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71:狂乱の迷宮2

三つ首の魔物?

(ケルベロス?)

(かなぁ)

(むむむ! リン知ってるのか?)

(うん。ファウストの書に載ってたよ)

(にゃお~んって鳴く?)

(え、鳴かないと思うけど。わお~んじゃないの?)

(量産型かつまらん!)

(なんで!?)

隠密を発動し野次馬に紛れながら成り行きを見守っている。




「四層ですか、ならば上層と下層両面から応援を派遣した方がよさそうですね」

「五層にカードで転移してから四層へ上がるのが最短だろう。全兵力をそこに投入するべきではないか?」

「ええ、しかし敵がまだ四層にいるとも限りません。まさかとは思いますが、そこから出てくる可能性がある以上、上からも確実に探索の手を伸ばさなくては」

今は閉じられている迷宮の入り口を指しながらウィリアムさんが言う。


「早急に討伐隊を組もう。五層への転移は一度に最大六人だったか」

「そうですね...」

口に手を当て考え込むウィリアムさん。


「ラムダ殿、騎士団で五人単位のパーティーを構成することは出来ますか? 連絡用と転移の為の冒険者をこちらで一人用意します」

「出来るが、どうするのだ? 主力部隊を作るなら俺が参加するが」

「相手の戦力がわからない以上、最高の戦力で挑むべきだと思いますが...前衛の盾はラムダ殿で近接はテレスに任せるとして...」

「…………チッ!」

人前であることも気にせず舌打ちをする英雄さん。余程テレスさんを気に入らないみたいだ。


「教会の方を呼んできてもらえますか」

頼まれた職員が頷きその場を離れる。

「ウィリアム殿。無理に六人揃える必要はないぞ、俺逹の動きに対応できない者がいる方が逆に戦力の低下を生む」

俺達と気に入らないが、テレスさんの強さは認めているというツンデレ発言をする英雄さん。

「雑魚が」

すぐ傍で辛辣な発言が...聞こえていないからいいけどそういう発言はよくないと思います。



冒険者ギルド、王国騎士団、教会関係者で打ち合わせが行われている。

(これ、残ったやつら死んでたらもう迷宮に吸収されてるな)

(死に方しだいだね。騎士達と言う事だからMPもあるだろうし、装備もしっかりしていると思うから死んですぐ吸収という事は無いと思うけど、まあ時間との勝負という事には変わりないね)



「では、騎士団からは盾持ちと槍装備の構成で、冒険者ギルドからは剣、魔法、気配察知持ちの狩人を教会からは回復要員をお願いします」


「主力は、ラムダ殿とテレス、私と偵察要員を後一人と回復は...」

「私が行きましょう」

教会関係者の司祭っぽい人が手を挙げる。鑑定するとマティア司祭と出る。なかなかの能力、当然というか光魔法が蘇生も出来るレベルになっている。

「よろしいのですか?」

「ええ、構いません」

「ウィリアム殿、貴方はここに残って指揮を執った方がよいのではないか? 拠点に指揮官がいないというのは対応が後手になる」

「そうですね、ラムダ様は戦闘の要になる方ですので外せませんし、私は教会の者です。冒険者の方達の指揮というのはとれそうにありません。この場合ウィリアム様が残るのが一番良いかと」

「そうなりますか...」

「後一人は、俺の所から魔術師を出そう」

騎士団の中から宮廷魔術師が歩み出る。やはり宮廷魔術師も来ていたのか。


けど、おかしい! おかしいよね!?


ラムダ君、テレスさん、マティアさん、狩人さん、宮廷魔術師さん、五人だよね?


ウィリアムさん抜けたら五人だよね?


私、隠密してるから存在認識されてないよね?


なんでこっちチラチラ見てるんだろうね!


「一応、出発前に指揮系統を決めておきましょう。テレス、貴女逹もこちらに来てください」

なぜかばっちりこちらを見ているウィリアムさん。そ、そんな、見破られていただなんて!

「ええ、行きましょうリンちゃん」

うん。隣で毒吐いてた人いたね! この人に見つかったことで隠密切れてたってことなのね!

「テレスさん何時から隣にいたんですか?」

「最初からよ!」

「な、なんですって~!」

(リン、はよ行くのだ)

(な、なんですって~!)

なんでなにも聞かれないのに頭数に入っているんですかね! 扱いが酷いですよね!

