ラスカさんと竜の巣、男装女子。
ベルキスさんから、もう着られなくなった少し小さめという隊服を借りて、私とキノはベルキスさんの黒い竜のディーによって竜の巣まで直行で向かう。
「歩いても10分なのに‥」
「何か言ったか?」
「いえ、良いんですか?ディーをこんな風に使っちゃって‥」
「竜に乗って出勤も楽しいぞ?」
それはベルキスさんとか、竜騎士の皆さんだけかな〜〜。
私はいくら竜の鞍に乗せてもらっても、やっぱりちょっと怖い。
あっという間に竜の巣の前に着いて、ディーがゆっくり地面に降りてくれた。君も本当にいい子だなぁ〜。触るのはすっかり慣れたので、「ありがとう〜」とお礼を言って鼻の頭を撫でると、「キュウウ」と嬉しそうに鳴くので堪らない。
すかさずその隙間にキノが入り込んで、自分も撫でろ!と、手の平にグリグリと小さい頭を押し付けてくるので、そっちも撫でた。どちらも可愛い。
「ベルキスさん、はよーございます!」
竜の巣の門番と話していたラスカさんがこちらへ駆け寄ってくる。
と、隊服姿の私を見て、
「‥一丁前に隊服着てる」
「借りたんだ〜。ベルキスさんには小さいって言われたけど、まだ大きいね」
「お前19なんだろ?その年で、その背は絶望的だな‥」
「あのねぇ、人間は体の大きさは関係ないから」
哀れみの目でこちらを見るな。
こちとら実は女性で、私の国では標準的な身長なんじゃい!私の乙女心はそんな事を言われたくらいではへこたれないんだからな!
ベルキスさんはそんな私の頭をわしゃっと撫でる。
「‥ラスカ、ミヒロを頼むぞ」
「‥うっす」
ラスカさんはちょっと緊張した顔で返事するけど、な、なんでそんな緊張してるの?今日は何かあるのか?思わず不安な顔になってしまうと、ベルキスさんが私の頭を大きな手でポンポンと叩く。
「さっきも言ったが無理はしないように」
「は、はい」
「何かあればすぐ引き返す」
「はい」
「鍵は常に手に握ってろ」
「‥えーと、はい」
もしかして、ベルキスさん心配してる?
ちょっと心配そうな顔をするベルキスさんに安心してもらうべく、「任せて下さい!!」って笑顔で言ったけど、複雑な顔をされた‥。うーん、一体どんな顔をすれば安心して貰えるのだろうか‥。
「何かあればキノやラスカに言うように」
「‥ベルキスさん、私はこれでも19歳の成人ですよ?」
なんか子供へ「水筒持った?」「ハンカチ持った?」みたいなノリになってるぞ?私がジトッと見上げると、ベルキスさんはようやく小さく微笑んだ。
「そうだな‥。気をつけてな」
「はい、ベルキスさんも気をつけて下さいね」
手を振ると、ベルキスさんはチラチラと私の方を振り返りつつディーの背中に乗った。‥心配しすぎでは?ベルキスさんとディーと、他の竜に乗った騎士さん達が空の上で合流すると、あっという間に空の向こうへと飛んでいってしまった。
ラスカさんはそんな私とベルキスさんを交互に見て、
「‥すげー過保護だな」
「ちょっと思った」
「いや、ちょっとじゃないからな?」
「そうかなぁ?」
「ちょっとは意識してやってくれ。3週間も一緒なのはすげーんだぞ?」
そうなの?
単に都合がつかないのかと思ってた。
あと私が何かやらかすんじゃないかと思ってただけのような気もする。
「ベルキスさん、何の仕事だったんだろ?」
私がポツリと呟くと、ラスカさんが空を飛んでいくディーを見つめつつ、
「新しい竜の巣の確認だとさ」
「え?新しい竜の巣?」
「もともと国で把握してるのは3つあって、ここと、王都に近い所にあるツィアと、南に位置するリディって所にある」
3つもあるんだ!
驚いてラスカさんを見上げると、ラスカさんはニマッと笑う。
「そこに新しい竜の巣があるかもって、情報がそこいらに住む近隣の住民から来たんで調査に行ったんだよ!しかもいつもは下っ端くらいにしか見られてない竜騎士団にさ、調査に行って欲しいって国から伝達が来たんだ!」
あ、なるほど。
結構大事な調査を任されたのがラスカさんにとっては嬉しいのか。本当、ベルキスさん好きだな〜。
「そっか‥、じゃあ、私達は私達で頑張るか」
「まぁ、そーだな!おし、じゃあ行くぞ」
「はーい」
まぁ、いつもの竜の巣のチェックだし‥。
そう思ってキノとラスカさん、私で竜の巣へ入っていった。
竜の巣があったら、ベルキスさんどんな反応するのかな〜とか、どんな所だったか話を聞けるかなってちょっと楽しみにしつつ。
ラスカさん「毎回思うけど、ミヒロ小さいよな?栄養足りなかったのか?」
って毎回思って、毎回食堂で見かけると高カロリーおかずをトレイに
そっと乗せていくので、押し売りって呼ばれる‥(不憫)




