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80:魔王

「魔王討伐、燃えるのお」

「おぉ! 同志よ!」

「魔王クラスと呼ばれる魔物はよくいるが、魔王を冠する者は早々居ないからのお」

「魔王殺しのクロと呼ばれた我の右手が(うず)くのだ!」

「おぉ! わしも一匹殺した事があるが苦労したぞ。仲間の半数をあれで失ったわい」

「我も最強の敵、魔神王を倒す戦いで全ての仲間を失ってしまったのだ。しかし、我はその悲しみを力に変えて最終形態」

「はい。バカ話はもういいから、いくよ」

「なん、だ、と!」

「なん、じゃ、と!」

「はいはい、バカばっか」

ギルバートさんは、藤原君に似てるよね。というか、藤原君がギルバートさんに似たのかな?


最下層のカードをアイテムボックスから取り出し転移する。


管理迷宮一層、転移魔法陣。予想通り誰もいない。

しばらく様子見をプッシュした効果で、しばらくの間、一般の冒険者は立ち入り禁止になって、迷宮の状態を確認する調査隊が出入りするだけとなっている。

最下層の転移カードが輝き、そのまま最下層へと転移する。


「ギルバートさん。倒した事のある魔王について教えてください」

「お嬢ちゃんは...どれほどなのかの? フジワラちゃんと同じで特殊な事は知っておったが、テレスとフジワラちゃんがここに居ないのはそれ以上を披露してくれると言うことかの?」


私と藤原君が勇者と呼ばれるモノだと言うのは知っていた。

だから、色々と隠しているのはわかっていたが、転移魔法を簡単に披露して魔王の事を聞いてくる。

しかも、確実な戦力になるテレスさんと藤原君を今回呼んでいない。それは、彼らにも隠している力があり、情報の足りない魔王に対して今回使う可能性があるから連れて来なかった。それは、つまりその力は二人よりも強力と言う事なのか? それはどれほどのものなのか? という問い。


「私の知っている魔王の情報は、触れただけで即死する滅びの王と言うものです。その名の通り相手に触れただけで死に至らしめ、しかもそのまま灰になる。つまり蘇生不可能になってしまう、本当の意味で滅びを司る魔王。相対した冒険者は全てを捨てて逃亡したと言うことです」

これは、ファウストの書にいた冒険者の記憶。滅びの王が討伐されたと言う記録は無い。

「情報の足りない敵を相手にテレス達は連れていかん。大体どのような敵が居ようとも我とリンだけで十分だからな。小僧は弾除けに連れて行っても良かったのだが、尻尾を巻いて逃げたらしいのだ」

「ほっ、わしはフジワラちゃんの代わりかの?」

「保険です」

「生贄だ」

「ちょっとクロ君だまっててよー」

「やなのむきゅ!」

クロ君を両腕でガッチリロックする。


「本気とか出すつもりはないんですけど、もしもそうなった場合対応できそうな人材を一人だけ連れて行こうと」

「我とリンが本気を出してミナゴロシにしても問題ない奴を連れて行こうと」

「もー、クロ、話をややこしくしないでよ」


「まあよい、わしの戦った魔王は、名前はなんと言ったかの...忘れてしまった。他の国の管理迷宮に誕生した魔王じゃ、ある冒険者が偶然見つけた隠し扉の先に広大な空間が広がっておりそこに居た。固有の名を持った魔の王。おそらく今回の魔王もこちらの魔王じゃと思うぞ」


魔王と一言で言っても幾つか存在する。

私の知識の魔王は、事象を司る魔の王。滅びを司るモノもいれば、魅了を司るモノも居るかもしれない。


事象を司る魔の王の前に抵抗が出来るのか?

もし仲間が魅了されて敵となった場合はどうするか?

もし滅びの王が相手だった場合はどう戦うのか?


可能性としては無いに等しいが、それでも有るのだ。

失って悲しむ者がいる人は連れて行けない。


まあ、本当に本気で戦う可能性もあるだ。

少し見せておこう。









見ていてくださいと言い。先を歩くお嬢ちゃん...いや、勇者、冒険者、リン。


影から出てきた暗黒戦士が、二つ、四つ、八つと綺麗な切り口を残し崩れ落ちる。

手に持っていた剣さえも例外なく切り刻まれる。


何か極小の糸のようなもので、ただ普通に猫を撫でているとしか見えない手が、指が、それを操っている。


フジワラちゃんにも驚いたが、こちらは比較にならない。

ウィリアムが入れ込むのも判る。これは底が知れない。


普通に最下層のボス部屋へと入っていく。

そして、出現した魔物の集団がバラバラになり地に落ちる。



たまらぬ...



感情の起伏が感じられない静かな視線、全ての事象を計算し対応するその技量。



抑えられぬ...



ボウッと地面が光る。転移魔法陣だ。


目が合う。

魔法の光に照らされて神秘性を増したソレが囁く。

「どうします?」

それは、まるで、試すように...

「殺気が心地よいぞ」

肩にわだかまる黒いソレが挑発するかのように...


(オウ)...」

堪らず声が、


気付く。

微笑むソレの指先から伸びる青白い線。

「いつからじゃ?」

「最初から」

「お前は最初から死んでいるのだ」

使うのを見ていなければ、何が起きたかもわからず首が落ちていたか。

「恐ろしいのお」

「ギルバートさん、それは魔人化したから? それとも元からそうなの?」

強いものを見ると抑えが効かなくなるのは、どうだったかのお。

「さあ、どうだったかのお」


白い少女が誘う。

「行きましょうか」

魔人が答える。

(オウ)!」


「うひょ~、逝ってやるぜ!」

猫がぶち壊す。

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