プロローグ
初投稿となります。とりあえず完結を目標に頑張ります。
~プロローグ~
曇天の空、その中に在って大きな存在感を持つ機械仕掛けの竜が浮かんでいた。竜装機と呼ばれるそれは、はるか昔より人類の危機に現れた神々の兵器の模造品。人間の手に余る物を人間が扱える形に落とし込んだそれは、古の伝説のとおり人類を守る最後の翼である。
一機の竜装機のコックピットの中で、空見速人はコントロールレバーを握る手が汗で滑りそうになるのを感じながら、それでも放さないようにと力を込めて握りしめる。視線は慌ただしくモニター内を動き回り敵味方の識別、敵機の攻撃、味方の状況、自機の状況などを読み取っていく。
速人の眼前のメインモニターには薄暗い空が映し出されており、そこに異形の存在が大量に存在している。機械と生物を無理やり融合させたようなそれは多次元侵略性固体、通称インベーダーと呼ばれている。
今こちらの前に多数存在するインベーダーは、さまざまな種類がある中でも数が多く、あまり大きな火力を持っておらず、装甲の薄い『羽蟻』と呼ばれる存在である。
『警告、敵性機体攻撃態勢に移行』
虫でいう頭部の部分についているカメラアイがこちらを向いたかと思うと、機体のサポートAIから警告が発せられる。
ついでけたたましい音を鳴らすロックオンアラート。冷や水を浴びせかけるように鳴り響くそれは速人の肌を粟立たせる。モニター端、自機を中心としたミニマップをちらりと確認すると、自機後方に三機の敵とこちらに向かって来る飛翔物がいくつか見て取れた。
『敵性機体αからγ、当機体に向けて生体ミサイルを発射、回避を推奨』
こちらが確認すると同時、再びAIの警告。その音声を聴きながらもすでに両手は慣れた操作を入力している。
慌てずタイミングを合わせて自機を操作し、急上昇からの慣性を無視した急停止。S・I・C(セミ・イナーシャル・キャンセラー)を通しても伝わる急激なGを感じながらもそのまま後方宙返り。自機の下を通り過ぎて行くミサイル群を一瞬視界に捕えながらミニマップに視線をやると、続けて自機の下を通過していく敵機が見て取れる。
「シア、機体制御」
短く発したこちらの声に、機体のAI、シアはしっかりと反応してくれる。こちらが操作しなくても、機体が自動的に水平飛行状態へと戻っていく。速人は操縦をシアに任せ自分は反撃を試みる。モニターに映る敵機を睨み付け、視覚でマーキングし順次ロックオンしていく。三機を視界に捉え完全ロックオンの状態になると同時に火器トリガーを引き絞る。
左腕部ガトリングが火を噴き敵機を捕えた瞬間、真正面に位置していた一機目が即座に爆散、二機目に火線が集中し、これも即座に火を噴き爆発を起こす。さて残り一機という所で再び鳴り響くロックオンアラート。しかも同時に長距離火線兵器の射撃線が自機を含んだ辺りを埋め尽くす。
『警告、敵クイーンより高熱源反応』
クイーンと呼ばれる蜂に良く似た外見を持つ敵母艦、それが放つ大出力の大型レーザー砲の威力と範囲を思い出し、速人は即座に攻撃をキャンセル。レバーをひねり急速回転しながら右下方へと逃れる。直後、大量の熱量を持ったレーザー砲が先程まで自分が居た場所をすさまじい速度で飲み込んでいく。数十機の敵味方を巻き込みながら通過したそれが途切れるのを確認しながら嘆息する。
『当機の損傷なし、味方機の反応多数消失、撤退を推奨』
流れる音声を聞きながら敵味方の残機数確認すると、敵がこちらの約5倍以上の数となっている。ほぼ敵機の中で孤立しながらも、速人は思考する。
現在敵母艦の前には大型レーザー照射のため空白が出来ている。今なら肉薄できるかもしれない。
考えがまとまる前にはすでに機体を操作していた。コントロールレバーをひねり機体を急旋回。急激なGを無視しながら敵母艦の前へと躍り出ると、左手でサブパネルを操り機体をA・R(オールレンジ)形態から高速飛行形態へと変形させる。火力や武器の取り回し能力はA・R形態には劣るが、機動力と突貫能力はこちらの方が優れている。更には各部装甲、高速飛行形態では使えない武装もまとめてパージする。
