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72:狂乱の迷宮3

狩人の人が挨拶してくる。

「よろしくな、お転婆なお姫様。俺のことはヤンと呼んでくれ」

この人は私の護衛というか見張りみたいなことをしている人。今いる学園でも秘密裏に私の護衛をしている人逹の一人だ。

てっきり王国側から派遣されている隠密の人だと思ってたのだけど、冒険者ギルド側の人だったのかと思いつつ鑑定をする。

んー、名前がヤンじゃないのだけどこれは。

(いわゆるコードネームというやつだな!)

(うん、そうだね。コードネームというよりも一族の名みたいな感じだけど、所属はローランになってるからやっぱり王国側の人間なんだよなあ)

(リン、長いのだ)

(はいはい、長い長い)

人の思考に勝手に返事しといて会話をしだすと長いとはこれいかにというね。

(これタコに)

(…………)

クロ君の両足を持って肉球を親指でプニプニする。


「ヤンさん、よろしくお願いします。それと何時(いつ)も有り難う御座います」

「……そうだよな、気付いてないわけないよな。だけど、もし本気でそう思ってるなら突然消えたりしないでくれると助かるんだがな」

肩を竦め苦笑しながら愚痴を言われる。

「リンちゃん。知り合いなの?」

会話を聞いていたテレスさんが尋ねてくる。

「私のことをストー」

「待った! 俺はアンタんとこのウィリアムに依頼されて動いてるだけだ、そこんところを間違えないでもらいたい。ストーキングとかしてないから!」

「クソギルド長の依頼でリンちゃんのストーカーをしてるの?」

ユラリとテレスさんが一歩前に出る。

「いや、違う。まて、ちょっとマテ、止めて!?」

「え、なんで?」

「え、なんでって、なんで?」

「え?」

「え?」




緋色のローブ。宮廷魔術師の証であるそれを羽織った男性が声を掛けてくる。

「リン様、私はヨランと申します。以後、お見知りおきをお願い致します」

あまり良いイメージの無い宮廷魔術師だけど、ラムダ君に従属しているということはエリック王子の親衛隊所属だった人なのかなと思いつつ返事を返す。

「ヨランさん、よろしくお願いします」

(リン、宮廷魔術師共はあの時皆殺しにしているから運良くあの場にいなかった者を除いては全部事情を知らない者達だぞ、気にするべき種類の者でない、つまり雑魚)

緋色のローブを着ている以上雑魚では無いと思うけど。まあそうだね、あの時あの場にいなかった人達はその程度の地位だっただろうし、もう既に宮廷魔術師という組織は別物になっているという事なのだろうね。



「では、指揮はリンさんということで良いですか?」

ウィリアムさんが、いきなり訳のわからない事を言い出す。

「え、では、ってなんですか?」

思わず聞き返してしまう。

「待てぃ、ここは歴戦の指揮を経験しているこの俺が相応しいと思うのだが」

ラムダ君が自己主張してくる。私もラムダ君で良いと思うのだけど...

「私より弱い雑魚の指揮なんかに従いたくないわ」

何言っちゃってるのこの人は。いつの間にか隣に戻ってきているテレスさんが暴言を吐く。

「ウヌゥ、女だからと大目に見ていれば俺より強いとほざくか、ァア?」

「フッ、雑魚の遠吠えね」

「お前ロイヤルスラッシュでボコるわ…」

「ちょっと強くなった位で調子に乗っているその首をへし折ってあげるわ」

鼻にしといた方がいいと思うなあ...


「では、多数決で決めましょうか」

ウィリアムさんがマイペースに話を進める。


「リンさんでいいと思う人、挙手をお願いします」

(ノ)

(ん? なにクロ)

(なんでもないのだー)


「オィィ! ヨラン貴様まで裏切るのかあぁ!」

「いえいえ、ラムダさん私はもう別の指揮系統に入っていますし。従うべき相手は自分で決めますよ」


四対二で、私に軍配が上がる。二は、私とラムダ君本人だ。

(五対二なのだ!)




先陣で管理迷宮に入る。

最初の分岐が奥へと続く道と転移魔法陣への分かれ道。

要所に六人編成のパーティーを配置しながら下層へと降って行く。

私達のパーティーは、最短距離で下り階段へと向かうため常に先頭となる。


「左奥に魔物の集団、三いや四匹」

ヤンさんの気配察知で周囲にいる魔物の情報が相手に気付かれる事なく入ってくる。

「通り道ではない。このまま進むぞ」

先頭を行くラムダ君が分岐を右へ下層への階段の方向に進む。


第一層、この管理迷宮で一番弱い魔物が徘徊する場所。

当然の事だけど、特殊な強い魔物が出ていない限り手間取る場所ではない。

進路を塞ぐ魔物は、ヤンさんの矢やヨランさんの魔法が一撃で葬り去ってくれる。


今回は糸を使うつもりは無い。

糸を使ったとしても見破られるヘマはしない自信はあるけど、念のためだ。

色々な勢力が一堂に会してしまっている。その原因が糸だと解らなくても何かおかしな現象が起きていると認識される事自体がマズイ。

なので、使うのは公式になっている光魔法と水魔法のみ。光魔法に関しては司祭のマティアさんがいるので控え目にする。水魔法に関しては宮廷魔術師のヨランさんの属性と被らないのでそこそこに。

(縛りプレイと言うやつだな!)

(なにそれ?)

(魔法使用禁止とか回復アイテム使用禁止とかだな!)

(ふーん、けど危険だったら使っちゃうけどね)

(リン、プロゲーマーとしての埃(ほこり)はないのか?)

(えー、流石にそのほこりは無いかなあ)


当然クロも今回は出番無しなので、ローブのフードの中でお休みです。


階段を降り、二層へと進む。

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