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78:待ち合わせ

転移魔法陣が輝く。英雄達の帰還だ。

「信じらんねー、あんたら冒険者だろ。なんで素材剥ぎ出来ねーんだよ」

「面倒だわ」

「うん、面倒ですよね」

「カーッ! 大体お姫様は学園の先生しているんだろう。素材剥ぎの仕方知らないとかダメだろう」

「えー、私、光魔法の先生だから素材とか関係ないですしおすし」

「おすしってなんだよ! それに、あんたはギルド職員だろう、なんで素材剥ぎの仕方知らないんだよ!」

「知ってるわ。面倒なだけ、じゃなくてギルド長から禁止されているだけよ」

「オイ! 面倒って言いやがったな、なんだよそれ!」

(おすしとか言っちゃった。わたくしクロさんに毒されてますわ!)

(ネコのせいにするのはダメな大人の見本)

(初耳です)

(発明しました)

(凄いです)

(えっへん!)

迷宮にいる間、ずっと大人しくしていたクロを撫でる。


ケルベロスとオルトロスの死体から牙や爪、それに魔石など有用な素材を剥ぐのをほとんど一人でやったヤンさんの愚痴を聞きながらの帰還。

騎士は死体を漁る事などせんと言い切るラムダ君と、私も素材を剥いだ事がありませんと言う宮廷魔術師のヨランさんに、教義に反しますと言い黙祷をするマティアさん、じゃあ私も学園の規則で禁止されていますと適当な事をいい。テレスさんもギルド長に禁止されてるのでと嘘を言い、結局一人で素材剥ぎをしたヤンさんの愚痴を聞きながら五階まで潜りそこのボス部屋の転移魔法陣で愚痴の続きを聞きながら帰還となったしだい。



既に報告が入っていたのか、ウィリアムさんに出迎えられる。

「お話を伺いましょう。こちらへ」

ギルドの奥、話を聞かれない場所への移動を促される。

ウィリアムさんが、ヤンさんに目配せする。

「じゃ、俺は素材の買取をしてもらおうかな! 魔獣ケルベロスとオルトロスの珍しい素材だ、幾らになるかなあ!」

魔法の鞄からケルベロスの魔石を取り出しながら買取所に移動するヤンさんに視線が集まり、その珍しい素材を見ようと野次馬が移動を始める。


注意が外れた事を見計らい。

「では、行きましょう」

特に報告するような事はないから私ももう外れたいのだけど、まあ、そうはいかないか。



…………

……



魔獣討伐の詳細。オルトロスを呼び出した事。ドロップ品は無かった事。

「そうですか」

考え込むウィリアムさん。

「最下層を含めこの管理迷宮で出る魔物と毛色が違ったことは確かだ。強さもおそらく最下層で確認された魔物よりも上だろう。三回殺さねば死なないなどは普通の魔物ではありえない」

と、ラムダ君。

「そうですね、たしか、複数の命を持つ魔物はそれだけで魔王クラスと判定されていたかと」

司祭様という事だけど、なんだか今まで見てきた司祭様とそれこそ毛色の違うマティアさん。


(マティアさん実は、司祭様じゃなくて司教様だったりしてとか思ったり思わなかったり)

(鑑定しれ)

(したけど司祭だったよ)

(偽装されてる可能性は?)

(うーん、有り得るかなあ。偽装というか今の恰好の時は司祭で、司教の時は別のそれこそ司教の服とか装備したら司教になるとかだったら今の時点で鑑定しても司祭としか出ないかも)

(実は役に立たない鑑定説急浮上!)

(まあ、役職はね。複数を使いこなしてたりしたらどうしようもないよ)

(どのみち教会とやらはリンには手を出せないのだろう?)

(そうだねえ、そういうのが面倒だからローランになったのだしね)

(面倒な事はあのヤンとか言う奴等がやってくれるだろ)

(だね)


「リンさんはどう思いますか?」

(クロさん、わたくし、お話聞いてなかったんですけど)

(わたくしも聞いて無かったですことよ)

(ですよねー)

(にゃん!)


「取り合えずしばらく様子を見てみては?」

「そうですね...」

「迷宮が赤くなる事象の規則性とかはどうなっているのですか?」

「日に多いときは五回、起きない時もあります」

「起きなかった最長日数は?」

「二日ですね。あれはアークデーモンをテレスとフジワラが倒した後です」

「ではしばらく起きない可能性が高いと言うことですね」


「これで起きなくなる可能性もあるだろう?」

「しかし、また魔獣が出現するようなら迷宮へ潜る最低戦力の基準を引き上げなくては対処できません」

「基準と言うが、圧倒できる戦力でなければ対処出来んだろう? 仲間を呼ばれ、しかも倒した瞬間無傷の状態で復活して攻撃してくる。俺達以外でどうにか出来る者がいるのか?」

「仲間と言えば、あの仲間を呼ぶ行為自体が迷宮の異変と同じ事象を引き起こしていましたね」

「そうか、あれこそが今回の異変と同じ現象...」



ウィリアムさん達の論議が白熱している。



「テレスさん、市民街にご飯食べに行きませんか?」

「いいわね、行きましょう」

「学園に戻る前に色々と買い溜めしておきたいんですよね」

「リンちゃんいつまで学園にいるの?」

「あと少しですね、今ローランから派遣された宮廷魔術師の人に引継ぎみたいな事をしているので、それが終ったら先生は終了ですね」

「そう」

言いつつ私とテレスさんが席を立つ。


「…………」ウィリアムさんの沈黙。

「…………」ラムダ君の沈黙。

「…………」マティアさんの沈黙。

「…………」ヨランさんの沈黙。


「え、しばらく様子見ですよね?」


「…………」ウィリアムさんの沈黙。

「…………」ラムダ君の沈黙。

「…………」マティアさんの沈黙。

「…………」ヨランさんの沈黙。


「え、違うんですか?」



私とテレスさんとクロ、そしてなぜか付いて来たラムダ君と一緒にご飯を食べる。

ご飯といっても屋台のはしごみたいなものだ。お気に入りの店で肉料理や飲み物、デザートなどをアイテムボックスに補充しつつ食べ歩く。

ラムダ君はローランの英雄さんなので、結構人気者で人が集まってくる。

(面倒だから撒こう)

(だね)

「じゃ」

と言い残し人に囲まれているラムダ君を置いていく。何か叫んでいるけど気のせいだろう。


私とテレスさんとクロで楽しくご飯を食べる。


マルアさんの宿で寝る。久しぶりだな。





朝。


街外れ。


朝霧の中に佇む白いローブと黒いネコ。


誰かを待っているのだろうか?

「待ったかの?」

待ち合わせだったらしい。

「ううん、今来たところ」

定番の返事をネコがする。

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