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第二話 学ぶ




屋敷の一部のメイドたちが私を『旦那様の子ではないのでは』と言い出したのだ。しかもそれに便乗して、『奥様と男性のご友人が同じ部屋へ入られていくのを見た』という捏造証言まで飛び出す始末。お母様には男友達が多い分、かなりたちの悪い捏造証言だったみたいだ。


そのような話も飛び交いながら、噂はどんどん広まっていった。ついにはメイドたちの噂話がお母様の耳に入ってしまった。お母様は大層ショックを受けて塞ぎ込んでしまったらしい。しかしお父様はその噂話に関して無言を貫いていた。耳にしたはずなのに何も言わないのだ。


だが、根も葉もない証言をしていたメイドとそれを面白がってわざと話を大きくしていたメイドたちは全員辞めさせられた。お父様は何も言わないかわりに、その噂話の始末をしたようだ。もちろん、お父様は捏造証言したメイドから、嘘だったとの自白も取り事態は収束を迎えた。


のだが。

辞めさせられたメイドたちの替わりに入ってきた新米のメイドたちはそのことをどこかで知ったらしく、階段の前でひそひそ話していた。まぁ、お母様の悪口は含まれていなかったし、どちらかというと『奥様さま可哀想』というような内容だったので、新米のメイドたちには悪気はないと思う。


私が陰で聞いていた、ということも知らなかったわけだし。知ってたら全力で隠すんだろうな。


さて。そんな感じでお母様は大好きなお父様に嫌われてしまったと思っているようで、その原因である私のことが大層、憎いらしい。

あの噂話が飛び出す前まですごく優しかったはずが…それはもう溺愛と言っても過言ではないくらいに優しかったはずが。今では口も聞いてもらえない。死にそう。


ていうか。黒目黒髪なのは多分、私のせいなんだよね。前の人生が影響してると思うんだ。お母様のせいじゃないのは分かりきってる。あのお母様に浮気なんて無理だろうし。けど…顔は違うのに髪色と瞳だけ変わっていないというのも変な話だよねぇ。


あー。どうでもいいからお母様と仲直りしたい。こう見えても私、甘えたい年頃なんだぞ。精神年齢18だけど、お母様とキャッキャウフフしたいんだぞ。…あれ?表現がおかしい?

まぁ、いいか。

んで。この問題の要はどう考えても、お父様なんだよね。火のないところに煙はたたないっていうけど、この噂話が出てきた時、たまに屋敷を訪問するお母様の男友達が捏造証言に使われた。


…そう。この時点でお父様は、否定すべきだったんだ。あの噂を。なぜなら、お母様の男友達は大抵お父様との共通の友人であることが多い。そんであらかたはお父様に宛てたご用事でいらっしゃるのだ。その時点であり得ないって分かったはず。噂話が出た瞬間に否定することができたはず。

なのにお父様は、何も言わなかった。


それだけじゃない。お父様は、噂話の始末をつけた後、きちんとお母様と話し合うことが大事だったんだ。領の管理に忙しいとお母様を放っておいたりせず、話し合って、お母様の口から否定の言葉を聞き、お父様の口からも愛の言葉を囁くべきだった。夫婦のわだかまりを引き延ばすことなど無いように。


それをしなかった結果、お母様に嫌われたと勘違いされて逃げられるのだ馬鹿。とばっちりを受けている私の身にもなれ鈍感親父!


と、まぁ大体こんな感じで私は最近、鈍感お父様と勘違いお母様の夫婦喧嘩に巻き込まれている。私の髪色と瞳だけが原因というわけでもないので、放置だ。放置。お母様に逃げられていると分かっているのにお部屋を訪問することもできないお父様なんて知るか。






少々ふてくされた態度で、誰も居ない書庫を歩き回る。ここは先代のレンベル公爵、つまりお父様のお父様が集めていた本が並べられている。その量はかなりのもので、数えたことはないが二万冊はあるんじゃないだろうか。そのせいでここの書庫はとても広く、図書館と言っても差し支えがないレベルだ。二階まである書庫ってどうなんだろう。つくづく個人の所有であるのが勿体ない。まぁけど、一般解放なんかしたら、それこそ管理が大変だろうな。まずここの本の把握から始めなきゃだもん。これを一代で集めたお祖父様は、結構な本好きだったみたいだ。


そんなことを考えていたシェナローゼの中からは両親の夫婦喧嘩のことなど完璧に追い出されていた。シェナローゼは最近読み進めている本を手に取ると日が当たる気持ちのよい椅子に腰を下ろした。