王族の威光を発動してしまおうかしらね?

(リン、まさかそれは新スキルか!?)

(そんなスキルありませーん。というか勝手に私の思考を読まないでね)

注目されているので、とっととウィリアムさん達の所に行きますか。



「リン様。初めましてマティアと申します」

見るからに聖職者という恰好のマティアさんにお辞儀される。手を前に組んで(こうべ)をたれる神職の人のするあの挨拶だ。

「初めまして司祭様。冒険者のリンです。リンとお呼び下さい」

この人、学園の闘技大会に来てた人だなあと思いながら挨拶する。

「リン様。私のことはマティアとお呼び下さい」

ウィリアムさんとラムダ君をちらりと見ると、知っていますと目で返される。教会が手を出さないように早々に通達済みということだ。

「マティアさん。よろしくお願いします」



「じゃあ私はこれで失礼しますね」

ペコリとお辞儀をして踵を返す。

「じゃあ私も」

と、テレスさんが付いて来る。

「リンさん、お願いしますね」

と、ウィリアムさんが道を塞ぎながらニッコリ笑う。貴女が帰るとテレスも付いて行ってしまうんですよとその笑顔が語っている。

「生徒が待っているのです」

と、生徒を人質にする。

「明日まで休講にしてあるのは確認済みです」

と、人の休みを勝手に調べましたと言い出すギルド長さん。

「テレスさん、この人ストーカーです!」

「殺す!」

「テレス、リンさんの予定を教えてくれたのは貴女でしょう」

「そ、そうだったかしら?」

何この人達。


「安心しろ。お前のことは俺が守る!」

と、ラムダ君が自信たっぷりに言い出す。まあ、私がいればラムダ君の英雄の称号が最大効果発動するから一緒に行った方がいいんだけどね。

「リンちゃんに負けた雑魚は喋るな雑魚」

と、テレスさんがスキルではなくリアル挑発を発動する。

「グヌヌ! キサマ!」

「雑魚」

「グギギ!」

「雑魚」

「フォォォォ!」

このまま見ているとラムダ君が何かに変身しそうだ。


しばらく放って置こう。


ウィリアムさんに聞く。

「敵がまだよくわかっていないのに、テレスさんとラムダ君を行かせていいんですか?」

分からないからこそ最大戦力をというのもあるだろうけど、その辺を確認しておきたい。

「今を逃すとテレスだけに頼った構成で行くことになります。教会の司祭がいたのは予定外ですが、私の代わりはリンさんにお願いしたい」

意外な事に、真っ直ぐ本音を語られてしまった感がある。

「はあ、フジワラ君は?」

「彼は別件で動いてもらっているので参加できません」

「そうなんですか、ちなみに予定はどうなってたんですか?」

この際なので、ウィリアムさんの策を聞いておく。

「私とテレスにサラ、リンさんと連絡が取れれば魔道具屋のカーサさん。そしてラムダ殿の予定でした。魔道具屋自体がしばらく休業という連絡は来ていたので今この街にいる鑑定持ちの魔術師に来てもらう算段もしていたのですが間に合いませんでした」

元からこのタイミングで行くつもりだったのか。こっちも結構切迫しているんだね。


「ウィリアムさんの予想では、どうなんですか?」

今回の件、魔獣ではなく管理迷宮の異変についての予想をズバリ聞いてみる。

「…………魔獣の討伐による事態の解決。最下層ボス部屋の宝箱からドロップによる解決。あとは...」

「あとは?」

「…………」

無言であるものを取り出し。そしてしまう。


ひとつ肩を竦めて見せて、変身しそうな英雄さんを見ながらウィリアムさんが言う。

「出来ない事を考えても仕方ありません。今出来る事をやるしかないです」

出来ない事といっているが、それをする算段を色々模索しているのだろう。


そういえば、私のローランの後見の件はローランの英雄が誕生してからだったかなあと思いながら変身しそうな英雄さんを見る。

迷宮のような局地戦で英雄の称号の効果を最大限に発揮する。そういう算段もしていたのかなとも思う。


ウィリアムさんを見れば、その眼は変身しそうな英雄さんを見ているようで本当は違うのではないかとも思えてしまう。

「ギルバートさんに続いてテレスさんも失う事が心配ですか?」

思わず聞いてしまう。

「…………時間がありません、行きましょう」

こちらを見ずにそう言い残し皆に声を掛けるウィリアムさん。

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