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69:小休止

入る時に隠密を発動して気配を薄めようかと思ったけどやめておく。当然ギルドに入ってきた私に視線が集まる。白いローブ姿は目立つし、この恰好はある意味ここでの私のトレードマークでもある。


「リンちゃん。久しぶりだね」とあるパーティーのリーダーをしている女冒険者が声を掛ける。

「よう」とフリーのベテラン冒険者が声を掛ける。

「彼女は?」と新しく入ったらしい冒険者が噂を始める。


反応は多様だけど皆一応に紳士、淑女的な対応。

貴族街にある冒険者ギルドに世間一般的なイメージの荒くれ冒険者は存在しない。


なぜか?

排除されるからだ、完膚なきまでにボコボコにされて排除される。


皆に挨拶しながらギルドのカウンターに行くと受付の職員さんじゃなく、確かウィリアムさんのサポートをしている職員の人が対応してくれる。

「リンさん。お久しぶりです。学園の教師はどうですか?」

「なんだか色々大変です。あの、ウィリアムさんかテレスさんいますか?」

「お二人とも管理迷宮の対応であちらの事務所にいっています」

「ありゃ、そうですか。えーと、じゃあ私もそっちにいきますね」

「わかりました。馬車の用意はいたしますか?」

「え、いや、いいです。歩いていきます」

なんだか待遇が良くなっている気がしないでもない。


「あっ! リンちゃん、ちょっといい」

治療室から声が掛かる。気のせいだったみたい、扱いはいつも通り冒険者としてで、対応が貴族のそれに変わったという所かな。

「はい、なんですか?」

治療室に入ると何人かの冒険者がいる。生命に支障はないけど怪我がまともに治っていない。

「んー、回復ポーションとかで無理矢理治したとかですか?」

ポーション系は怪我や体力を回復してくれるけど、折れて曲がった骨とかを、その折れた状態のままくっつけたりしてしまう事がある。

「あ、やっぱりリンちゃんは解るんだ。凄いなあ」

「けど、無理矢理にしても結構な出費だったんじゃないですか?」

「ええ、けど今は出費以上の稼ぎが出来るからって無茶する人が多くてね」

「管理迷宮ですか?」

「そうなのよ、稼げるからといって自分達の力量以上の魔物を相手にしてたらどうなるか、もうちょっと考えて欲しいのよね」

彼女はギルド職員で回復魔法が使える人。光魔法使いの冒険者がいないときに治療室で回復の仕事をしたりしている。


「わかってるさ、だからこっちに来てるんだろ」

冒険者が申し訳なさそうに意見する。彼はさっきの女冒険者さんのパーティーの一人だったっけかな。

「こっち?」

「ええ、管理迷宮だけに冒険者が集中してたら他の迷宮や地上に出没した魔物の対応をする人がいなくなっちゃうから、そっちの対応をしてくれる冒険者はギルドのほうで治療を受けて冒険者活動に早く復帰してもらう様になってるのよ」

「たしかに、稼げるからって死んでしまったら意味無いですもんね」

「そうよね。ちょっと浮かれすぎてたみたい」

女冒険者さんが話しに加わってくる。


「結構死人が出ているのよ。迷宮内だから全滅したパーティーはそのまま迷宮に吸収されて、一日の終わりに入った数と戻った数で全滅した人数を数えていると聞いたわ。私達は偶然テレス達に救われたけど日に日に帰らない人数が増えてきているとも聞いているわ」

「なんか、大変ですね」

「リンちゃん、なんかその返事他人事っぽいわね」

「えー、だって私今学園で教師してるし」

「無責任な教師っぽいわ」

「えー、なにそれー」


治療が必要な人達に集まってもらう。

「えーと、んーと、ちょっと待ってくださいね」

アイテムボックスから魔法の杖っぽいものを取り出す。

「じゃあ、順番に、ごにょごにょごにょヒール!」

回復魔法で、状態に異常が出来ている部分を治していく。

「リンちゃん、呪文適当に言ってるでしょ?」

ギルド職員さんがいちゃもんをつけてくる。

「ちょっと何言ってるかわかりません。治療の邪魔なんで外に出てってくださいねー」

「無詠唱でヒール使っているでしょ?」

「ちゃんと詠唱してますー。営業妨害しないで下さいー」

「私は楽できていいけどね」

「ギルド職員として不適切な発言を聞きましたー。ウィリアムさんに言いつけておきますー」

「ギルド長に言うのはヤメテ!」

「やでーす」

治療が終了する。


「一瞬で治った。凄いな、ありがとう」

「リンちゃん、助かったわ」

女冒険者さんにもお礼を言われた。

「何か手伝う事があったら言ってくれ、何でも手伝うぜ」

ベテラン冒険者さんも治療待ちだったようです。

「リンさん、ありがとうございます!」

結局、ギルド内に居た冒険者は、自分か仲間の誰かが治療待ちだったと言うことだ。


「では、治療費は彼女の給料からリンさんのギルド口座へ振り込んでおきます」

「あ、お願いしますー」

「副ギルド長何言ってるんですか? 何で私の給料からなんですか?」

副ギルド長さんだったのか。

「じゃあ、失礼しますねー」

「ちょ、リンちゃん待って! なんでスルーするの? あ、ちょっと、無視しないでー、ちょ! 副ギルド長はなして、え、何で皆で私を、はなせー!」


なんか、テレスさんとウィリアムさんの掛け合いみたいだ。

久しぶりのギルドの空気に癒されつつ管理迷宮の事務所へ向かう。

「にゃ!」

「ん? どうしたのクロ」

「これでギャラ発生なのだ!」

「んー、よかったね?」

「にゃ!」

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