どこか抜けてる人
白いローブに身を包んで表れたのは、魔法アカデミーのパーシュ=カーニス評議員だった。わたしが黄金のカエルの像の後ろから顔を出すと、評議員は足を止め、
「おやおや、誰かと思ったら、ウェルシー伯ではありませんか。このところ姿を見かけませんでしたが」
「ええ、しばらく旅に出ていました。話せば非常に長い話になるのですが、とにかく、大変な旅で……」
「ほぉー! ウェルシー伯もですか。それはまた、奇遇ですな。実は私も大変な旅でね。この前に少しお話しましたっけ。リチャード親王の御守りを仰せつかってね、それで、え~っと、なんだっけ……そう、ゴールデン・フロッグかな。それを探す旅とやらの『監視役』に付けられていたのですよ」
パーシュ=カーニス評議員は、苦笑して言った。わたしは適当に相槌を打ちながら、なんだか少し違和感を感じていた。目の前にあるゴールデン・フロッグは本物とは思えないし、評議員の話しぶりも少しおかしい気がする。
わたしは、ふと、思いつきで、
「話によれば、東の未開の地でバジリスクに道を阻まれて困ったとか……」
「そうですよ。それは大変なものでしたよ。東方では、2匹のバジリスクが、お互いに尻尾を食い合って、円になってクルクル回転しているんですから……」
パーシュ=カーニス評議員は、ここまできてようやく、「しまった」と、口に手を当てた。まさか、こんな単純な計略に引っかかるとは……、常識的にはあり得ないようにも思えるけど、やっぱり、この人はどこか抜けてる。
パーシュ=カーニス評議員は、「う~ん」と腕を組み考えていたが、やがて、
「本来なら秘密なんですけどね。この際だから、しょうがない」
評議員は、周囲に誰もいないことを確認すると、わたしの耳に口を近づけ、小声で話し始めた。それによれば、結論的には、目の前のゴールデン・フロッグは偽物。パーシュ=カーニス評議員がリチャード親王の監視役として旅に出たことは事実だが、実際は、単に帝都の周辺の町を巡り、「豪遊」していただけだったらしい。
「要は、アリバイ作りですな。裏で話がついたのでしょう。『リチャード親王が旅に出て、苦難の末、ゴールデン・フロッグを発見したことにしなければマズイ、しばらくの間、彼と私に帝都にいてもらっては困る』と、こういうわけです。おかげで、タダで御馳走にありつけましたがね」
パーシュ=カーニス評議員は、「はっはっはっ」と、実に楽しそうに笑った。なお、この話は、帝国宰相から「絶対に、他言無用」と言われたとのことで、
「この話は、一応、『他言無用』ですよ。ただ、他人に知られても、私にとって、損害はないけどね」
そして、評議員は、何かを思い出したように、ポンと手をたたき、
「ああ、そうだ! これから、つまらない会議だった。しょうがないな。それでは、私は、これで……」
パーシュ=カーニス評議員は、「はっはっはっ」と笑いながら宮殿の奥に消えた。




