2-56 あの人に伝えて貰える~~?
「……お帰りなさい」
「おうよ、滅茶苦茶大変だったわ」
ヴェラが、クルト、ジギタリス、ネモフィラと戦っていたアマリネとビデンスを連れて『現在の拠点』へと戻ると、女が出迎えた。
何の感情も映さない冷めた瞳に、平坦な声。まるで感情の一切が抜け落ちているようだ。
「シャワーを浴びたいわ」
「そうね。土まみれで気持ちが悪い」
「あぁ、お先にどうぞ」
「……ふん、当然じゃない」
アマリネとビデンスは、仲の悪そうな仲の良さを見せながら、すたすたとバスルームへと向かう。
「ヴェラ、結構つかれちゃったからぁ、あの人に伝えて貰える~~?」
「……うん」
表情の一切が変わらない女は、静かに頷いた。
「シュヴェルツェと遭遇したけど、帰ってきちゃった。ごめんね! 戦力的にこのメンバーじゃ不足だよ☆」
ヴェラの伝えてほしい事に、彼女は「うん」と静かに相槌を打つ。
「それとぉ、もう場所も追えなくなっちゃったけど~~~、アイゼア・カタストローフェが現れたんだって!」
「……そう。今から殺しに――」
「行っちゃダメだゾ☆」
出入り口へと向かおうとした女を、ヴェラはがっちりと掴んで阻止した。彼女はやはり感情の見えない顔で「どうして?」と静かに尋ねた。
「ヴィントホーゼで追えなくなったんだから~~~、無理だよぅ。だーって、もう居ないもん!」
「……今回は、諦める」
「うん、イイコイイコ☆」
掴んでいた手を離し、今度は頭を撫でてやる。基本的にこの女は、なすがままだ。
「ヴェラ達、みぃんなで仲間なんだし、協力して行こうね!」
「……うん」
こくり、と静かに頷く。
「打倒、現在の魔法使い制度と、シュヴェルツェ! えい、えい、おー!」
「……えい、えい、おー」
ヴェラが明るく手をあげると、女も真似て手をあげる。
「んじゃ、オレは休むから、伝えておいてくれよ」
「……わかった」
また静かに頷く。
ヴェラが「頼んだぜ」と言い残して、現在自分にあてがわれた部屋へと戻った。
女は暫く出入り口を見つめた後、結局踵を返し、伝えておくようにと言われた内容を復唱しながら、その相手の元へと向かったのだった。
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