『警告、当機体の戦力大幅に低下。撤退を推奨』
即座にコックピット内にシアの警告が鳴り響き機体の装甲値、総火力が極端に減ったことを伝えてくる。それらを全部無視し、身体を前面に倒しながらコントロールレバーを全開まで前に押し出す。体に大きなGがかかると同時、自機が急加速し敵母艦へと突貫する。大型レーザーは冷却のため数分は使えない。しかしその他の武装は健在であるため、激しい弾幕がこちらに向けて放たれる。
『警告、敵性個体の集中砲火を受けています。撤退を推奨』
シアの警告を聞きながらも対空機関砲の斉射、対空レーザーの帯、迎撃ミサイルの群れ、それらの射線を見切り、その全てをぎりぎりで躱し、撃ち落とし、逸らし、進んでいく。
強迫観念にも似たじりじりした感覚が後頭部を覆っていく中、速人はにやりと頬をつり上げる。そう、この感覚だ。これを感じたくて自分は今ここにいるのだ。
燃える、これで燃えずして何がシューターか!熱く心臓を滾らせながらも、視線は限界まで視界内を飛び回りあらゆる情報を頭に叩き込み、それを頭の片隅の冷静な部分で次々と処理していく。思考が限界まで引き延ばされ、時間さえも引き延ばされていく感覚。敵の攻撃がその先まで全て見え、自分の進むべき道さえもはっきりと見える。
良く、一流のスポーツ選手などの言ういわゆるゾーンという感覚。その領域に踏み込み、そしてそれすらも置き去りにして更なる加速、加速、加速。
機体が、思考が、時間があらゆるものを突破するその瞬間、その「歌」は聞こえた。
聞いたことのない言語で歌われる歌。どのような意味を持つのか速人にはわからない。それでも、感じることがある。これは、『戦いの歌』なのだと。
今までも、似たような状況で数度耳にした歌。極限状態の引き延ばされた状態でしか聞こえないそれは速人の心を震わせる。
歌に乗るように、歌に流されるように、速人の機体は敵母艦の目前に到達する。残りのエネルギー粒子を確認すると全体の三分の一以下となっていた。空中に漂う粒子を吸収し、自然回復するエネルギー粒子だが、連戦と急加速によりかなりその量を減らしていた。しかし回復を待っている暇はない。敵母艦前で孤立、周りに味方はおらず敵機を示すマーカーに囲まれ、更にはそう時間もかけずに母艦の大型レーザーの冷却が終わるだろう。
迷いなくサブパネルを展開し、武装を選択。ウイングブレードと呼ばれるそれは自機の翼の延長線上に高密度な粒子ウイングを発生させ、それによる白兵戦を行うものである。残粒子を半分以上使い自機の三倍以上の大きさの粒子ウイングを発生させると、再びレバーを押し出し敵母艦に突貫をかける。
歌は今も鳴り響いている。その歌に導かれるように、母艦の目前でレバーを倒し左側へそれる。そのまま、母艦の右側面をかすめるように飛行し、粒子ウイングによりダメージを与えて行く。敵機の追撃も対空砲火も全て無視した捨て身にも近い戦法。しかし母艦に接近しすぎているため、こちらにうまく攻撃できないでいる。
引き延ばされた感覚の中、やっと敵母艦の最後尾まで駆け抜けすれ違う。しかし撃破には至らない。こちらの数十倍の大きさを誇る母艦を墜とすには、少し威力が足りなかったようだ。
ならば、と心の中で叫びながらレバーを操作し錐もみしながら急上昇、母艦最後尾の上空で急停止し、同時に再びA・Rモードへと変形する。連続したGに意識が飛びそうになるのをこらえて敵機を見据える。こちらへ殺到する敵機を眼下に収めながら右翼ウイングブレードを操作し大きく振りかぶる。残るエネルギー粒子をほとんどつぎ込み粒子密度を高め、サイズを増したそれを群がる敵機ごと母艦へと叩き付ける。
狙い通り、いや歌に導かれた通りにその攻撃は敵母艦の最後部から頭部部分までを叩き割り、沈黙させることに成功する。
ふう、と速人が嘆息すると機体が自動操縦となり高速飛行形態へ移行し、強制旗艦モードへと入る。眼前のモニターに目をやるとそこには大きく『ステージクリア』の文字が現されていた。
習作となっていますので、感想、批評、お待ちしています。作者の心が折れない程度に。




