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傾国の魔女  作者: ikhisa
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傾国の魔女-1

傾国の魔女-1


900年を生きる人魚ミレリアによって作られた「魔術」によって発展してきた帝国は、大きな転機を迎えつつあった。帝国が拡大してきたのは、魔術による国力の増強と、魔術を取引材料とした同盟国の増加が要因であった。しかし魔術が広まるにつれ、相対的に帝国の重要性が低下し始めるようになってきたのだ。成長を止めた帝国からは、以前はあった活気が徐々に無くなってきた。今まではあった余裕が、どこかなくなってきたのだ。


これによって、一時は鳴りを潜めていた、ドラゴン族による帝国領への侵攻が再び活発化している。彼らドラゴン族にとっての侵攻とは、獣が獲物を狩るようなもので、手強い獲物であれば積極的には狙わない。しかし、帝国の弱体化の影響によって現れた、脆弱になりつつある帝国の部位を齧り取るように、侵攻してくるようになった。


帝国はドラゴン族たちからの侵攻を防ぐために、帝国軍を派遣するが、以前ほどの軍事力を展開することが出来ない。各地の貴族たちは、より自身の私兵を強化する。また帝国内の有力な貴族たちが、その私兵を率いて、帝国領の防衛にあたることになった。魔術機関を統括し、有力な貴族であるミレリアもまた、本来の職務を超えて、彼女の実行部隊「不死隊」を率いて各地を転戦するようになった。彼女自身が有能な魔術師であり、戦闘においても無敗を誇る彼らは、帝国最強として高名になりつつあった。


・・・・


帝国周辺部のある城塞で、帝国軍幹部と複数の貴族との間での会議が行われていた。ミレリアも参加している。会議の進行役が言った。

「今回のドラゴンとの戦いでは、ウロボロスと呼ばれる、ドラゴンの中でも高名なものが参加してくるようです」

この地域で何度か戦っている者たちは、ウロボロスのことを知っていた。アイツが来るのか・・・と。

この地に来たばかりのミレリアが発言をする。

「いったい、どのようなドラゴンなのでしょうか?」

ウロボロスを知る者がそれに答える。

「奴はこの辺り一帯で最も強力なドラゴンです。他者に従わないドラゴンどもを取りまとめることが出来る、ドラゴンの王と呼ばれています」

進行役がその言葉を引き継いで、続ける。

「はい。そこで、この中でどなたがウロボロスへ対応するのか?を決めたいと思います」

それを聞いて、皆は腕組みをして考える素振りを見せ始めた。強力なドラゴンは、強力な魔法弾で易々とこちらの防御を貫通する。その損害を誰もが恐れていた。帝国軍にはあまり予算が無いし、貴族たちも自分の持ち出しである私兵に損害を出したくない。すでに功を競って、皆が争うような時代ではないのだ。

貴族の一人が発言をした。

「やはりここは・・・ミレリア様の不死隊に対応していただくのが一番良いのではないでしょうか?」

皆がそれに賛同し始めた。ウロボロスの強力な攻撃を、最小の損害で抑えられそうなのはミレリアだけなので、それが最適解であることは明らかではあった。皆がミレリアに注目した。

ミレリアがため息をついて、それに答えた。

「・・・そうですね。それが・・・一番よいのでしょう」


・・・・


「また貧乏くじを引かされましたね、ミレリア様。より一層、名が上がりますな」

ミレリアの隣を歩く白い狼のような風貌をした獣人の騎士が、少し皮肉を込めてミレリアに言った。彼の名はオルドン。この時代の「不死隊」の総隊長である。ミレリアが戦場で高名になったのは、強敵の対処を任されること多いためでもある。彼はそれを皮肉っていた。

「・・・仕方がないのでしょう。実際にそれが、一番良いのですから・・・」

ミレリアも少し疲れたように言った。転戦の先で神経をすり減らすような強敵との戦いが続く。彼女は、自身から、以前はあった余裕が、なくなりつつあることを感じていた。



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