パーティー終了?!男装女子。
いきなり音楽を流せ!というレイノル様に、心の準備が何もない私は大いに慌てたが、ひとまずお辞儀をしてレイノル様の腰に手を回して、踊り出した。私、1ヶ月前はただの学生だよ?偉くない??
クラシックのような音楽が流れてきて、ロアン君がいつも流してくれる音楽と違うけど、テンポは一緒なので内心ホッとして、ステップを踏む。
「‥意外と上手なのね、ミヒロ」
「それはもう練習しましたから‥」
ちょっと意外そうな顔をするレイノル様に、小声でそう話すと嬉しそうに微笑む。
「練習してくれたなんて、偉いわね!」
「お褒め頂き、光栄です」
「でも、後ろにいるベルキスの視線は頂けないわ」
「へ?」
レイノル様が上手にクルッとステップを踏んで、ベルキスさんの方を見られるようにしてくれて‥、ベルキスさんを見ると、無表情のままだ。お、怒ってる???
「え、えーと‥」
「ベルキスってば、随分と心が狭いと思わない?」
いやぁ〜‥、あの朝の襲撃がなければ、もう少し穏やかだったかも?
そう思っても言わないけど‥。
「ミヒロ、もう少し余裕を持つように言っておいて頂戴ね」
「承知しました」
私の返事にレイノル様は満足そうに頷いてから、わざとベルキスさんの方へにまーっと笑う。‥うーん、まったくこの人は‥。
音楽がそろそろ終わりそうになって、レイノル様はちょっと残念そうに私を見上げる。
「あ〜あ、楽しい時間ってどうしてこう早く終わっちゃうのかしら」
「‥楽しかったですか?」
「そうよ!み、ミヒロは好きだし?」
照れ臭そうな顔で言われると、この世界に来てそんな風に言って貰えて嬉しい反面、私はなぁ‥女なんだよね。と、泣きそうな気持ちにもなる。乙女心なんて、場末の酒場でくだ巻いちゃってるよ?
「‥お気持ちは嬉しいのですが‥」
「分かってるわよ!まったく似た者同士ね」
似た者同士‥。
思わずベルキスさんに目を向けると、ぱちっと目が合う。
まさかの勢いで結婚しちゃったけど、似てるのかな?いや、それはないなぁ〜〜。あっちは強くて、他の騎士さん達や竜達に好かれてて、仕事もしっかりしていて、かたや私は身一つでこの世界にきて現在「男」として生きてる。改めて考えると、ものすっごい複雑だな!?私。
そんな泣き出したいような気持ちの私をレイノル様は見上げて、
「ミヒロ、仕事気をつけてね」
「はい、ありがとうございます」
「何かあれば全部、ベルキスに押し付けなさい」
「い、いや、これ以上はもう‥」
「いいのよ!あの男の事だもの。ミヒロのは喜んで引き受けるわよ!」
い、言い切ったよ‥。
でも、それも結婚している間だけだと思うけどね。
私は曖昧に笑うと、レイノル様は「本当心配だわ!」って言うけど‥。なんだかんだいって、優しいなぁ。ほんわか和んでいると、音楽がもう終盤だ。
ステップを踏んで、レイノル様がふわっと本当に妖精のように回転して、音が止んだと同時に終わりのお辞儀をするので、私もお辞儀するとワッと周囲から拍手が起きた。
えーと、これってもしかして成功?
ホッとしつつレイノル様を騎士さん達の方へエスコートしようとすると、アーデルさんがこちらへ歩いてくる姿を見て、ドキリと心臓が跳ねた。
な、なんで、ここに〜〜〜??!!!
内心、もうドキドキとヒヤヒヤが山盛りてんこ盛りだが、なんとか顔に出さないようにしていると、レイノル様はアーデルさんを見るなり、手を差し出して‥、
「はぁ‥、次はアーデルなのね」
「はい。どうぞよろしくお願い致します」
ニコニコと笑うアーデルさんは、ちょっと意味有り気に私にウインクしたかと思うと、レイノル様の手を取って、ダンスしていた中央へ二人で向かっていった‥。
えーと、これは‥無事終わったって事でいいのか?
私はちょっとぽかんとして立っていると、すぐにベルキスさんが側にやってきて‥、
「お疲れ。無事終わったな」
小さく微笑んでそう話してくれた途端、足の力が抜けそうになって、慌ててベルキスさんの腕を掴んだ。
「す、す、すみません‥。今になって緊張が‥」
「そうらしいな」
いかん!迷惑をかけまいと思った矢先にこれじゃダメだ!!
なんとか足を踏ん張ろうとすると、ベルキスさんはそんな私をひょいっと縦に抱き上げた。そんな私達を見た周囲の人達のざわめきに、私は更に目を白黒させる。
「べ、ベルキスさん????!!!!」
「もう終わったんだ。大丈夫だろ。さ、帰るぞ」
「え、え、もういいんですか?」
「ダンスは踊ったし、挨拶もした。もう十分だ」
スタスタと私を抱き上げたまま歩くベルキスさんと、中央で踊っているレイノル様を見ると、レイノル様が面白そうに笑って、踊りつつ手を振っていて‥、私はもういっぱいいっぱいで会釈しかできなかった‥。




