純金のカエルの像
帝国宰相は、気分よく喋り出した。
「ゴールデン・フロッグ探しがうまくいってな、懸案事項であった次期皇帝選出の件も片付いたわい」
話によれば、次期皇帝としてツンドラ候が推薦していたリチャード・アルバート……(少々長いので、以下略)親王が、ゴールデン・フロッグを探し当てることに成功し、次期皇帝選出委員会で即位(リチャード3世として)が認められたとのこと。近々、即位の式典とともに、人心の一新のため、新たに文武百官の任命が行われるという。
「見つかったのですか。正直、都市伝説の類だろうと思っていたのですが……」
「はっはっはっ! 誰もがそう言うわい。しかし、そなたの目の前に、こうして存在しているではないか」
確かに、あまり趣味がよいとは言えない純金のカエルの像は、目の前で堂々と存在感を主張している。
「見つかるまでは、苦難の連続だったそうじゃが…… おお、そうじゃ、忘れておった。これから重要な会議があるのじゃった。そなたは、ゆっくりと見ていくがよいぞ。このゴールデン・フロッグの、黄金の輝きを」
帝国宰相は軽やかな足取りで、宮殿の奥に消えていった。
すると、プチドラはわたしの腕の中から首をもたげ、
「マスター、これは、本当にゴールデン・フロッグなのかな」
「知らないわ。あの爺さんのことだから、タダ……じゃなくて、相当にお金がかかっていると思うけど、それでもやっぱりタダの黄金のカエルの像を『ゴールデン・フロッグ』と強弁するくらいのことは、するでしょ。でも、それで、みんなが納得するかどうか……」
やがて、長い廊下の先に、やや肥満気味の三人の人影が見えた。腹を突き出して、いかにも「私はエライ」という調子で、ふんぞり返って歩いてくる。この三人組は、アート公、ウェストゲート公、サムストック公だったはず。顔を合わせて挨拶するのも面倒なので、わたしは、サッと黄金のカエルの像の陰に身を隠した。
「いや~、しかし…… ゴールデン・フロッグが見つかって、何よりですな」
「おやおや、まさか、あなたの口からそのような言葉が出るとは思わなかったですぞ」
「まあまあ、我々みんながゴールデン・フロッグと思っていれば、それでよいではありませんか」
三人はペチャクチャと話しをしながら、黄金のカエルの像の前を通り過ぎてった。気付かれなかったようだ。断片的な話ばかりだけど、それらを総合すると、帝国宰相が示したゴールデン・フロッグは、やはり偽物くさい。ただし、真実は偽物でも、全員に「本物である」という合意があれば、それは本物。おそらく、帝国宰相は、真実としては偽物のゴールデン・フロッグを示してリチャード親王の皇帝としての即位を認めてもらう代わりに、あの三人の要求を呑むなど、反対派にそれなりの譲歩をしたのだろう。
しばらくすると、さらにもう一人、よく目立つ白いローブを着た男がひとり、「ハッハッハッ」と、何が面白いのか、声を上げて笑いながら、廊下を歩いてきた。




