いつかの別れと男装女子。
結局、すっかり寝てしまったようで‥、ふと目を開けて顔を横に向けると、部屋のテーブルを囲んでロアン君とベルキスさんが何か話していた。
やばい!!帰ってきてたのにすっかり寝ちゃった!!
慌ててソファから体を起こすと、私に気付いたベルキスさんがちょっと可笑しそうに笑う。
「べ、ベルキスさんお帰りなさい!」
「‥ただいま。疲れは取れたか?」
「すみません!お陰様で‥」
目を擦りつつベルキスさんのいるテーブルの方へ慌てて歩いて行くと、ロアン君がちょっと眉を下げる。
「それはそうですよ〜〜。ずっと今日は竜の巣を歩き回ってたんですから」
ロアン君にそう言って貰えるとちょっと気が楽にはなるけど、お仕事している身としてはまずいかも?
そんな私にベルキスさんは自分の横の椅子を引いてくれて、私はそこに座らせてもらう。うん、やっぱり側にいると安心できるわ。そうしてベルキスさんは私が座ったのを見てから、ロアン君に胸元からハンカチに包んだ植物をいくつかテーブルの上に広げる。
「今回の新しい竜の巣の周りに自生していた植物だ」
「ああ、なるほど‥。竜の巣があったのに魔物の出現情報が少なかったのはやはりこの植物があったからですね」
ロアン君の言葉に私もテーブルに広げられている植物を見ると、さっき部屋に植えられていた植物と同じ物がある!私がロアン君を見ると、にっこり笑って‥、
「ね。同じですよね?竜って安全な場所じゃないと竜の巣を作らないんです。今回新しく見つかった竜の巣の周りには、これが大量に自生していて、なおかつ水も豊富な場所だった‥からでしょう。今後の竜の巣を発見する一つの目安にもなりますね」
「す、すごい‥」
驚いてロアン君を見ると、ベルキスさんが面白そうに笑う。
「そうだろ。だから頼りにしてる」
「確かに‥、ロアン君も騎士の一員なんですね」
私がそう言うと、ロアン君はちょっと驚いた顔をしてから嬉しそうに微笑む。
ベルキスさんもなんだか小さく微笑む。
「俺はフィクトルにこの事を報告してくる。ミヒロは夕飯を食べたら家に送る」
「え、ベルキスさんは?」
「俺は明日は新しい竜の巣をアーデル殿に案内するので打ち合わせだ」
「明日は新しい竜の巣に行くんですね」
「ああ、ミヒロはこっちをラスカと回ってくれ」
お、それなら安心だ。
私が笑顔で頷くと、ベルキスさんはなんとも言えない顔になる。ど、どうした?
「ベルキスさん?」
「明日は時間内に出てきてくれ」
「あ!そ、そうだった!今日は心配かけてすみません!」
「‥無事で良かった」
ベルキスさんがちょっと眉を下げつつ微笑むんだけど、うっかり格好いいのでときめいてしまいそうになる‥。そんな事を言われると本当に勘違いしそうになるんだけど、今の私は「男」!!「友人」として心配してくれているんだ!そこんとこ間違えるんじゃないぞ!!
自分に喝を入れてから、小さく頷き‥、
「明日はちゃんと調査して、時間通りに戻りますね!!‥頼りないかもしれませんけど、いずれは一人でも出来るようにしたいし」
だって私はいずれベルキスさんから自立をするんだ。
今は「男」として結婚して「友人」として付き合ってくれているけど、私は一人でこの世界を生きていかないといけない。ベルキスさんを見上げると、ちょっと苦しそうな顔を一瞬してから、私の頭をわしゃっと撫でる。
「‥なんでも抱えようとするな。ゆっくりでいい」
「‥はい‥」
ベルキスさんは私の返事に小さく笑ってくれたけど、その微笑みがどこか寂しそうで‥。胸の奥がチクっと痛むけれど、いつかは離れるんだ。この優しい人から‥。
そう思うと、ここにいられたら一番いいけど、それだと別れた後にベルキスさんが悪く言われちゃうかもしれないし‥。難しいよなぁ。どこか新しい職場を斡旋して貰わないとなぁなんて思いつつ、未だチクチクと痛む胸をそっと押さえた。