あぁ、午前中からする読書って、なんって楽しいんだろう。超贅沢。かくいう私もかなりの本好きだと自負している。こういうところはお祖父様の血を感じるな。まぁ、前の人生からだけど。開いた本の題名は『アスティラ国について』である。


赤ん坊からおじさんと言われショックを受けていたお医者さんの検診から、私は決心した。この世界で、誰にも不気味がられず怪しまれず平和的に生き抜いてせめて一人で生きられるまで絶対捨てられることにならないように生きていく決心を。


0歳と6ヶ月と3日の私は、まずこの世界について知ることから始めた。13くらいになったら自給自足ができるようになってるかもしれないし。そのためには知識が必要だと思った。


屋敷に書庫ならぬ図書館があると知った私は屋敷をはいはいで徘徊して書庫を探したけれど、見事迷子になった。食堂の前で半べそかいてた私を大慌てで見つけた私の乳母、メランダは大層お怒りになったご様子で笑顔なのに目が笑っていないという0歳児にする説教ではないお叱りを頂いた。この時期からメランダの黒さを垣間見ていた。メランダ恐ろしい。がたがた。


ま、だけどメランダは本当に私のことを心配してくれていたみたいで、私が書庫に行きたかったのだと伝えると『では次回からは私に言いつけて下さいまし。私もご一緒いたしますから。いいですね?』と有無を言わせない笑顔で迫られた。『お嬢様に何かあったら私はお嬢様のお側にいられなくなってしまいます。私はお嬢様を立派なレディに育てるまで、お嬢様のお側を離れるつもりはございませんからね』と言われてしまえばノーとは言えないのだけれど。メランダ、隠れツンデレ。萌え萌え。はっ。まさかメランダが部屋から書庫まで私を歩かせてくれないのはこの事のせい?やだどうしよう。過保護なだけだと思ってたのに。


と、いかん。話が逸れた。メランダについてはまた今度考えよう。

今はこの世界についてだ。


私は膝の上の本に目を落とすと、『アスティラ』という文字を指でなぞった。ちなみに文字は一歳の時独学で覚えた。日本みたいにみっつもあるわけじゃないし、規則性を見つけられたらあとは簡単だったね。どや。嘘ですごめんなさい、メランダにさりげなく教えて貰いました。多分メランダは私が理解できていると思ってないけど。


…ごほん。私がいるのはアスティラ国というらしい。

二百年前の戦争で勝利を納め、そこから素晴らしい勢いで経済発展を遂げ、最近では世界でもトップを誇る商業国として有名だ。そして何より驚いたのが、この世界には魔術や魔法が存在するのだ。ついでにいうと、魔物や妖精、天使なんかもいるらしい。


いっやあ、感動したね。なんってファンタジーなんだと。初めてこの世界に生まれてきて良かったとも思った。

そんな現金な私は早速、魔法について調べた。

まず、魔法と魔術の違いから。

魔法とは、法則から成り立つもの。

魔力を体内の一点に集め、詠唱をして魔力を他の物質に変換させてから、放出するもの。詠唱には、魔力を他の物質に変えるための順番と手順とを命令する言霊が宿っている。言霊はある命令された動作しか行動できないため、それには全て法則がある。詠唱は魔力を扱うための重要なものであり、言霊もこれに準ずる。生まれつき、言霊に嫌われているものは魔力を扱うことが出来ない。

つまり言霊に命令して人間が超越した力を使うのが魔法だ。


次に魔術とは、言霊を命令するための法則を作る術である。この術に『魔』がついているのはもちろん、魔力を使うからだ。しかし、言霊の法則を作るために言霊に命令をするのは無理がある。言霊はその法則の範囲内でしか行動することができないのだから。では魔術とはどのように行うのか。…ざっくり言えば何もしないのである。というかもう、魔術が使えるかどうかは生まれつきの才能による。最初から100を持っている人間と、どれだけ努力しても0以上は持てない人間。

魔術とはつまるところ、選ばれた人間にしか使うことができない。言霊に異常に好かれたものだけが、扱うことができるのだ。法則を作る言霊は意思を持っており、自らの考えだけで動く。要は勝手に魔法を作ってくれる。超便利な自動魔法製造機。源力は術者の魔力だけ。

これが魔術の正体だ。









説明文っぽくなってしまいました。泣


矛盾点などがあれば、ご教授下さい。

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