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新皇帝即位の儀式

 その数日後、新皇帝即位の儀式が、あまねく諸侯列席のもと、厳かに行われた。これ以上重要な儀式はないということなので、不承不承、わたしもその末席に参加。具体的には、朝早くから、(その時点においては)リチャード「親王」が、諸侯を従えて宮殿を出発し、帝都郊外にある歴代皇帝の廟まで行進、そこで、初代皇帝を始めとする皇室の先祖代々の御霊に礼拝し、天命を受けるというもの。その際には、リチャード親王が幾種類ものアイテムを複雑な手順を踏んで使用し、天命が降りるのを待つという。なお、今回に限り、黄金のカエルの像、すなわちゴールデン・フロッグも、そのアイテムのひとつに組み込まれたらしい。

 実際に、リチャード親王が、歴代皇帝の廟に設けられたお立ち台みたいなものの上に立ち、アイテムを取っ替え引っ替え、大げさなジェスチャーを交えて様々な口上を述べると、たちまち空に黒い雲が垂れ込めてきた。そして、ぽつぽつと大粒の雨が降り出し、すぐに土砂降りに。のみならず、辺りにはゴロゴロと雷鳴がとどろき、まるで嵐のようになった。しかし、その嵐はほんの5分程度で治まり、低く垂れ込めていた雲の隙間からは、日の光が差し込む。やがて、雲の合間から大きな虹が顔をのぞかせ、出席した諸侯から「皇帝万歳!!!」の大合唱がわき起こり、これをもって、めでたく新皇帝誕生。キツネにつままれたような気がするけど、儀式は昔から、そのようなしきたりで行われているらしい。

 なお、こうもめまぐるしく天候が入れ替わるのは、当然ながら、自然の摂理ではなく、強力な魔法によるもの。魔法アカデミーの魔法使いを総動員して天候をコントロールしているとのこと。


 こうして儀式が終わり、屋敷でアンジェラとゆっくりとティータイムを楽しんでいると、

「無事に終了ですか。よかったです。何事もなければ、それに越したことはありません」

 パターソンは、ホッとしたように言った。実を言えば、新皇帝暗殺の話をガイウスやクラウディアに秘密裏に持ちかけていたけど、「皇帝を暗殺しても、現実には何も変わらないような気がする」ということだったので、今回は実行を思いとどまっていた。

「事件も不祥事もなかったわ。なんだか物足りないような…… でも、どうしてそんなことを?」

「いえ、別に…… 巷の噂ですが、トカゲ王国の国王が儀式に出席しないという話を聞きましてね」

 思い返してみると、確かに、トカゲ王国の国王は今回の儀式に出席していなかった。公式には、国内問題への対処のためとされていたので、「MIRV化された核弾頭のひとつかふたつが、狙いを大幅に外れて、リザードマンの領域に落っこちたのだろう」とばかりに思っていたけど……

 パターソンはわたしの耳に口を近づけ、

「トカゲ王国国王は、リチャード親王の即位に対して、かなりの不満を持っているという話ですよ」

 言われてみれば、リザードマンの領域で、国王から直接そんな話を聞かされたような……

 でも、今すぐにトカゲ王国が動き出すことはないだろう。それに、今のところ、心配していた放射能の影響も、わたしの体には出ていないようだ。ともあれ、無意味に長くなったこの話、とりあえず幕とすることにしよう。

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