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人類フロントライン  作者: 葉山流人
4/4

ネットの一角で回想する

あほみたいに間が空きましたが次話です。このペースでいくと完結は来世紀ですかね?


 人類フロントライン第4次攻勢作戦、それは夏に行われた人ライの大規模イベントで、期間中に現れる特別ステージをチームや個人でクリアしてそのポイントを競い合う、というものである。

 そのイベントの期間中、いつものようにネット上のラウンジで戦隊のみんなとだべっていた空見速人そらみはやとの元に、一人のプレイヤーが近づいてくる。


「貴様が不死鳥のハヤミか?」


 一応ハヤミ――速人はネット上でもそれなりに有名なプレイヤーなので、知らない人間に話しかけられることはそう稀ではない。しかし、挨拶もなしにいきなり話しかけてくるような人間はめったにいない。突然の不躾な言葉に、内心イラッとしながらも、速人は声のした方に振り返る。


「まあそのふざけた二つ名は知らんけども、ハヤミっていうプレイヤーなら俺がそうだよ」


 そこにいたのは長身で金髪碧眼の、マンガに出て来る王子様のような風貌をしたプレイヤーだった。周りには取り巻きなのだろうか数人のプレイヤーが付き添っており、にやにやしながらこちらを観察している。随分人望がある人物らしい。相対する人物のパッと見イケメンなその風貌は、睨み付けるようにこちらを見ているせいで台無しになっており、速人の第一印象はうわ、めんどくさそうな奴、であった。そして、大体この手の輩はこの後に何を言うかは想像がつく。


「知っているぞ、貴様チートを使って絶対に撃墜されないようにしてプレイしているそうじゃないか」


 予想通りの聞きなれた言葉に辟易する速人。速人の操るハヤミというキャラは国内でも有数の成績を誇り、なにより被撃墜数が0という常人ではありえない成績を持っているため、良くネット上でもネタにされるし、中には目の前の人物のように直接絡んでくる輩もたまにいる。


 人ライの平均被撃墜数は0.24、これは4回出撃すれば1回くらいは撃墜されてしまうということである。もちろんプレイヤースキルによって差はで出て来るので成績上位陣になると0.1を切る者もいるし、初心者が1回だけプレイして撃墜されなければ被撃墜数は0である。


 しかしハヤミ――速人はプレイ時間やその他の成績、そのどれをとっても他のトップランカー達と遜色ないのだ。その上で被撃墜数0。これは人ライをプレイしている者達からすれば化け物を通り越した得体のしれない何かに見えてしまうものだ。


 だから当然ネット上でも不死鳥のハヤミはチートプレイであるとか、撃墜されるたびにリセットしてやり直した鬼畜なリセマラプレイヤーなどと様々な憶測が飛び交っている。


「おっとそこのイケメン殿ぉー!人にいちゃもん付ける前に名前ぐらい名乗るのが常識じゃありませんかねぇ!」


 速人が何か言い返そうとしたタイミングで月島から横やり飛んできて、速人は反論のタイミングを失ってしまう。


「拙僧の名前は月島、不死鳥のハヤミ親衛隊隊長にして、不死鳥騎士団の一番槍を任されているものでありますので以後お見知りおきを、モブプレイヤーの諸君」


 ドヤ顔で、むかつくドヤ顔で相手の取り巻きごと煽りまくる月島。ちなみに親衛隊も騎士団も存在しないので月島の完全妄想なのだが構うとめんどくさいので速人を含めた戦隊の者は完全にスルーを決め込む。


「いや、親衛隊隊長はこの前俺に決まっただろうが」


 と、速人は思っていたのだが速人の横にいたジュンが突然訳の分からないことを言いだした。速人が、は?と声もなく疑問に思っているうちに、同じテーブルに居た戦隊の仲間たちが口々に月島に反論する。


「一番槍は私って言ったじゃん、てゆーか一番目立つポジションは譲らないから」


 目立ちたがり屋のミナギがぴょんぴょん飛び跳ねながら自己アピールしだし、それに続くように銀狼が立ち上がる。


「つーかいつ不死鳥騎士団に名前が決まったんですかねぇ、銀狼戒鬼団とどっちにするかまだきまってねぇだろうが」


「「「「いやそのクソダサいのは無しで」」」」


 戦隊のみんなの心が一つになっていくのを感じる。ではなく、クソダサ厨二ネームを持ち出してきた銀狼が戦隊のみんなにふるぼっこにされる。しかし彼はくじけることなく近くにいたオウカにすがるような視線を送る。


