65:攻略本
紅茶に砂糖を少し入れ香りを楽しみながら一口。
ズズズ...不味いわ。
自分で入れたお茶がこんなに不味いとはショックですわ。
パックの紅茶しか入れた事が無いから適当な分量がわからないし、何がどこにあるかもわからなくて部屋の中が散らかってしまいましたわ。
料理スキルにポイントを少しくらい振っておくべきでしたわね。
それにしてもあの駄メイドはどこに行ってしまったのかしら?
わたくし専用メイドのくせに最近わたくしのことをほったらかしにする事が多い。
わざわざフラワーネット家に戻ってまで何かしているようですし。
「お嬢様、ただ今戻りました」
「ヒャ!」
いきなり耳元で囁かれ思わず悲鳴が出てしまう。
「失礼しました」
まったく空気を読まないメイドね!
メイドの入れたハーブティーで、お嬢様ティータイム満喫中...
「どうなっているのかしら?」
「は?」
「は? じゃないですわ、イベントがことごとく失敗しているじゃない」
先日の闘技場イベントも、トリン王子が優勝するはずだったのに、なぜかあのビッチが優勝してしまった。
しかも途中から意図せぬ場所で戦闘イベントが始まってしまい、イベント場所である闘技場から追い出されてしまった。
完全にイベント失敗、選択肢が出なかったから事前の何かで失敗ルートに入ってしまったのですわ。
王子様を含めた攻略対象がいないんじゃもう攻略してもしょうがないですわね...いっそのこと転生してしまおうかしら?
今度はもっと能力の高い...あの冒険者に殺されて...憑依...を...
……………
……
……
「お嬢様、」
……
……
「...心下さ...」
……
……
「...略本を...した」
……
……
「え?」
……
……
……………
「完全攻略本を発見しました」
攻略ルートがフローチャート形式で見やすく載っているあれ?
攻略を失敗した時の周回プレイ用に転生ポイントとためるコツを解説してあるあれ?
「その通りです。攻略対象の袋とじピンナップもついています」
「なんですって!!!」
「今すぐ持ってきなさい」
「残念ですが、攻略本はモブである私達では手に持つことさえ出来ません」
「そ、そうですわね。そんなチートアイテムは選ばれたものしか触れることが出来なくて当然ですわね」
「はい」
「で、どこにあるんですの?」
「はい」
大図書館の最深部に...
大図書館:
メイドの後について歩く。
「カビ臭いわ」
この鼻の奥を刺激する匂いは嫌いですわ。
歩いている途中何度か宙に浮くような感覚に襲われる。
「もしかしてワープしてますの?」
「はい、間違った順路を辿ると入り口に戻されたり戻れなくなります」
あら、恐ろしいところね。もし戻れなくなったらスペア体に転生してやり直しって所かしら?
「お嬢様、あれです」
「ちょっと汚らしいですわね。中古本ですの?」
年季の入ったそれを手に取る。
ドクンッ!
その革でできた表紙に触った瞬間、本が脈打つ。
「あらあら、なんだかそれっぽいですわね」
本を開き、目次を見る。
「ゲオルク・ファウスト? 学園長のお孫さんかしら、隠しキャラっぽいですわね」
………………
…………
……
長いですわ!
プロフィールが長すぎですわ!
そこには、全てが記されていた。
そう、それはまるでその人の人生を全て書き込まれたような。
攻略キャラに感情移入できるようにという配慮なのかしら。
読み進む。
知識が流れ込んでくる。攻略キャラの知識がわたくしの記憶と混じりあう。
素晴しいですわ!
もっとプロフィールを読みたいですわ。
あら。これは誰の人生かしら?
懐かしい。
そうか、前の憑代の人生…………
ふと天を見上げる。
!!!!!!!!!
どういうことですの!?
なぜ...あの......ビッチの.........顔が..................
パタンッ! と本が閉じ床に落ちる。
メイドがそれを拾い上げ元の場所へと戻し、静かに歩み去る。
パタンッ! と本を閉じる。
ファウストの書にマリー・フラワーネットの頁が追加された。
この本は大図書館のボスであるファウストの書を読破した時に私の物となった。
これがファウストの書であり、大図書館に変わらず存在するモノもファウストの書である。
「リン、説明希望なのだ!」
クロがカラクリを聞いてくる。
「えーと、ファウストの書が迷宮攻略のご褒美ってところで、変わらずに大図書館に存在するファウストの書と連動しているらしくって新しく取り込まれた人の頁がその都度増えていくみたいな」
「ちっがーう、なんでそこに封印したのかなのだー」
「んー、メイドの頭の中を覗いて得た情報から、死ぬと殺した相手に強制的に取り付くし、事故とかで死んだときはフラワーネット家にあるクローン体見たいのに引き継がれるって事だったから本の中に永遠に封印されてもらおうとね」
「死んだとみなされてクローンのほうに行くんじゃないのか?」
「大丈夫、本の中で生きてるからね永遠に。それにクローン体はメイドに全部処分させているし研究資料も破棄させといたから、次っていうのも無いと思うよ」
「随分と念を押したな。もしかして、それを持っているものが他にもいる可能性があると言うことか?」
クロがファウストの書をてしてしと叩く。
「うん、攻略したのが私だけと見るほうがおかしいでしょ。幸いマリー・フラワーネットにはたいした知識は無かったから、それを基にしてフラワーネットシステムを新しく作り出すことは無理だと思う」
「ふむ、じゃあ解決?」
「うん、言ってた発言内容から多分召喚された人が関係してた見たいだし少し調べてみたかったけど、変にほっといて殺したら強制的に憑依というのがマリーさん以外に増えても困るからね」
「おそらく、システムのベースになったのが召喚されたやつなんじゃないか?」
「まあ、そうだね。特殊なスキルを持ってたとかかもね」
「ふーん」
興味を失ったようだ。私の手をかじかじと甘噛みしてくる。
「ちょっと、痛いって」
かじかじかじ...
ファウストの書をアイテムボックスにしまう。
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