睨む男装女子。
ドタバタなパーティーから1週間。
最初はアーデルさんが私の事をバラしたらどうしよう‥と、ちょっと緊張していたけれど、いざとなったら「メイクしてたから間違えちゃったんですね!!!」って言えばいいや!と、思う事にした。
けど、あれから何もなかったので、きっと大丈夫‥なのだろう。
私はホッと胸を撫で下ろした。
ここ最近は午前中竜の巣にベルキスさんと一緒に回って、午後は聖竜騎士団が来るので準備を手伝うようになった。今日もロアン君と一緒に書類を整理したり、備品をチェックする事になったけど、‥まぁ、それをベルキスさんは大分心配している訳で‥。
毎回、朝出かける度に「鍵は持ったか?」とか「キノと行け」とか「何かあればすぐ俺を呼べ」とか言ってくる。
これはロアン君よりも年下に見られている可能性があるのでは?
私は大人やぞ?あと一応「男」として生活してるからね?
ベルキスさん普段は「男」として扱ってるのに、時々忘れている時あるよなぁ〜〜。大丈夫かいな契約者‥。
二人で備品が入った木箱を抱えつつ、フィクトルさんのいる仕事部屋へ歩いていきながらそんな話をロアン君にすると
「本当にミヒロさんはベルキスさんに大事にされているんですねぇ」
って言われたけど、どちらかというと、子供扱いの方が正しい気もする。
首元に巻きついているキノに同意を求めたけど、熟睡してる。器用だな。
「もうちょっと信用して貰えるといいんですけどね‥」
せっかく結婚したのに、パートナーとしても頼りないのも切ない‥。
パーティーでも「まだチャンスある!」なんて思われてたし。
いや!せめて別れるまではしっかり仕事しなきゃ!
まずはこれ以上、迷惑をかけない!
自分の事は自分で!だ。
「‥ミヒロさん、百面相してますけど大丈夫ですか?」
「あ!!だ、大丈夫です」
「ミヒロさん、一人で抱え込まないでちゃんとベルキスさんに相談して下さいね」
「‥ロアン君、本当に10歳?」
「もちろんです!あ、そういえばそろそろ給与日ですね」
「あ、そうなの?!」
給与が貰える!
って事は、ベルキスさんにお世話になっていた身としては、お金も返せるし、お礼をする事もできる!!そうだ、まずはそれをしよう。
「ロアン君、給与を貰ったら早速相談したいんだけど‥」
「え?!僕にですか?」
「‥ベルキスさんには、その出来れば内緒で‥」
そう言いかけると、
「ミヒロ」
ベルキスさんの声が後ろから聞こえて、体が跳ねそうになる。
び、びっくりした〜〜!!
壁に耳あり、障子にベルキスさんか!!
後ろを振り返ると、ベルキスさんがこちらへ歩いてくるなり、私とロアン君の荷物をサッと持ってくれた。
「‥こんな重いの騎士達に頼めばいいだろう。力ならあり余ってるぞ」
「流石に訓練中の騎士さんに頼めませんよ」
「そうそう。それにベルキスさんが騎士に頼るミヒロさんを見て心配するかもって思っての行動ですよ?」
ロアン君がにこーっと私に笑いかけるけど‥、え、そうくる?
ベルキスさんを見上げると、複雑な顔でロアン君を見ている‥。そうだよね〜〜。私とベルキスさんはあくまで「契約結婚」であって、しかも「男」だし、「友人」だから。
そんな相手を溺愛してるとか思われてたら、ちょっと嫌‥だよね。
自分でそう思った途端、胸の奥がちょっと痛む。‥いや、これは乙女心の誤作動であろう。うん、そうだ。それよりもさっきの内緒で相談しようとしてた会話聞かれてないかな?
そっとベルキスさんの横顔を見上げると、ぱちっとベルキスさんと目が合う。
な、なんで、こっち見てたの?あれ?いつから??
「どうした?ミヒロ?」
「い、い、いいえ!!なんでもございません!!」
「そうか。で、内緒でなんだって?」
「やっぱり聞いてた!!!内緒です!内緒!!」
「結婚した仲で秘密は良くないぞ」
「そ、そういうの今、言っちゃうのはどうかと思います!!」
じとっと睨んでベルキスさんに文句を言うと、ロアン君が遠くを見つめながら、
「も〜〜、この夫婦は本当にすぐイチャつく‥」
って言うけど!!違うの!!違うってば!!
これはいつもの会話であって、決していちゃついてないし、そもそも「契約関係」なんだよ‥。「男」の私はニヤニヤ笑うベルキスさんを見上げて、
「本当に一回くらい竜に叩かれますよ?」
って言っておいた。ちょっと私の首に巻きついているキノ!君でもいいんだぞ?




