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精術師と魔法使い  作者: 二ノ宮芝桜
第二章
105/228

2-56 あの人に伝えて貰える~~?

「……お帰りなさい」

「おうよ、滅茶苦茶大変だったわ」


 ヴェラが、クルト、ジギタリス、ネモフィラと戦っていたアマリネとビデンスを連れて『現在の拠点』へと戻ると、女が出迎えた。

 何の感情も映さない冷めた瞳に、平坦な声。まるで感情の一切が抜け落ちているようだ。


「シャワーを浴びたいわ」

「そうね。土まみれで気持ちが悪い」

「あぁ、お先にどうぞ」

「……ふん、当然じゃない」


 アマリネとビデンスは、仲の悪そうな仲の良さを見せながら、すたすたとバスルームへと向かう。


「ヴェラ、結構つかれちゃったからぁ、あの人に伝えて貰える~~?」

「……うん」


 表情の一切が変わらない女は、静かに頷いた。


「シュヴェルツェと遭遇したけど、帰ってきちゃった。ごめんね! 戦力的にこのメンバーじゃ不足だよ☆」


 ヴェラの伝えてほしい事に、彼女は「うん」と静かに相槌を打つ。


「それとぉ、もう場所も追えなくなっちゃったけど~~~、アイゼア・カタストローフェが現れたんだって!」

「……そう。今から殺しに――」

「行っちゃダメだゾ☆」


 出入り口へと向かおうとした女を、ヴェラはがっちりと掴んで阻止した。彼女はやはり感情の見えない顔で「どうして?」と静かに尋ねた。


「ヴィントホーゼで追えなくなったんだから~~~、無理だよぅ。だーって、もう居ないもん!」

「……今回は、諦める」

「うん、イイコイイコ☆」


 掴んでいた手を離し、今度は頭を撫でてやる。基本的にこの女は、なすがままだ。


「ヴェラ達、みぃんなで仲間なんだし、協力して行こうね!」

「……うん」


 こくり、と静かに頷く。


「打倒、現在の魔法使い制度と、シュヴェルツェ! えい、えい、おー!」

「……えい、えい、おー」


 ヴェラが明るく手をあげると、女も真似て手をあげる。


「んじゃ、オレは休むから、伝えておいてくれよ」

「……わかった」


 また静かに頷く。

 ヴェラが「頼んだぜ」と言い残して、現在自分にあてがわれた部屋へと戻った。

 女は暫く出入り口を見つめた後、結局踵を返し、伝えておくようにと言われた内容を復唱しながら、その相手の元へと向かったのだった。


   ***


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