68:ギルド
馬車に揺られて街を行く。
まあ、実際は全然揺れていないのだけどね、流石王族仕様の馬車であります。
(快適だね)
(うむ!)
貴族街の冒険者ギルドに向かっているのだけど、どこか途中で降りないと、と絶賛悩み中なのです。
王族の馬車から降りるところなんか見られたくないのです。何か必要の無いフラグと言うものが立ってしまいそうなのです。
私の今の立場、ローランと関係があると言う例のあれはギルドカードを発行しているギルド職員さん達は当然知っているけれど、同じ貴族街の冒険者の人達にはほとんど知られていない。
貴族街の大通りに出る前の門辺りで降ろしてもらおうかなあ。
(そういえば王様、エリック王子に似てたね)
(そうか? 奴はたいしたことなかったがな!)
(えー、言外に管理迷宮の問題も解決しろとか言ってきてたじゃん)
(くくく、奴はその様な些細な事を言うために我とのガン飛ばし合戦を放棄して逃げたのだ! 軟弱者め!)
(えー、些細な事なの! というか無言で見つめ合っていたのは、なにかが通じ合っていたからじゃなかったんだ)
(ガン飛ばしは、先に目を逸らした者の負け。昔から続く王者の儀式!)
(ふーん、凄いね?)
(凄いのだ!)
クワッ! と口を開き目の瞳孔を縦に細長くする。うん、可愛いね。
「すみませーん。次の門の所で降りまーす」
(適当に話を切ったなあぁぁぁぁ!)
(え、違うよー)
受け止めてもらう事前提の両手両脚を広げたバンザイダイブのクロを両手で受け止め懐に入れる。
アイテムボックスから、新品の白のローブを取り出し羽織る。今まで着ていた白のローブは闘技場の時にマウラさんに着せたのだけど、後日欲しいと言うのでそのままあげた。
降りるときに顔を見られたりしないようにフードを被ると、懐の中でじたばたしていたクロ君が衿の合わせから顔だけ覗かせる。
「後は大丈夫ですので戻ってください」
降りるのを手伝ってくれた御者の人にそう言うと。無言で頷きその場で頭を下げている。
(えーと、私の姿が見えなくなるまでこうしてるのかな?)
(だろうな、とっとといこう)
(このような場所で降りられては困りますとか言われるかと思ったけど、それは無いんだね)
(主人に口答えする従者などいないだろう)
(ああ、主人と認識されているのか)
(当然だろう。早く屋台に行くのだ)
(えー、まあいいけど。また色々買い溜めしておこうか)
(うむ!)
市民街ではないので、屋台というよりお洒落な出店という感じのものしかないけど、久しぶりなので目に付いたお店に寄っていく。
衿から上半身を乗り出して買う物をあれもこれもとおねだりするクロ君。これ以上乗り出されても困るのであっちこっちと指差している両足を両手で掴んで懐から取り出し肩に乗せ衿を直す。流石に恥かしいのです。
色々と買い込んだので取り合えずギルドへ向かっていると。
(カーサの所に寄っていくのだ!)
とクロが提案してくる。
(んー、カーサまだ帰ってきてないみたいなんだよね)
(む、そうなのか?)
(うん、式を置いてあるから店が開いたり何か動きがあったら知らせに来るんだけど)
(ずっと閉まったままなのか)
(うん)
ギルドに着く。
そんなに日は経っていないのだけど少し懐かしく感じながら扉をくぐる。
--------------------------------------------------------------------




