カレン、それにスネ夫、ネオンの事を頼んでも良いか?」


「勿論!任せてよ!」

「ルビィ様の勅命、必ず!!」


ルビィへの対応は違うが、二人共ネオンの護衛を引き受けてくれる。正直この2人が居るなら俺も安心だぜ。


「ってか、俺にもネオンの事頼むって言えよな!それと、さっさと終わらせてこっちの手伝いも頼むぜルビィ!」

「ふふっ、そうだな。ユウもネオンを頼む、すぐに終わらせてくる。。」


そんなやり取りとは関係無く、ルビィにはフウガが歩み寄る。


俺、ネオン、カレン、スネ夫の4人には、イーグと呼ばれたローブの男が近づく状況。


カリキやケアルランドみたいな大事にはならないと信じたいが、シグマの前科を考えると、ここアイ湖も碌な事にならない予感しかしない…。

なんとか一般人を巻き込まないように、上手く立ち回れるのが理想なんだが、、、、



「さて、と、そこの白い髪の嬢ちゃんが『混血の魔女』だろ?んじゃボスと同じ黒髪の兄さんと、、、ん?あれ?もう一人が居ねぇな?まさか緑髪の嬢ちゃんが『魔眼使い』って事か?」


ちっ、ボスってタカユキの事だな。

くそ、これであの男がシグマ関係ってのが、ほぼほぼ確定しちまった。

ヤツの口ぶりから流石にネオンの素性は割れてるか…けど、俺とマナの情報は黒髪くらいか?タカユキの事だからもっと鮮明に教えてると思ったんだが、グレンと同じような情報しかもらってないと考えてみると、納得の発言か…。


そういや黒髪の人なんて、この世界で腐るほど居ると思ってたけど、何処行っても見なかったなぁ…


徐々に近付くイーグ…

カレンも分かりやすく警戒態勢なのに、なんなんだ?あの余裕…


「おいおい、だんまりかよ…… はぁ、めんどくせぇな。俺はあんまりドンパチやるのは好きじゃねぇんだよな。」


そう言いながらも、イーグの身体に白いエナの光が纏わり付くようにユラユラと浮かび上がる。


「ネオン!カレン!スネ夫!気をつけろ!何か術を展開してる!」


俺の言葉にすぐさま構える3人。

カレンはゆっくりと腰を落とし、いつでも仕掛けられる状態に。

スネ夫は剣に黒いエナをゆっくりと放出、その後白いエナに包まれる剣。前に見た魔力結界みたいなヤツか?アイツが魔族なら効果ありだ。さすがスネ夫、抜け目ないぜ。

ネオンも片手に術を展開させながら警戒している、対人戦なんてネオンには経験してほしくなかったけど、自身の防御をやってくれるなら、こっちは向かってくるヤツだけに集中出来る。


「お?やっぱり兄さんには視えてるみたいだな。まぁこれで魔眼使いは確定案件か。。んでももう一人が居ないのか?」


「おい、お前。それ以上コッチには来るんじゃねぇぞ。」


「やっとこさ口聞いてくれたと思ったら突き放しかい?勘弁してくれねぇか?さっきも言ったけど、めんどくせぇの嫌いなんだよ俺。」


そう言いながらローブからわざと見せる右腕。

明らかに何かしらの術を放とうとしているが、纏っている白いエナの光に変化は無い…


と思っていた時だった。



シュバッ!!



っと風を切る音と共にカレンが俺の前に立ち、剣を横薙ぎに振るう…カレンが斬り裂いたとされる岩の塊がゴトリと音を立てながら地面に転がる…。



「ちっ、なんだよ…… 水聖や、クラリス以外にも厄介なのが居るじゃねぇか。」


「ユウちゃん、油断しないでね。」


「なっ…今何が…」


急に俺の前に立ちヤツの何かしらの術を防いだようにも見えるカレン。

だが問題はそこじゃない…。

あの男…白いエナの光を纏わせたまま、他の術を展開させやがった。しかも、俺の眼に岩を撃ち出すようなエナの流れが視えなかった。

俺やマナには視る事の出来るエナの光、それは大体の人がそうだったのだが、基本的に使うのは1種類ずつだ、旅の道中ネオンに練習してもらっていたけど、同時発動は相当キツイみたいだ。。けどアイツ、表情に全く変化が無い…同時発動は当たり前って感じか…