「そ、そんなことはねぇよ!この前オウカに相談した時は高評価だったかんな!」

「まさかマジに受け取るとは……」


 にべもなく否定されて落ち込む銀狼はラウンジの隅っこの方で体育座りをして床をいじり出してしまう。


「つーかさっきから言ってる親衛隊とか騎士団とかってなに?俺知らねぇんだけど」


 そんな銀狼を生暖かく無視しながら、戦隊の仲間の話題についていけずに速人は尋ねる。すると相手の方を向いていた月島がのけぞるように体をそらしながら上下反対の顔をこちらに向ける。ぶっちゃけキモい。


「おや、ご存じないのですかな、かの有名なトッププレイヤー『不死鳥のハヤミ』をそこらの有象無象から守るために作られた組織、それが親衛隊。そして『不死鳥のハヤミ』の命令一つで邪魔なプレイヤーを叩き潰す彼の手先、それが不死鳥騎士団なのですよぉ」


 あっはっはと無駄に笑いながら速人に告げる月島に周りの仲間たちもうんうんと頷いているのだが、当の本人である速人は


「いやそんな話初耳なんだけど」

「我らは陰に生きる者故」

「いや意味わからんし、忍者かなにかかな?」


 当然そんな組織を作った記憶などない為首をかしげるが帰ってきたのは意味の分からない言葉だった。


 そんなやり取りを仲間たちとやっていると、突然ハヤミ達の座っているテーブルが大きな音を立てて叩かれる。音のした方を見やると、先程からこちらのやり取りを頬をひきつらせながら聞いていた絡んできたイケメンが、テーブルにこぶしを叩きつけていた。


「これが有名な壁ドンってやつですか」

「いや壁じゃねーし」


 ジュンのボケにとりあえずツッコミながら相手の様子を伺うとプルプルとこぶしを震わせながらこちらを睨み付けてきた。


「貴様達、この私を馬鹿にしているのかっ!!」

「もっと言ってやって」

「「「「「お前もだよ!!」」」」」


 速人は仲間たちのあほさ加減に金髪を応援してみるが、なぜかその場にいた全員に総ツッコミをもらってしまう。いや、俺悪くねぇしと思いながらも、金髪の方へと意識をやる。


「んで、どこのどなたかは存じませぬが、結局何がおっしゃりたいんですかね」


 言外に、お前人に名前ぐらい名乗れよと嫌味を混ぜながら尋ねる速人。しかし相手には通じなかったようで、金髪は偉そうに胸をそらしながらこちらに人差し指を突きつける。


「『不死鳥のハヤミ』、貴様私と殲滅戦で勝負しろ」


 やっぱりめんどくさいことになりやがったなと思いながらも、相手の提案について考える。

 人ライにおける殲滅戦とは5人1チームとなりエリア内に無限に湧く敵を自分たちが全滅させられるまでにどれだけ倒せるか、というものである。このルールなら速人が撃墜されるだろうし、もしチートを使っていたらそれが白日の下にさらされる、と相手はふんだんだろう。


「いやいや、今イベント中なのにそんな暇あるわけが」

「よろしいっ!!我ら不死鳥騎士団がお相手進ぜよう!!」


 今現在大規模イベントで、無駄な戦闘はしたくない速人が、手を左右に振りながら軽くあしらおうとすると、目の前の変人――月島が両腕を大きく左右に広げ、大仰なしぐさで勝手にその提案を受け入れる。

 おいおい、何勝手な事言ってんだよなぁと背後に控える戦隊の仲間を振り返るが、


「これは目立つチャンスねっ、受けて立つわ」

「ふっ……この俺の銀色のシルバーファングの獲物がまた現れたか……」

「はいはい厨二乙、まぁ負ける気しねぇし」

「めんどいからアタシ補欠で」


 なぜか戦隊の仲間はやる気満々だった。一名を除いてだが。


「いやいや、んなことよりイベントポイント稼ごうぜ、もうあんま期間残ってねぇんだしよ」

「そんなことよりもあのむかつくイケメンをへこませたい」


 本音それかよと月島の言葉に辟易しながらこいつら話にならんと、相手方を説得する方針に切り替える。


「あんたらもこんなとこで油売ってないでイベントこなしたら?そっちの方が有益だろ」

「私たちはとうにクリアラインを突破している、お前たちのような者と一緒にするな」


 せっかくうまいこと折り合いをつけて帰らせようとムカつくのを抑え込んで優しく諭したというのにこの言いぐさ、速人はもういいやと匙を投げる。


「めんどくせぇけどそこまで言うならこのハヤミと愉快で不快な仲間たちが相手してやるよ」


 相手とついでに味方もまとめて煽りながら自分のDM(ダイレクトメール)のアドレスを金髪へと放り投げる。


「詳しい事はそっちで調整してそこに投げといてくれ」


 わーぎゃーとやかましい味方達をこぶしで威嚇しながら相手方も見ずにそう捨て台詞を残すと、速人は味方達との熱い語らい(物理)を開始する。


「お、おう」


 突然始まった仲間割れに若干引きつつも金髪の男は去って行った。



感想、意見まってます。

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