「カレン…すまねぇ助かった。

ネオン!気を付けろ、ヤツは術を同時発動してくる、相当手練だ。」

「え、うん、分かった!」


ギュッと拳を握りながら、ネオンもエナの光をその手に宿し始める。

あの色は風の術、この方向ならヤツのところに行き着くまでには相当な大きさになるはず…遠距離では最高に使えるぜ。



「さぁて、剣神(あっち)が水聖を抑えてるうちに、コッチもサクッと片付けなきゃな。」


白いエナを身体に纏ったまま、片手を此方に向ける男。

先程とは違い注意して視ると、片手からはボンヤリと空間が歪むように透明色の僅かな光が集まりつつある。


今度は視えている。けど、やっぱりコイツ術を同時に発動出来るのか…厄介な事しやがる。

カレンにネオン、そしてスネ夫、この3人相手に勝負になる奴なんて居ると思わなかったぜ…くそ。


いや、まてよ、白いエナの光って確か…


「3人共!ヤツの手に警戒してくれ!術が来るぞ!!!」


俺の言葉を合図に、

スネ夫はサイドからぐるりと回り込み、男の真横から剣を振り下ろす。

カレンは俺達を庇うように前に出ながら剣を構える。


「へっ!いくら視えてても、それじゃぁ遅ぇよ。。」


そう聞こえた瞬間、

ボンッと炸裂音の様な衝撃と共にカレンが剣の腹で衝撃を受け止める素振り。

そしてスネ夫は持っていた剣を縦に振り下ろし、見えない何かしらを斬ったような動きを見せる。


そんな光景に驚くように男は口を開く…


「おっと、、、これでも効かねぇのか…

ったく、嬢ちゃんといい、そっちの兄さんといい、全く持ってめんどくせぇな。」

「よそ見は危ないよ。」


シュンっと、男に近寄り剣を振るうカレン。


「うわっ!っと!っ!」


危なげにカレンの一閃を躱しながら距離を取る男。

あの男の様子を見る限り、今ヤツが放った術はカレンとスネ夫、二人共回避したようにも思える…。

というかしっかり防いだんだよな、多分。

てか、こんなスパンで術攻めなんてされてたら埒が明かない…何か良い方法があれば…


そんな俺の思惑を払拭するようにネオンが見せたその姿、いやその光景…


「ユウ…」


「ネオン…それって…。」

「これならなんとかって、頑張ってみた。」


右手には風を集めるエナの光。

左手に重力操作のエナの光。

俺のよく知る最強コンボだ。


どっちかを囮に使っても良し、重力操作の術は範囲が広いから、直ぐには発動出来ないけど、あの男一人なら上手いこと引き付けられそうだ。

けど、ヤツの未だに消えていない、白いエナの光…それだけが気になるところではあるんだが…いや、そんな事言ってられない、今はこの場をなんとか凌がないと…



「よし…ネオン!カレンとスネ夫に上手いこと伝えてくるから、ちょっと待っててくれ!」

「うん!こっちは、いつでも大丈夫!準備出来たら教えてね。」

「任せろ!」


そう言いながら、術士の男の横に居るスネ夫へと足を運び直様ネオンの攻撃サインを男に聞こえないように小声で伝える。

カレンがヤツを足止めしていてくれている今がチャンス。


「(スネ夫…ネオンの術の準備が完了した、頃合いを見てヤツから離れてくれ)」

「(了解、ってかなんだよあの野郎、ボンズはシグマとか言ってたけどマジなのか?)」

「(冗談でも言って良い事と、悪い事くらい弁えてるよ。それよりも大丈夫そうか?今から放つネオンの重力の術は、かなり広範囲だぜ?本来ならこんな町中でぶっ放すのは気乗りしないんだけど…。)」

「(ヒャハ、シグマ相手に容赦ねぇなぁ、俺もペシャンコにはなりたくねぇ、適当に避難させてもらうぜ!)」


それだけ言い終わると、カレンの横に立ちボソボソっとなにかを伝えて、攻撃範囲から離脱するスネ夫。たが遠距離からはしっかり男に狙いを付けている辺り評価は高いな。



「ん?何か企んでんのか?まぁ、好きにやってみな。正直そっちの混血の魔女には興味があるんだ。あんまりガッカリさせるような事やってくれんなよ?」


余裕の表情…恐れてないのか?いや、ネオンの術を直接見たこと無いってのが、あの慢心だろう。

ならば、身を以て味わってもらうしかないな…。。



「(ネオン!タイミングだけ見極めて決めに行こう!)」

「うん!いつでもいけるよ!」



カミノの街でシグマとの遭遇。

タカユキめ、、あの野郎…どうあっても俺達を逃す気は無いって事かよ…。

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